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(043) 2度目のストリートピアノ①

◇◇◇ 都庁 ◇◇◇

ここは都庁1階正面入り口前。


「お待たせ!」

<<あ~あ、来ちゃった>>


カイ、来るのが早い。

待ち合わせより10分早い。

絶対に遅刻して来ると思ったのに。

こいつ思ったより真面目だな。


「え!来たの?」

「どういうこと?

 ハルが呼んだんだろうがぁ!」


「そうだけどね」

「篠崎さんは?」


「まだ来てないみたい」

「えぇ、ギリギリに来ればよかった」


最初からそうしてくれ。


今日は土曜日。

待ちに待った篠崎さんのピアノ演奏会

第2弾の日である。


カイとは現地集合にした。

同じ寮なのだから一緒に行こうと

カイから誘われたが、別件で寄って行きたい

ところがあると言い、こうなった。


オレは、寮を3時間以上早く出ている。

そう、ノノンと2人で散歩したかったから。

原宿駅で降り、明治神宮を徒歩で通り抜けて

都庁まで来たのである。


1人だったら絶対にしないことだ。

そんなことして何が楽しいの?

と過去のオレなら言ってただろう。


それがメチャクチャ楽しかった。

もっと早く寮を出ればよかったとさえ思ってる。

来週は夏休み、楽しみだ。


「あれ!今日、彼女さんは?」


来た。アイミーネタだ。

こいつ1日1回言わねぇと気が済まないのか?


「アイドルのことか?彼女じゃねぇし。

 そのネタつまらん、もう止めろ!」


「エミリンに会いたい」

「この人、キモイ」


可愛い声出してんじゃねぇ。


・・・


時刻は10時になろうとしてる。


「ごめんなさい。迷子になっちゃって。」

「分かります。

 だから駅で待ち合わせしようって

 言ったんですけどね」


いつそんな会話した!

こいつ調子いいな。


「初めましてAクラスの篠崎です。

 今日はよろしくお願いします」

「これはご丁寧に。岳中(たけなか)です。

 カッコいい方、と覚えてください」

「お前、もう帰っていいわ」


「篠崎さん、大人ぽいですね。

 同じ年とは思えない。」


それは同感するよ。


「こんなお美しい方がうちの学校に居たなんて」


始まった。

舐めるように見るな。この変態!

篠崎さんにカイを合わせたのは失敗か。

オレまで同類と思われたらどうしよう。


しかし、ワンピース姿で色気あるわぁ。

スタイルいいし。

ほんと同級生とは思えない。


<<ハル?鼻の下伸びてるよ>>


ごめんなさい。同類です。


「どうします?上、行きます?」


要するに展望室へ直行しようかってこと。

っていうか暑いんですけど。

とりあえず、中入りません?


「並びそうだから展望室に行きましょう」


◇◇◇ 展望室 ◇◇◇

展望室の南側に到着。


<<ハル見て見て。景色いいよ>>


♪ ♪~♪~♪~


既にピアノが演奏されていた。

しかも5人待ち。

これは30分くらい待たされるな。


そして、ギャラリーも大勢する。

3割は外国人だろうか。

テンション上がるわぁ。


1人、演奏は5分まで。

弾く人の列が増えてる。

これは2回くらいしかトライできないぞ。


「ハル、篠崎さん可愛いな。

 彼氏いるのかな?」

「止めとけ!

 逆立ちしても手の届かない存在だ」


<<やだぁ。

 この人、女の子なら誰でもいいの?>>


()たたた。

ノノンさん、それオレに刺さってます。


お!演奏が終わった。

次の次か。人が増えたなぁ。

ピアノの周りに人がぎっしりだ。

次、撮影できるのだろうか。


♪キャア~。


え?有名人?

見た目が男子大学生って感じだけど。


♪ ♪~♪~♪~


演奏が始まると、

もの凄いパフォーマンスを見せた。

技術的には分からないが素人でも

上手いことが分かる。


<<良い曲。曲名は何だろう?>>


オレも知らん。

カイに聞きたいが、やつはピアノを

挟んで反対側にいる。


♪ブラボー

♪パチパチパチ


演奏が終わった。

うわぁ。

次の演奏者、超プレッシャーじゃん。

篠崎さん、大丈夫?

手に汗かいて来た。オレの方が緊張してる。


それよりもギャラリーが6分の1に減ったぞ。

ここは展望台だ。

フロアーに居る人の数は変わらない。

ピアノの演奏を聞こうという人が

単純に減ったのだ。


やはり先ほどの人は有名人だったのだろう。

演奏する前から人が集まっていたから。


それでも前回に比べれば問題ない。

20人くらいは聴こうしてくれてる。


今回は、カイも撮影に参加してもらう。

オレは篠崎さんを中心に撮り、

カイはギャラリーの反応を撮る。


篠崎さんの演奏が始まった。

おぉ!さっきの人に負けてない。

素晴らしい。


ノノンもノリノリで楽しんでる。

今日はいろんな人の演奏が聴ける。

フェスに来た気分だ。

都内にこんな場所があっただなんて。

撮影でなくてもまた来たいわ。


何の曲を弾いてるか分からないが、

この曲をオレとノノンは知ってる。

そう、前回品川で演奏したのと同じだ。


演奏が終わる。素晴らしい。


<<篠崎さん、上手>>


そうだな。


♪パチ、・・、パチ、・・


まばらな拍手だ。

オイオイ、リアクション薄くないか。

そりゃ、さっきの人は有名人かも

知れないけど。

一生懸命弾いた人に対して失礼だろう。


篠崎さんがオレの側まで来る。

「お疲れ様」

「どうでした?」

<<凄く良かった>>


ああ。オレもだ。

篠崎さんの笑顔が見れて嬉しい。

手ごたえがあったのかな。


カイもオレのところに来た。


「今の演奏、全然ダメ!」


はあぁ?

何言っちゃってんの、こいつ!


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