(037) 貧乏学生はどこも遊びに行けない
◇◇◇ 男子寮 ◇◇◇
頭痛の後、しばらく経つが
特に身体に異常は見られない。
逆に怖い。
重い病気にかかってるのではないか。
オレは時計に目線を移動する。
ノノンと下らん会話してたら
いつの間にか遅い時間となっていた。
「寝ますか」
<<早くない?まだ0時だよ>>
「もう0時だ!
明日も学校なんですけど」
<<分かりました。
寝ないと死んじゃうんでしょ>>
やけに素直だな。
これはこれで可愛い反応だ。
オレの頭痛がそんなに堪えたのか。
オレは、ベッドに仰向けで横たわる。
そして、できるだけ壁際に身体を寄せると、
ノノンが当たり前かのように
無言でオレの隣に寄り添う。
ノノンのへんに意識しないところが好きだ。
日中もだけど、急に照れられると
オレまで恥ずかしくなる。
「ノノンは起きてるのか?」
<<暇だから一緒に寝る>>
電気を消し。
天上を眺めてると、薄暗いながらも
ノノンが覗きこんで来るのが分かる。
<<お休み。ハル>>
やること一つ一つが可愛いんだよな。
お休み、ノノン。
オレは目を閉じ。今日一日を振り返る。
長い長い一日だった。
消えたと思ったノノンが現れた。
金沢さんに彼氏の存在が浮上したかと思えば
ストリートピアノをする女子と知り合いに。
出会って数分でLineを交換することになって。
ここ数日、オレの中で在りえないことの連発。
そして、アイミーとのLine。
禁断のアイドルともつながってる。
更に、ありえない。
あぁ、楽しい。楽しすぎる。
このまま時間が止まればいいのにと願ってる。
これが『幸せ!』というやつか?
オレには無縁のものだと思ってたのに。
人生は、谷あり谷ありの谷しかないけど
微かに良いこともあるんだな。
ネガティブな思考のオレには、
どうも死亡フラグが立ってるとしか思えない。
突然、耳元でささやき声が。
<<寝・ま・し・た・か?>>
「うわあぁぁ」
オレは驚いて飛び起きる。
うす暗い中、ノノンに焦点を合わせる。
「耳元でささやくなよ」
<<嬉しいくせに>>
そのマウント取ってる顔、やめろ。
「流石に暗闇で幽霊にささやかれると
怖ぇよぉ」
<<ノノンは天使です>>
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
朝の教室。
いつものようにカイと登校をして
カイがオレのクラスに来る。
そして、堀北さんと挨拶を交わし、
カイと3人でバカ話しを始める。
教室での朝の日常が繰り広げられる。
授業中以外で堀北さんと楽しく会話する
日が来るだなんて。
ちなみに、昨日の依頼の事を聞かれた。
要するにストリートピアノの件だ。
お昼に取っといてとお茶を濁すことに。
◇◇◇ 超常現象研究部 ◇◇◇
昼休み。
部室にお邪魔してる。
このままだと昼休みは部室というが
本当に日課になりそうだ。
金沢さん、堀北さん、カイとオレ。
いつものメンバーで飯を食いながら雑談。
「来週テストじゃないですか。
放課後、みんなで勉強会しません?」
カイのやつ、どうしても金沢さんと
デートしたいのね。
金沢さん任せてくれ。オレが阻止してやる。
「オレは、パス!」
「私も」
「ゴメンね。塾があるから」
おお、連携プレー成功。
「大体、カイが居ると勉強にならん」
「バカ言っちゃいけないよ。
オレは、やるときはやる男だよ」
「勉強会しても、メリットがあるのは
カイだけだ」
「ハルだって堀北さんと勉強できるんだから
メリットあるだろう?」
こいつ殺す。絶対、殺す。
始めてオレの中に殺意が生まれたわ。
かぁーー、堀北さんを直視できない。
まずい、どうにかしてギャグにしないと。
頭が真っ白で何も浮かばない。
「メリットあるのは私の方だよ。
細倉くん頭いいもん」
「いやいや、普通です」
素晴らしい返しです。堀北さん。
カイの言葉=冗談と言う認識のようだ。
ふぅ、気まずくなるかと冷や冷やしたぜ。
「いつも教えてくれてありがとうね。
すごく助かってる」
「お役に立てて光栄です。
これからも遠慮なく聞いてくださいよ」
堀北さんに授業中いろいろと教えて
挙げてるからな。
あれ、距離が縮まったんじゃないか?
カイ!ナイスアシスト。
「夏休みは皆でどこか行きたいね」
堀北さん?
ひょっとして、オレを誘ってます?
プールがいい。水着姿見たいっす。
くっそ、金ないわ。市民プールでもいい?
「試合近いんでしょ。休んで平気なの?」
バカ。カイ、余計なこと言うな!
「試合は来週末なの。
試合後は3日に1日は休息しようかなって」
国家機密ゲットしました。
即、大脳皮質に記録してやったぜ。
これで記憶から消されません。
試合が終われば、3日に1回はデートで
きるのね。
絶対、遠回しでオレを誘ってますよね?
カイは、休みが取れないのか
金沢さんにお伺いする。
「まぁ、夏休みなら1日くらい
どこかに行ってもいいかもね」
うわぁ。行きたくなそう。
それにしてもオレ金ないです。
泊まりで1泊とか言いださなでくれ。
あれ?
3人で遊びに行くとかないよね?
置いてかないで。
よし、これは早い者勝ちだ。
「どこ行くかの検討も含めて、
夏休み中は1週に1回とか
ここ (部室)に集まりません?」
頼む、部室なら気軽に参加できるでしょ。
「ハルにしては名案だ。採用する」
お前に聞いてねぇよ。
「部室でも勉強できるし。いいね。
でも、クーラーないから暑いよ」
「どっからか扇風機、
かっさらってきますよ。」
それは泥棒だ。
明確に集まろうとは明言してないが、
雰囲気的に集まることになった。
よし、これで夏休みの思いでが作れる。
思い出が部室?オレは小さい人間だ。
そして話題は昨日の篠崎さんに!
「細倉くん、昨日はありがとうね」
「撮影はどうでした?」




