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(031) 路上ライブします③

 ◇◇◇ 品川駅前広場 ◇◇◇


オレは現在、篠崎さんのピアノ演奏を

携帯で録画している。

正直想像を超えたパフォーマンスでビックリしてる。

テンション爆上がりです。

うちの学校にこんなうまい子が居たんだ。


開始してから10分ほど経つけど疲れないのか?

曲調は結構激しめ。

休憩なしで弾き続けている。

オレに言わせりゃランニングじゃなく、

100m疾走を続けてる印象である。

やばない?

ピアノってそんなに長く弾けるもんなの?


曲は聴いたことない。

まだ1曲目を弾いているか既に3曲目へ

突入してるかはわからない。

それよりも圧倒的な演奏に驚かされている。


ノノンも篠崎さんを直視して聴き入っている。

ご満悦のようだ。

オレに金が無いから、ノノンをどこにも

遊び連れてやれない。

だけど今は野外コンサートに来た気分。

オレまで楽しめてる。

ありがとう篠崎さん。最高の思い出になるよ。


周囲でも路上ライブするグループが増えだした。

至る所で音が鳴り響きく。

各場所で人だかりが出来てるが見られてきた。


我々のところはというと、酔っ払いのオヤジと

お母さんとその子供だけ。

計3名のギャラリーしかいない。

後ろを多くの人が通るも立ち止まってはくれない。

なんで?


演奏は聞こえているはず。

篠崎さんをチラ見する人も多々いる。

ミス1つない素晴らしい演奏なのに

立ち止まってくれない。

意味分からん?


他のパフォーマと比べたくはないが、

どうしても隣が気になる。

カラオケ歌ってるだけじゃん。

なぜ我々に人が集まらんのだ。


お隣さんは、10代の女子で占めてる感じ。

ボーカルが有名人なのか?


お隣さんを気を取られていたら

子供が飽きてしまったか、

フラフラと別の方向へと歩き出す。

お母さんは子供を追いかける形で

親子がこの場から離れてしまった。


待って!行かないで。カンバック!

ただでさえ少ない観客なのに。

残るは酔っ払いのオヤジだた1人。


♪キャーー


お隣さんの歌が終わったのだと見なくても分かる。

ボーカルの姿を見てみたい。

いったどんな奴が歌ってたんだ?

しかし騒がしい。というかうるさい。


♪キャーー


うるせぇぞ!

こっちはまだ終わってない。黙れ!


<<盛り上がってるね。気になる>>


確かにあれだけ人がいると興味が湧く。

有名人なのだろう、きっと。

たかがカラオケだろ。


そんな状況だ。

周囲を通り過ぎる人達も、お隣が気になるようで

目線があっちに向けられてる。


頼むからこっち見てくれ!

この場で耳を傾け、まともに聴いているのは

酔っ払いのオヤジとオレの2人だけ。


篠崎さんも、お隣の人だかりを感じてるはず。

歓声が聞こえてるはすだ。

どんな心境なのだろう。悔しいのかなぁ。

それとも集中してるから気にならないのか。


手を抜くこともなく全力で弾き続けてる。

凄いよ。

もしオレだったら心が折れてる。

篠崎さんの演奏に乱れがない。

むしろパワーアップしたとさえ感じる。

やはり耳を傾けて欲しくアピールしてるのだろうか。


集中して弾いている姿に見入ってしまう。

あんたカッコいいよ。カッコよすぎる。

やばい、目頭が熱い。泣きそう。


くっそ、悔しい。

なぜかオレが悔しい。

悔しいのは篠崎さん本人だろう。

頼むから、みんな止まってくれ。

数秒でいい。嘘でもいい。

多くの人が立ち止まって聞いてる姿を

篠崎さんに見せてあげて。

お願いします。

撮影じゃなかったら土下座でも何でもするのに。


<<ハル!

 どうして、人が集まらないんだろう?

 無料で聴けるのにもったいない>>


あぁ、同感だ。無料で聴けるんだぞ!

プロのような演奏が。

お前ら全員、人生損してる。


<<多くの人に聞いてもらいたい>>


ノノンはオレの裾をつまんで篠崎さんに釘付けだ。

そんな目で篠崎さんを見つめるな。

オレ、コラえてるんだから。


もしかしたら篠崎さんは、オレとオヤジ

だけに弾いてくれてるのかも知れない。

そう思うと更に胸が締め付けられる。

コンサートで感動して泣いたと耳にするが

理解したような気がする。


篠崎さんの演奏が終わった。


♪バチバチ


とにかくオレは盛大な拍手を送る。

もう、恥ずかしいとか動画がブレまくってる

とかどうでもいい。

とにかく、篠崎さんに心を打たれたと

伝えたい。


隣のノノンも心から拍手を送ってる。

ノノンの応援も感じ取れてくれてたらうれしい。


篠崎さんと目が合う。満足な表情だ。

よかった。

とりあえず、落ち込んでないようで安心した。


オイオイ、オヤジ!何する気だ。

演奏が終わるとオヤジは篠崎さんの元へ行き

話し掛ける。


「報い人。歌ってくれよ」

「報い人?何ですか?」


どうやらリクエストのようだ。

この酔っ払いオヤジが!

慌ててオレも近づき、2人の会話に割って入る。


「ちょっと待ってください」


♪神戸の~港~、男の~人生~


オヤジが歌い出したぞ。


<<誰の歌?>>


知らねーよ。創作じゃねぇの?

場が乱れた。なんとかしないと。


「ちょっといいですか。

 リクエストは受け付けてません。」


♪荒波に~向かう~


聞いてねぇ。


<<気色悪(きしょ)いよ。このおじさん>>


オヤジ、頼むから大きな声で歌うなよ。

目立ってる。

オヤジが歌ってる方が注目浴びてる。

一体どういうことだよ。


これ以上、篠崎さんにダメージを与えないで!


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