(028) 女子からの頼みは断れません
=-=-= 登場人物 =-=-=
ハル :寮に住む高校生(主人公)
ノノン :天使と名乗る少女
カイ :ハルと同じ寮に住む友人
堀北 :告白したクラスメイト
金沢 :超常現象研究部部長
アイミー:偶然出会った現役アイドル
◇◇◇ 部室 ◇◇◇
昼休みのお食事タイム。
オレとカイは、なんちゃら研究室にお邪魔中。
部員でもないのにカイの奴が
日課にしようとしている。
「金沢さん、今日もカワイイね」
「心から思ってますぅ?」
お前、スゲーなぁ。
恥ずかしげもなくオレらの前で言えるよ。
「オレはいつだって本気っす。
金沢みたいな人、タイプです」
「ありがとう。うれしい」
カイよ、軽く受け流されてんぞ。
しかし、攻めんなぁ。
金沢さんもカイの扱いがうまい。
<<キモイよ、この人。
生理的に受け入れられない>>
ノノンさん、あなたの反応は正しい。
オレも同じ寮でなければ
友達にならないタイプだよ。
「この部屋に変質者が居ます」
「ハルは自虐ネタが好きだよね」
「お前のことだ!」
堀北さんがニヤついてる。嬉しい。
「岳中くん、先週はありがとう」
「何度も言わなくていいですよ。
あれしきのこと慣れてますから。
また問題が起きたら言ってください。
金沢さんのためなら一肌脱ぎますよ」
こいつが言うとチャラく聞こえるんだよな。
実際、先頭に立つからかっけぇんだけど。
「何かお礼しないとだね」
「じゃぁさ、今日学校帰りに
4人でお茶しません?」
お前よ。真に受けんな。
金沢さん、返答に困るだろうが。
「オレはパス」
「私も」
「ゴメンね。塾があるからまた今度」
よし、オレのパスが女子2人に繋がった。
「それって、
空いてたらOKってことっすか?」
カイくんよ。やめとけ。諦めろ。
「えぇ、その時は誘ってくださいね」
「やったぜぇ!」
ガッツポーズしてんじゃねぇよ。
こいつバカじゃね。言葉の裏を読め。
「カイ、社交辞令だ。真に受けるな」
「楽しいね」
堀北さんは本当に楽しそうだ。
彼女の笑顔がオレを幸せになる。
昼休みという限られた時間だからかも知れない。
教室で会話してるのとは違った感覚だ。
「細倉くん。
幽霊はどう?まだ表れてます?」
金沢さんの問いに、全員がオレに注目する。
「ごめんなさい。伝えるのを忘れてた。
先週、部室を出た時には消えてました」
「へぇ」
<<良かった。消えてくれて>>
つっこまないぞ。
「あれから一度も姿を見てません。
流石にもう大丈夫だと思いますよ。
金沢さん、ほんとありがとう」
「それはよかった」
「凄~い。あの粉、効果あったんだ」
「堀北さんは信じてなかったんっすか?」
カイ、お前がそれ言う?
霊も煙も信じてなかったくせに。
「半分半分かな」
「金沢さんには感謝しかないです。
お礼がしたいです。
ハルがお手伝いますので何でも言って」
「お前が言うな」
カイに先を越された。
オレの口からお礼を言わないと。
「ほんとありがとう。
カイが言ったからじゃないけど、
何かあるならお手伝いしますよ。」
「いいの?」
「もう遠慮なく。入部すればいい?」
カイは関係ないだろう。
自分が入部したいだけじゃないか。
「うちの部は今年度で廃部だから
部員はいいかなぁ」
「そうなの?」
確かに。部員が1人だからね。
オレとカイが加わったところで、
後輩がいなければ廃部確定だ。
「ならサッカー部の後輩連れてきますよ」
カイも必死だな。
頑張っても100%報われないのに。
「大丈夫、存続させたい気持ちはないから」
この部に思いれはないけど、
そう言われると急に寂しくなってきたぞ。
「別件でお願い頼んでもいい?」
「いいですよ。遠慮なく言って。
ハルは暇なんで」
「だからカイが言うな」
<<カイが手伝いなさいよ>>
分かってくれるのはノノンだけだ。
「youtubeに動画を上げてる人がいて、
撮影のお手伝いを頼まれてるの」
「そいつ、いけすかねえなぁ。
なんで忙しい金沢さんを使う?」
おぉ確かに。
もしかして彼氏か?
「私が動画の編集できるからだけど。
人いないから撮影も手伝ってるって感じ。
塾があるからなかなか時間が作れなくて」
「断れないんすかね?」
「今日は、大丈夫って言っちゃったんです」
どういうこと?
金沢さんがYoutubeの動画の編集と
撮影をしてるのね。
それで今日が撮影日だと。
「今日っすか。
なるほど事情は理解しました。
動画編集も含めてハルがやりますから。
安心して塾に行ってください」
ふざけんな。
動画編集なんてやったとこなぞ。
<<ちょっと勝手決めないでくれる!>>
そうだ、そうだ!
ノノン、もっと言てやれ!
<<ノノンとの時間がなくなるでしょ>>
そっちかよ。
<<本当?お願いしちゃっていい?>>
そんな目でオレを見るなよぉ。
金沢さん、可愛い。
やりたくねぇが仕方ない。
「分かりました。
先週のお礼も兼ねてお手伝い致します」
<<えー!やるの?>>
言っちゃったよ。
いつになったら本音で会話できるんだ。
「細倉くん、ありがとう」
「今日だけでなく、今後はハルにやらせますので」
<<ちょっと勝手に決めないで>>
そうだ。そうだ。
勝手に決めんな。
「とりあえず、分かりました。
今日ですよね。
どこに行けばいいですか?」
「同じクラスなので、
放課後にAクラスに来て。
その人、紹介します」
「同じクラスだったんですね。
ちなみに、どういったご関係ですか?」
おっとカイくん、それ聞いちゃう?
オレも興味ある。
「席が隣同士ってだけです。
そんなに仲がいいとかはないですよ」
「楓、友達作るの下手だんね」
「ちょっと」
なぁんだ。彼氏じゃないのか。
あ!でもカイのやつ喜んでないぞ。
なるほど、嘘ついてると読んだか。
学校では恋人と宣言できない事情があるとかか。
カイも巻き込んでやる。
「カイも手伝えよ。
手伝いたいんだろう?」
「残念、今日は部活だ。
オレの分まで楽しんで来てくれ」
「遊びじゃねぇから」
カイくんよ。落ち込むなって。




