(038) ノノンまたも消失
◇◇◇ 超常現象研究部 ◇◇◇
昼休み。
食事を終え雑談中である。
ノノンはというとお昼寝中。
首に手を回し後ろから抱き付いてる。
クー、最高だな。寝顔も可愛いこと。
しかし、よく寝る奴だ。
幽霊って活動時間短いんだなぁ。
オレはノノンの事をどう思っているのか。
改めて考える。
オレが出した結論は子猫を飼ってる感覚。
いつも側に居て欲しいし、居なくなって欲しくない。
だが、それはノノンが幽霊だからだ。
もし実在していたら感情はどうなっていただろう?
今の関係でいられるだろうか。
18才の設定と本人は言ってはいるが見た目は子供だ。
恋愛感情は生まれるのか?
想像しても意味がないことは考えないようにしよう。
3人が雑談してる中、そんな事を妄想
していたら話題が昨日の依頼に変わった。
「撮影はどうでした?」
おや!堀北さん、昨日のこと気になります?
「聞いて下さよ。撮影というのが
路上ライブだったんですよ。
ストリートピアノ。知ってます?」
「品川の駅前で撮影したんだよね?」
「へぇ。私も見てみたい」
デートしたいなら分かり易く言って。
いつでもウエルカムだから。
「携帯で撮影したから動画ありますよ」
「見たい見たい」
オレは、動画をフルスクリーンにして
テーブルの上へ置く。
その映像を3人が覗き込む。
♪ ♪~♪ ♪~♪
「えぇー!女子だったの?」
最初にリアクションをとったのがカイだ。
男だと思ってたからな。
こいつの勘違いでオレまで勘違いしたわ。
「そうなの。同じクラスの篠崎さん。
学校の合唱コンとかでピアノ弾いてるよ。
見たことない?」
「いやぁ、知らんわ」
オレもだよ。
「ピアノ上手だね」
「昨日の帰り道で聞いたんだけど
小さいときから習ってるんだって」
「何々?もしかして堀北さんから
篠崎さんにチェンジ?」
こいつ足に鉄球付けて東京湾に沈めたい。
堀北さんに言い訳しないと。
「こんだけピアノ上手かったら
普通聞くでしょ。」
「女子なら先に言って欲しかったなぁ」
「だったら、カイは来たのかよ」
「オレは金沢さん一筋だから行かないけど」
「バカじゃねぇの」
お前、凄ぇなぁ。
良くもまぁ、金沢さんの前で言えるよ。
金沢さんの反応を見たらクスクス笑ってて
動じてない。
「楓モテモテよね」
堀北さん、煽るなぁ。
金沢「どう?うらやましいでしょう」
金沢さんの返しがうまい。
カイはファンの1人って感覚なのか。
「はい、はい、はい!
金沢さんの彼氏に立候補します」
やっちまった。
こいつバカだ。地球上で一番のバカだ。
お前に興味がないことくらい気付けよ。
「アハハハ。
岳中くんってホント面白いよね」
はい、流されたました。残念。
お前、この場をどう乗り切る気?
「その子も、ここ(部室)に呼ぼうよ」
告白をなかったことにしちゃったよ。
なるほどねぇ、勉強なるぜ。
「ヒメはにぎやかなとこ嫌がるかも」
カイみたいな奴が苦手だって
ハッキリ言ってやればいいんだ。
「次の土曜日も撮影あるんだよね?」
「やるなぁ、ハル!
そうやってデートに誘うのか?
勉強になるわ」
こいつ何度何度も堀北さんの前で。
「いいのか?
彼女のエミリンに怒られんぞ」
そっちかよ。
「アイドルをギャグに使うな!」
ここは堀北さんに、篠崎さんには興味
ありませんアピールしとかないと。
「カイも動画撮影に参加しろ!
どうせ土曜日、暇だろう?
サクラ(客寄せ役)になってくれ」
「えぇ、面倒臭い」
ダメか。
こいつに期待するのが間違いだった。
仕方ない。
篠崎さんの名誉のためにと
詳細は黙っておこうと思ったけど、
全てぶちまけて人情を盾に交渉するか。
「岳中くん、私からもお願い」
「OK!了解しました。お任せください」
早!なんなのこいつ?
