(042) 将来の夢
◇◇◇ 寮の自室 ◇◇◇
<<上上左でしょ>>
「違うって左上左で合ってる」
商店街からの帰宅後。
オレとノノンはパズル系の携帯ゲーム
で遊んでる。
オレの部屋でやることと言えば
ドラマ・映画を見るか、
ゲームをするくらいしかない。
毎回思うのだが、世間のカップルは、
何して時間を過ごしているのだろう。
まったく想像がつかん。
まさか、同じ部屋に居ながら各々で
趣味を楽しんでいるのだろうか。
ん~ん。分からん。
♪ピコ
Line>次の・・・
<<篠崎さんからLine来たよ>>
ハイハイ、分かってますって。
Line>動画撮影の件です。
次の土曜の午前中は空いてますか?
考えたんですけど、
次は都庁で撮影したいなぁって。
どうですか?
篠崎さんの依頼、すっかり忘れてた。
都庁ですか。
せっかく、お金を節約しようと思ってたのに。
都庁まで電車賃いくらだろう?
<<都庁だって。ハル、行こうよ。
篠崎さんのライブ見たい>>
そうだよな。応援するってオレが
言い出したんじゃないか。
ノノンも乗り気だし。
部屋でゲームしてるよりいい。
「もちろん行くよ」
しかし、なぜ都庁?
都庁前で演奏して大丈夫なの?
しかも撮影して怒られない?
警察沙汰になるのは避けたい。
オレは、Lineでその辺を確認したところ。
どうやら都庁の展望室に誰でも自由に
弾けるピアノが設置してあって、
撮影もできるという。
観光客も沢山いるからストリートピアノを
するには最適な場所なのだそうだ。
なるほど。電子ピアノを運ばなくていいと。
しかし、篠崎さんは人前で演奏するの
恥ずかしくないんだな。
<<展望室って都庁の屋上にあるのかな?
ハルは都庁に行ったことある?>>
「いやないけど。
展望室って言うくらいだから最上階だろう。
東京全部が見えるんじゃないか?」
<<早く行きたい。楽しみ>>
ノノンがときめいてる。
展望室まで上がるの、いくらなんだ?
スカイツリーは意外といい金額したよな。
ネットで調べたら、ピアノの情報が掲載されてた。
置いてあるピアノはグランドピアノというのだろうか
本物であることにビックリした。
そして、展望しつまでは無料とのこと。
一安心。
そうか、遠出しなくても東京には十分
楽しめる場所が沢山あることに気付いた。
ネットで調べたら無料のスポットは沢山ある。
バカだなぁオレって。
『楽しい=お金を掛ける』だと勘違いしてた。
ガンバってバイトして2・3日の旅行を楽しむより、
毎日都内巡りした方がいいじゃないか。
篠崎さんとの動画撮影の件は土曜日に決定。
次の土曜日は祭日。
なので朝10時に都庁1階で待ち合わせする
こととなった。
カイには、Lineが面倒なので明日の朝、
口頭で説明することにした。
♪ピコ
Line>勉強してる?
続けざまに今度はアイミーからLineが届く。
<<親戚のアイミーさんから来たよ>>
声に出さなくても分かってますから。
アイミーを親戚にしたのは無理がある。
ノノンに説明しといた方がいいような。
悩ましい。
しかし、アイミーは本当に友達が居ないのか?
オレなんかにLineするより、友達とした方が
楽しいと思うのだが。
Line<ちょうど勉強し始めたところです。
<<嘘つき>>
Line>ハルキは、将来何を目指してるの?
<<ノノンも気になる>>
将来か。
オレには夢がない。
やりたい職業もこれと言ってない。
「ノノン、オレはどんな職が
向いてると思う?」
<<弁護士?お医者さん?>>
おーい。
今から目指すには手遅れです。
Line<それが困ったことに夢がないんです。
とりあえず、大学行こうかと。
これってマイナスプロモーションだな。
イメージ悪く捕らえられるか。
アイミーにはどんな夢があるのだろう?
アイドルが夢だったら叶ってることか。
となると次は東京ドーム単独ライブか
アジアツアーってところだろうか。
いいなぁ、夢がある人は、
Line>大学行ける頭があるだけ
うらやましい。
そういう人って何やっても
上手くいくんだろうな。
オレを高く評価しすぎ。
この後もアイミーと意味のない雑談が続く。
そして、最後はスタンプで終了ね。
段々と社会のルールが分かって来た。
こうやって大人になって行くんだな。
<<アイミーって子。
ハルのこと好きだよね?>>
マジ?
ノノンもそう感じます?
いやぁ、勘違いするなと自分に
言い聞かせてたけど。
ノノンが言うなら脈ありか。
かぁ、アイドルの彼女か。
最近、女子の方からオレに近寄って
来てるような気がする。
遅咲きのモテ期、到来か?
アイドルと禁断の恋。
もし世間にバレたらワイドショーに
オレの顔と名前が出るよな?
住所も特定されて。
そして、寮や学校の前で
取材陣に取り囲まれるんだ。
SNSでは誹謗中傷が飛びかい。
ファンに遭遇したらボコボコに殴られる。
想像しただけで吐き気して来たわ。
オレ、堀北さんでいいや。
待てよ。堀北さんも有名人じゃん。
同じじゃね?
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
朝の学校。
オレは、自分の教室に1歩足を踏み入れる。
そして、最初に確認するのは自分の席。
正確には隣の堀北さん。
人だかりが出来てない。あれれ?
え!もう、ブームは去ったの?
昨日の今日ですよ。早くね。
お前らそれは酷いぞ。
しばらくチヤホヤしろや。
「細倉くん、おはよう」
「おはようございます」
クー、スーパースターがオレなんかに
挨拶してくれる。
自分だけが堀北さんを独占してるのこの感じ。
優越感、半端ねぇ。




