(004) 人生最大の告白です②
彼女を意識し始めたのは、
座席が隣というところから始まってる。
よくあるパターンだ。
授業中、気さくに話し掛けてくれる女子。
今までなかったことだ。
正直、女子との会話は苦手だが
話し掛けてくれる分には悪くない。
毎日会話してるうち、
だんだんと魅かれるようになったという訳。
女子が話し掛けてくれる=オレの事が好き。
勘違いであることは重々承知してる。
だが、もしもってケースもありえる。
彼女は細身の体型で顔も小さく可愛い。
美人と呼ばれる分類に属するだろう。
どう考えても俺なんかを好きになる訳がない。
フラれる確率は99%。
高校時代の思い出作りにしてはリスキーだ。
オレのネガティブな思考が発動し出す。
友人に視線を戻し、両腕でバツサインを示す。
要するに中止ってことだ。
この告白に意味はない。そう結論付けた。
それでもカイは『行け!行け!』と
ジェスチャで押し通す。
どう考えてもあいつは楽しんでやがる。
オレは、なおも強く中止を主張する。
「細倉くん。ここで何してるの?」
ハイ?
カイと電波なやりとりをしてたら
お目当ての女子が声を掛けて来たではないか。
正にその偶然を狙っていたんだが。
「堀北さん。奇遇だね」
「そうぉ?ずっとここに立ってたでしょ」
「気付きました?」
「制服だから目立ってたわよ」
やっべ、超恥ずかしいんだけど。
確かにこの場には運動部員しかいないわ。
だがそんなことはどうでもいい。
チャンスを逃すな、トークで弾ませないと。
「運動部の練習見入っちゃって。
特に三段跳び」
「分かる。格好がエッチよね」
三段跳びは女子しかいない。
しかも、へそ出しのタンクトップ。
やべぇ、目に飛び込んだもので会話を
始めるから事故った。
「そいう意味じゃなくて。
腹筋凄いなって。
エロい目では見てないです」
「本当かなぁ?」
やべぇ、変態だと思われたかも。
告白どころでなくなってきた。
まずは誤解を解かねば。
くっそー、人生最大の失言だ。
「堀北さんの方がエッチな身体してるよ」
もうパニックです。
何言ってるんだオレは!?
うわぁ、ドン引きされるわ。
彼女は迷彩調のTシャツに黒の半ズボン姿。
なのにナイスバディであることは
シルエットから感じ取れる。
嘘は言ってない。
バカバカ、落ち着くんだオレ。
告白するんでテンパってる。
オレの言葉に反応したのか、
堀北さんは改めて自分の格好を確認する。
「この格好でエッチ?
私をからかってるでしょ」
「ごめん。言い方間違えた。
スタイルよくてセクシーだなって
言いたかった」
終わった、オレの人生が終わりました。
いや待て。
恥ずかしげもなくセクシーだなんて良く言えたな。
この流れで告っちまえ。
「え~」
『ずっと好きでした』と言うんだオレ!
今言わないと後悔するぞ。
残りの高校生活をエンジョイするんだろ?
「実は前々から伝えたい事があって」
「なに急に?怖い!」
何だあれ?
それは突然現れた。
堀北さんの後ろ上空に靄の塊が
出現したのである。
いつからあった?
その靄は徐々に色と形を変え、
人と認識できるほどまで変化したのである。
「細倉くん!?」
堀北さんの言葉が耳に入らない。
オレは上空に釘付けだ。
空中に浮く人物の手元に何か出現する。
弓矢?
どう見ても弓矢だ。
しかも我々に標準を定めている。
オイオイ、撃つ気じゃないよな?
あ!放った。
「危ない!」
「きゃっ!」
オレは無意識に堀北さんを両手で抱きしめ、
勢いよく地面へと押し倒したのである。
矢はスレスレで2人の横を通り抜けた。
オレは堀北を傷つけまいと、かばう様にして
抱きしめたまま背中から倒れたのである。
痛ぇ!
ゴツゴツする砂利の上へ仰向けで激突。
背中全体がメッチャ痛い。
矢の飛んだ先へ目線をズラすと
石畳に刺さってるではないか。
あぶなかったぁ。
当たってたら死んだかも。
堀北んに怪我はないよな。
「なにするの!」
♪パーン
なんと響き渡る良い音色だこと。
おもいっきりビンタを食らったのである。
誤解なんです堀北さん。
弁明する間もないく彼女はこの場から走り去った。
なんとも格好の悪状況だろうか。
ゆっくりと立ち上がると、グラインドにいる
運動部員達と全員目が合う。
その視線痛いです。
そのうちの1人である友人のカイは、
腹を抱えてグランドで転げ回っていた。
これがR1グランプリだったら予選通過だろうな。
死にたい。
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