(039) 堀北さん、大人気です
◇◇◇ 寮の自室 ◇◇◇
数秒間だけだったけどノノンが姿を消した。
消えた理由は不明。
だけど、ノノンと一緒に居られる時間は
長くはないかも知れない。
2度在ったということは3度ある。
次は永久にお別れになることもあり得る。
覚悟しておいた方がいい。
そうなると、急にノノンとの思い出を
沢山作りたくなってきた。
「散歩しに行こう!」
思い出が散歩かよ。悲しすぎる。
部屋から埋蔵金とか出て来ないかなぁ。
<<ショッピングモールに行こうよ。
可愛いお店が沢山あるところ行きたい>>
アクセサリーとかファッションに
興味があるのか?
改めてノノンを女子だと認識したよ。
ショッピングなら金がかからない。
見て回るだけでしょ。
プレゼントするにしても相手は幽霊。
渡せないから考えなくていい。
OKだ。
「行こう行こう」
ククク。金ないオレには都合がいい。
実在する女子だったら、やばかったかも。
<<ハル、優しい。なんか雰囲気違くない?>>
「そうか、いつもと同じだと思うぞ。」
<<昨日の頭痛が原因だよ。病院行う、ね?>>
何でそうなる。
病院?やだよ。
待合室にいる間、徐々に重い病気に
かかってる、ような気分になるのが嫌い。
そもそも金ないし。
「様子を見よう。
ほら見て?超元気だし」
<<ダメだよ。
一度徹底的に調べてた方がいい。
昨日は明らかに普通じゃなかった>>
「再発したら行くから。約束する。
だから様子み、しよう。ね?」
ノノンは納得いかないご様子。
への字口も可愛いな。
<<じゃ次なったらね。絶対だよ。約束>>
「あぁ、約束約束」
折れてくれた。ふぅー。
とりあえず、病院は行かずに済みそうだ。
その後、善は急げと部屋を飛び出し
ショッピングモール目指したのだが、
外が暑すぎて断念。
結果、近所の公園を散歩するだけとなる。
それはそれで楽しい。
ノノンが居てくれるだけでいい。
オレを癒してくれる。
残念なことはノノンを写真に残せない。
公園で写真を撮ったがノノンが映らないのだ。
動画も同様。
思い出を残したいなんて人を耳にするが、
その言葉の意味をやっと理解した。
いつか消えてしまうノノンをどうしても
写真に残しておきたいができない。
クッソ!
そもそも携帯越しからだとノノンが見えない。
モニタにノノンが映らないのだ。
肉眼だと見えてる。不思議な話だ。
幽霊を念写で映す人が居るが
どうやらオレにはその能力がないらしい。
日中は学校だからノノンとはほどんど
会話ができない。
なので遊べるのは帰宅後から寝るまでの
時間だけだ。
ノノンはいつ消えるか分からない。
今この瞬間に消えてしまうかも知れないし、
オレが死ぬまで居続けてくれるかも知れない。
それは誰にも分からないだろう。
1つ言えることは1日1日を大事に
しようってことだ。
◇◇◇ 次の朝 ◇◇◇
<<ハル!ハル起きて>>
・・・
<<ハルくん起きてください。朝ですよ>>
「ん~ん」
<<お寝坊さんなんだから、もう>>
「あと10時間」
<<えぇ~>>
「嘘、起きてる」
オレは目を開け、ノノンと見つめ合う。
一瞬沈黙となる。
「今日もカワイイね」
<<・・・>>
いいね、そのリアクション。
照れた顔も最高。
朝からいいものが見れて気分がいい。
オレはどうかしてる。
こんなキャラじゃないのに。
ノノンがオレを変えていってるのだろうか。
ベッドから起き上がり、
外へ出てノノンと一緒にランニングする。
そして、シャワーを浴び、飯を食う。
一通りのルーティンをこなす。
いつもの日常、最高だな。
これがオレなりの思い出作りである。
っていうか昨日と変わらん。
そしてちょうど着替え中の時であった。
♪ガチャ (扉が開く)
「エミリンの彼氏のハルくん。
学校行くぞ!」
アイミーネタでのお迎えだ。
こいつ、卒業までこすり続けるつもりだぜ。
<<ノックもせずに入って来てなんなの?
ノノン、この人嫌いです>>
お!今の動画撮りたかったぁ。
どこかにアップして『いいね』連打してぇ。
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
今朝の教室はちょいと変わっていた。
にぎやかである。極所的に。
<<ハルの席、人でいっぱいだよ>>
「オレじゃなく堀北さんね」
堀北さんの周りにクラスメイトが
集まっているのだ。なぜ?
あのぉ?すみません。
オレ、席に座れませんけど。
<<ちょっと!そこ、どきなさいよ。
ハルの席なんですけど>>
いいぞノノン。もっと言ってやれ!
「はい、お前らじゃま!どいてどいて」
おぉ!カイの登場だ。
こういう時は役に立つ男だよ。
助かった。座れたぜ。
自分の席に座れないなんて恥ずかし過ぎる。
しかし、この人だかりは何?
オレの堀北さんに話し掛けないでくれます?
<<堀北さん人気だね>>
そうだね。
今更堀北さんの魅力に気付いたのか、お前ら?
遅い。
カイは、人だかりがうるさいという理由で
早々に自分の教室へと戻ってしまった。
というか人がじゃまで居場所がない。
堀北さんと会話できない。
改めてオレはボッチだと認識できた。
ここ最近、自分は変わって来たと
感じてたが幻想だったらしい。
そして、この人だかりの理由は
昼休みに判明することに。




