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(036) リア充してます

◇◇◇ スタジオ ◇◇◇

ここは事務所の地下にあるダンススタジオ。

アイミーは担当マネージャーとの会話の後、

ダンスレンスのため地下へと降りていく。


♪ ♬~♬、♬~♪


曲に合わせダンスするアイミーと凛々(リリカ)


「愛美梨、そこは前前左」

「はい」


「愛美梨、タイミングが遅れてる」

「はい」


振付の先生監修の元、明日のPV撮影に向け

振り入れの最終チェックが行われている。


レッスンと言っても先生が踊った動画を

2人は事前に受け取っており、

各自が振りを覚えて来ていることになってる。


なので、ここでやることは、

2人立ち位置と動きの確認。

そして、決めるところは息が合っているかだ。

場合によっては、その場で振りを変更し

最終系にもっていくという。


「いいでしょう。

 終わりにしましょう」


1時間掛けて2曲の振り入れが完成した。

といっても先生にとっては妥協のOKである。

アイミーには次の現場があり

タイムリミットがあるのだ。

アイドルだし、許される範囲だろうという

ことで先生は終わりにしたのでった。


「愛美梨は、さっき注意したところを

 チェックしといて」

「はい。あどで動画見直しておきます」


挨拶を交わして、先生は早々にスタジオを

後にする。


「ありがとうございました」


息の合った2人の挨拶である。

先生の姿が見えなくなると同時に、

凛々華が口を開く。


「ちょっと!忙しいのは分かるけど。

 ちゃんと覚えて来なさいよ。

 撮影は明日なのよ。分かってる?」

「ごめんなさい。

 朝までには完ぺきにしておくから」

「お願いよ、もう」


アイミーがどれだけ忙しいのか、

凛々華は相方だから把握してる。

どう考えても覚える時間などないハズだ。

だが、プロとして仕事を受けた以上

どんな理由だろうと完璧な物を作るべき。

と凛々華は考える。

だからきつく注意したのだ。


「あと1ついい?」

「なあに?」


「あなたの仕事、私に振るの

 止めてくれません!?」

「そういうつもりじゃ」


凛々華は言うだけ言うと、

アイミーの弁明も聞かずに

背を向け、出入口へと向かい

出て行ってしまった。


結成当初の2人は、同い年で

地方出身ということもあって、意気投合し

プライベートでも行動を共にする

仲の良い存在であった。

どこで歯車が狂い出したのか、

徐々に行き違いを生じ、

今ではビジネスパートナー

というだけの関係でしかない。


仕事中だけでも凛々華と笑って会話がしない。

ダンスが不得意で覚えも悪いので

先に振りを覚えたいと。

頑張ばれば、頑張ばるだけ空回して

いっている感じがする。


多忙な日々が続き、考えることを諦め

現場現場で全力を尽くして来たのだが。


スタジオで1人となって放心状態になる。

そして、天井を見上げると、つい

今までの事がフラッシュバックしてきた。


なんのためにこの仕事をしてるのか。

なんのために毎日全力で頑張ってるのか。

分からなくなってる。


気付くと(ほほ)に涙が伝わる。

自分が何に泣いてるのさえ分からない。

とにかくグループのためにと

泣きながらダンス練習を再開する。


◇◇◇ 男子寮 ◇◇◇

時刻は23時


♪ピコ


アイミーからLineが届く。


Line>元気・・・


<<Line来たよ>>


口に出さなくとも分かっとる。

ノノンと一緒に携帯でドラマ見てるんだから。

通知は一瞬だったけどアイミーからだ。

『元気』までは読み取れた。

何が書いてあるのだろう。気になる。


<<Line見ないの?急ぎかもよ>>

「あと5分でこの回 (ドラマ)が

 終わるからそこまで見てしまおう」


もう、ドラマなんて集中できない。

ノノン、ちょっとあっち行っててくんか。

今日のノノンは引っ付き虫になっとる。


トイレに持って行くか?

そんな行動取ったら、逆に怪しまれる。


朝、確認するか。

いや、ノノンの方が先に起きてる。


授業中はどうだ。

ノノンが昼寝してるときを狙う。

ダメだ。緊急のDMだったどうする。

今見るか、朝一の2択しかない。


アイミーとは関係が切れてない。

いつかバレるのは確実だ。

ならば今見るしかない。


・・・


ドラマが終わり、Lineを見る。


Line>元気してる?

   まだ起きてるかな。

   今日北海道に行って来ました。

   楽しかった。夏の北海道も良いね。


北海道旅行のレターのようだ。

なんて人騒がせな。


<<アイミーって誰?>>

「親戚の子だよ」

<<へぇ。北海道行ったんだね。

 いいな。ノノンも行きたい>>


え?なぜ信じる?

あなた純粋すぎ。


Line<起きてますよ。

   来週から中間テストなので勉強中。

   北海道かぁいいな。行ったことないです


<<嘘つき>>

「バカだなぁ。

 親戚には勉強してるって言っとかないと

 親に遊んでるなんてバレたら大事だぞ」

<<そっか。そうだよね>>


ノノンさん?

オレの言葉を鵜呑みにしないで。

後ろめたいっす。


Line>テストって懐かしい。

   学生時代憂鬱だったのを思い出します。

   ハルは偉いなぁ。私も頑張ろう。


アイミーのJK姿見たい。

超可愛かったんだろうなぁ。

あとでネットで検索してみよう。


この後も意味もなくメッセージを投げ合った。


特に目的もなくだらだらと会話して

終わってしまった。

このやり取りはなんだったのだ?


思いのほか楽しかったぞ。

アイミーも楽しそうだったし。

Lineって目的がなくても使っていいんだ。

金沢さんにLineしてみようかなぁ。


♪ピコ


Line>動画の共有ありがとう。

   そして撮影ご苦労様でした。


おっと、まさに金沢さんからだ。

タイミングよすぎない?

オレの部屋、監視されてるのか?

思わず見渡してしまった。


<<探し物?>>


Line>今日の撮影、ヒメから聞きました。

   大変だったようね。


ピアノの人?ヒメって名前だったんだね。


ヒメって、お姫様の『姫』か。

そんな名前だったらすげぇな。


Line>今週末リベンジすること聞きました。

   大変申し訳ありませんが

   次回も撮影お願いします。


偉いな金沢さん。関係ないのにLineして来て。

動画共有するだけじゃなくて、

オレから報告すべきだった。反省だ。


Line<リベンジは僕からお願いしたものです。

   なので撮影はお任せください。


おやすみのスタンプを送り合って終了。

オレ、リア充してる。クー。

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