(003) 人生最大の告白です①
=-=-= 登場人物 =-=-=
ハル :寮に住む高校生 (主人公)
ノノン:天使と名乗る少女
オレは学生寮に住む高校3年の学生。
自慢ではあるが頭は良い。
だが、それ以外では特にとりえはなく、
刺激のない毎日を送ってたのである。
このまま進めば来年で卒業。
3年間、金無い、彼女ない、平穏な日々
で高校時代は黒歴史として
刻まれるのは規定路線である。
だが、人生のターニングポイントとは
分からんもんだ。
今朝、枕元に自称天使と名乗る幽霊が現れた。
オレは、その幽霊に心当たりがある。
そのきっかけとなる事件があったのだから。
時は昨日にさかのぼる。
◇◇◇ 校舎前の通路 ◇◇◇
時刻は16時。学校でのこと。
放課後、オレは校舎に出て1人グランドを眺めていた。
サッカー部員たちは人口芝全体を使って
汗水流して走り回ってる光景が伺える。
芝の外周には陸上競技用のトラックがあり
陸上部員達による練習が行われていた。
♪~♪♪~~。
背後の校舎からは吹奏楽部による演奏が
漏れ出でる。青春してるなぁ。
夕方と言っても7月下旬。
日中と変わらず日差しが眩しく蒸し暑い。
グランドは照り返しによる熱風が厳しい。
教室も負けてない。
サウナ状態と言っていいだろう。
グランドも校舎もじっとしてるだけで
汗がにじみ出る環境下。
地獄のような中で彼らは練習している。
10代の一番楽しい時期である高校生活を
何が楽しくて彼らは自分にムチを打ってる
のだろうか。
オレにはまったく理解できない。
3年間一度もレギュラーになれない者もいれば、
努力して努力して試合に出れたとしても
1回戦で敗退してしまうことだってある。
そんな高校生活を過ごして
後悔はないのだろうか。
こうして彼らの姿を見てると
余計なお世話だが心配になってしまう。
だが自分はどうなのだろうか?
オレのルーティーンと言えば、
学校が終われば寮へと直行し
ゲームと動画鑑賞の日々。
週末は金がないからと1日寝て終わる。
振り返るとオレの方が高校の3年間を
無駄にしてるといえる。
オレはここに宣言する。
今日、それに終止符を打つと。
オレはここで何をしてるかというと
グランドを走る1人の女子を目で追っていた。
そう、これからその子に告白するのだ。
マンガのように体育館裏に呼び出す勇気はない。
ここで待ち。偶然を狙って告白する。
もし断られたらギャグで済ますつもりだ。
ちなみに彼女はスポーツクライミングの
選手である。
分かり易く言うと壁を登る競技の選手ってこと。
我が校にはそんな部活は存在しない。
彼女は普段、放課後はジムへと直行してる。
2人きっりになれるチャンスがないのだ。
だが幸いにも今日はジムが休みだという。
しかも放課後、学校でトレーニングする
というではないか。
チャンスが唐突に訪れたのである。
なので作戦決行に至った訳だ。
これからすることを考えると
心臓バクバグで落ち着かない。
待ちに待ったチャンスだというのに
帰りたい気持ちであふれている。
今日からオレもリア充の仲間入りだと
自分に言い聞かせてはいるが、
もう一人のオレが学校中の笑い者に
なるぞと、ささやいてる。
ここでもう1人注目する人物がいる。
グランドで1人、オレに視線を向け
練習をさぼっているサッカー部員がいる。
オレはそいつに『練習に戻れ!』と
ジェスチャするも
練習に参加する気が無いらしい。
その彼は同じ寮に住む友人のカイだ。
彼は『今行け!』とジェスチャで返す。
見渡すとターゲットの女子が一息ついて
水筒の水を飲んでるではないか。
彼女との距離はなんと10m。
近い。いつのまに。
要するに今が告白のチャンスだと
カイは指示しているのだ。
説明するまでもないが、
告白することはカイに伝えてある。
本心では伝えたくなかったが、
告白がバレ、大騒ぎにされるのを恐れ
事前に伝えたのである。
そんな友人が『行け!』とジェスチャする。
『行け!』と言われ決行できるのであれば、
3年間無駄に過ごしてなどいない。
行け!...行け!...後悔するぞ。
自分を奮い立たせるも足が動けない。
こんなチャンスは二度と無いかもないのに。
相当なヘタレだと改めて自分が情けなくなる。