なるほど、これからは金沢さん経由で
指示をだせばカイを操れるのね。
「金沢さんの頼みなら何でも引き受けますよ。
日時と場所、教えて?」
「これからだよ。決まったら教える」
ってな感じで昼休みが終わってしまった。
◇◇◇ 帰り道 ◇◇◇
現在オレは下校中。
珍しくカイと共に寮に向かっている。
「ハル!部屋、戻ったらさぁ。
何かしようぜ」
「勉強するから遠慮しとく」
嘘です。
ノノンと遊びたいのでオレの部屋来ないで!
「つまんねぇ男だなぁ」
「お前も勉強しろ」
なぜカイが居るかと言うと
来週はテスト期間だから部活は休みなんだと。
なので、イヤイヤ一緒に帰ることに。
テストが終われば夏休みに突入。
よくよく考えたら、今日から夏休みまで、
こいつと一緒に帰ることとなる。
最悪だ。
しかし、ノノンはまだ寝てる。
午前中からずーっとだぞ。
いくらなんでも寝過ぎだろう。
オレの首と腹をノノンの腕と足がクロスし
背中から密着してる態勢でへばりついてる。
なんて器用なやつだ。
幽霊に取りつかれてる奴らは、
皆こんな感じなのか?
◇◇◇ 寮の自室 ◇◇◇
オレの部屋に到着した。
ノノンはまだ寝ている。
このまま眠ったままじゃないよな?
あなた白雪姫ですか?
キスしたら目覚めちゃたりします?
バカなことを考えてないで、本当どうしよう。
起きるか不安になってきた。
声を掛けるのが怖い。
「ノノン?着いたぞ。」
・・・
「お家ですよ」
・・・
「おーい、起きろ!」
・・・
まずい。本当に起きない。
このまま消えないよな。
あ、消えた!
マジで消えやがった。
それは予想もしてなかったことだ。
目の前でテレビを消したかのように
スパっと消滅したのだ。
永遠に目覚めないかもとは頭を過ったが
まさか本当に消えるとは。
部屋を1周見渡すもノノンの姿がない。
このまま、お別れじゃないよな?
夏休み旅行に行くんじゃないのか?
◇◇◇ 不気味な部屋 ◇◇◇
同時刻に棺が置かれた部屋では異変が発生。
ここは相変わらず薄暗いく不気味だ。
人の気配もない。
この部屋は何のために使われているのだろ。
計器類は24時間動き続け
何かを制御し続けている。
異変とは、監視モニタである。
誰に伝えるまでもなく、
警告が出続けているが、
次のような警告が大量に出力されだした。
#【警告】通信の切断を検出。再接続を実施します。user=ノノン
#【警告】再接続に失敗。5秒後にリトライします。user=ノノン
#【警告】user「ノノン」の初期化を推奨します。
◇◇◇ 寮の自室 ◇◇◇
オレはベッドに寄り掛かり、
何もない真っ白な壁をずーっと眺めてる。
誰かがオレを見たらやべぇ奴だと
思われるだろう。
消滅は一時的なことで、
前回のように2日したらまた枕元に
現れるかも知れない。
これでお別れと判断するには早い。
ノノンとの思い出を振り返る。
よくよく考えるとオレの周りは敵だらけだ。
始めて味方になってくれたのはノノン。
しかも、やること全てを肯定してくれてた。
有難い話しだ。
居なくなって初めて存在の大切さに
気付くこともある。
寂しいのだな。
「戻って来いよ。ノノン!」
<<なぁに?>>
うぁあ。
目の前にノノンが現れた。
脅かすなよ!
「なぁに?じゃないよ。どこ行ってたんだ。」
<<ノノンはずーっと一緒にいたよ。
あれ?ハルの部屋だ。凄い寝てたね。>>
あの時と同じだ。
ノノンには消えた自覚がない。
もしかしたら、ノノンはずーっと
オレの側に居たのかも知れない。
単純にオレが見えなくなったという
説はないだろうか。
あの告白の日に、霊が見える能力を
身に付けたんじゃないか。
その能力が失われつつあるとしたら
つじつまが合わないか。
それか、ノノンが成仏しかけるかだ。
どちらにしても、ノノンと再会できてよかった。




