(040) 堀北さん、凄い人でした
◇◇◇ 超常現象研究部 ◇◇◇
昼休み
いつもの部室で4人仲良くお食事中。
ここは居心地がいい。
というか教室に自分の居場所がないだけだが。
「昨日のネクジェネ見た?」
「ちょっと楓、止めてよ」
「ネクジェネ?知らんわ」
<<ハル?>>
ノノンが振り向きざまに教えてって顔してる。
ネグリジェだろ?もちろん知ってますよ。
レース生地のパジャマのことだよね。
堀北さんが、かなり動揺してるところを
見ると、これはネグリジェ姿の写真が
あるのかぁ?
ワク、ワク。
「ネクストジェネレーションって
テレビ番組知りません?」
ネクスト・ジェネレーション?
略してネクジェネ。
あっぶね。
ネグリジェだと思って自信満々に
発言するところだったわ。
「その番組がどうかしたの?」
「なんと!」
<<なんと?>>
「楓、ストップストップ!」
「凛心がテレビ出演しました。
パチパチパチ」
「出てない、出てない。
インタービュー受けただけです」
堀北さん、可愛い。めっちゃ可愛い。
こんな動揺するとこ初めて見た。
「ごめん。それ詳しく教えて!」
春輝くんも知りたーい。
オレ、キモ!
<<ノノンも知りたい>>
オレとカイはその番組を知らない。
金沢さんが番組の概要を含め
昨日の内容を細かく教えてくれることに。
ネクジェネは、スポーツ番組だそうで
次世代の若手選手を密着しながら、
そのスポーツの魅力を伝えるという主旨だそうだ。
そこで、昨晩特集されたのがスポーツクライミング。
要するに堀北さんの所属競技である。
来た来た来た!
だが番組で取り上げられた選手は、
堀北さんではなく藤沢萌香とのこと。
誰?って感じ。
堀北さんが特集されればいいのに。
彼女は堀北さんと同じ高校3年生であり
スポーツクライミングの選手である。
デビューは高校からで、成績は1年2年連続で
全国1位という快挙を達成している。
なので特集された藤沢さんは今年3連覇が
掛かった大事な大会となっている訳だ。
そして既に、今年度は神奈川県代表を勝ち取り、
一足先に全国への切符を手に入れてる。
順風満帆じゃねぇか。
こりゃ3年連覇ありえるぞ。
ちなみに、堀北さんも全国大会に出場
しており1年生の時は全国2位という成績。
そう、我らの堀北さんも負けてないのだ。
2年前の当時、1年生が1位と2位を独占と
話題になったそうだ。
そして、去年は残念なことに怪我に悩まされ
県大会敗退という結果に終わったのだという。
堀北さんは今年打倒藤沢を目標に
日々トレーニングしていたのである。
打倒藤沢ってことは、全国1位を
目指してるってことだ。
2年前は2位。叶わぬ夢ではない。
オイオイ、今更だけど凄い人がオレの隣に
居たんだな。
いつもオレらの雑談に混ざってくれて
ありがとう。
藤沢って選手が凄いというのは伝わった。
なぜ、堀北さんが騒がれるのだ?
その番組にはまだ続きがある。
藤沢選手のインタビューにて、今回の大会で
注目してる選手は誰かと質問したら。
堀北さんの名を挙げたのだという。
注目する選手は沢山居る中で1人だけという。
マジ?
我らの堀北さん。女王に注目されてるぞ。
しかもライバルだとハッキリ宣言したそうだ。
更に付け加えるならば堀北さんに憧れて
スポーツクライミングの世界に足を踏み入れた
のだという。
なんと、堀北さんを憧れの人だなんて。
そこでオレは、堀北さんのこれまでの
成績を知ることとなる。
小4でスポーツクライミングの世界へ飛び込み。
小5のデビュー戦でいきなりで全国1位。
次の年も、そして次の年も。
小5~中3まで全国1位を連覇してたのである。
やば過ぎるだろう。
要するに藤沢さんだけでなく、堀北さんも
化け物ってことだ。
そんな人がオレの隣にいたのか。
堀北さんの連覇を阻止したのが
藤沢選手ってことになる。
彼女はライバルだと宣言してるけど、
堀北さんはどう思っているのだろうか。
番組は、藤沢さんを密着しつつ、
堀北さんの試合風景も流れたそうだ。
そして、堀北さんは藤沢さんのライバル発言
を聞いて、それに対するコメントを残してる。
これかインタビューを受けたというやつか。
『普段は仲の良い同級生だと思ってます。』
おっと、いきなり拍子抜けだ。
どうやら藤沢さんの方から猛プッシュして
友達になったらしい。
頻繁にLineする仲だそうだ。
『ですが、試合では私もライバルだと思ってます。
今期の大会では私は挑戦者という認識です。
なので肩を並べて戦うというよりかは
全国に行って藤沢さんに挑みたいという意気込みです。』
カッコいい。しびれるぅ。
普段会話してたら普通の女の子なのに。
心の奥にそんな熱い思いを持っていたとは。
こんなん聞かされたらオレだって憧れるぞ。
努力家だと思ってたけど、オレの想像を
遥かに超えた練習を日々しているのだろう。
ちょっと待て。
大会めっちゃ大事じゃないですか。
こんな人に告白しようとしてたのかよ。
たとえオレの事が100%好きだったとしても
試合を優先にするだろうから振ったであろう。
だって、堀北さんと藤沢さんはお互い全国で
競い合うのを目標にしてるのだから。
話しを聞いただけでも、堀北さんに興味が
湧くのに、昨日テレビを見た人は
居ても立っても居られなかっただろうな。
今朝、教室で人が集まる訳だ。
「堀北さん、応援してます。
来週、頑張ってください」
<<私も応援してます>>
そうだ。全国大会に出場するためには、
来週の県大会で東京都代表になるのは必要。
他校にどんな選手がいるのか知らんが
簡単ではないだろう。
オレも応援したい。
「応援に行きますよ」
<<ノノンも行く行く>>
応援というか、選手としての堀北さんを見たい。
「ありがとう。
応援してくれるのは嬉しい」
楽しくなって来た。
今までスポーツに興味なかったけど。
人生で初めて心の底から応援したい人ができた。
勝っても負けても泣いちゃうかも。
堀北さんの闘志をこの目で見たい。
来週が楽しみだ。
「もうこの話しはお終いにして」




