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(021) 初デート①

 ◇◇◇ 原宿駅 ◇◇◇


時刻は午前10時半。

指定されたJR原宿駅の竹下口で

オレはKFCカーネルなんちゃら

のように立っている。

そう、ギャルを待っているのだ。


待ち合わせ時間よりも30分も早く

来てしまった。

騙されてるのに浮かれすぎだぞ、オレ。

しかし、初めての原宿だが感動はないな。

ここに来る連中は何が目的で集まってんだ?

最近の若者は理解できん。


ここは待ち合わせ場所として失敗だな。

人、人、人であふれてる。

人が多い上、更に致命的なことが発覚した。

彼女がどんな顔してたか覚えてない。

というか、あの時マジマジと見てない。

なので覚えてるもなにもないのだ。

向こうだって同じなハズ。

出会えるか怪しくなって来た。詰んだな。

このまま帰ることになりそう。


通りすぎる女子達が皆、待ち合わせ相手に

しか見えない。


時刻は10時50分。


「お待たせ。もしかして待ちました?」


大きなサングラスに帽子をかぶっての登場。

だれ?

声は明らかに昨日の人だ。


「さっき着いたばかりです」

「時間ないから行きましょか」


「14時まででしたっけ?

 お店沢山回るんですよね?」


「できれば」

「了解です。

 ちょうど青(信号)です。

 渡っちゃいましょう」


2人は早歩きで横断歩道を進む。


「結構原宿に来られるんですか?」

「いえ、3度目くらいかな。

 知らないとこ沢山あります。

 ハルキくんは?」


ハルキくんだって。

やべえ、カップルっぽい。

女子から下の名前呼ばれるの初めてだ。


「初めてですよ。

 北篠(ほうじょう)さんが誘ってくれなかったら

 一生来ることはなかったと思います」

「北篠さんってなんか固っ苦しい。

 名前で呼んでくれると嬉しいな」


いやぁ、ハードル高すぎだよ。


「愛称とかでいいですか。」


名前は北篠(ほうじょう) 愛美梨(えみり)だっけ。

何度もDM見たから覚えちゃったよ。


「アイミーさんとかどうです?」

「それいい。

 そんな呼び方する人、だれもいないよ」


こんな明るい子だったんだ。

外見と違って気さくな人って感じがいい。

昨日とは大分印象が違う。


「へぇー。

 知り合いには何んて呼ばれてるんですか?」

「エミリか、エミリンが多いかな」


「エミリンっていいですね」

「ハルキはアイミーでお願い」


どう見ても北篠さんとオレは済む世界が違う。

こんな女性がオレなんかを相手にしないと思ってた。

こうして会話してるのが夢のようだ。

もうヤクザでもなんでも出て来やがれ。


「分かりました」


そんな会話をしながら、竹下通りを抜け、

奥の方へと進んで行く。

いつの間にか女子と緊張せずに会話が出来てる。

すげぇ進歩だ。

いい感じな2人。

この子、見た目より気さくで話しやすい。

ギャルのハードル下がったわ。

しかし、オレのようなイモ野郎と一緒で

恥ずかしくないのか。


楽しい時間はあっと言う間。

ギャルとデートしてることで最初の壁が現れた。


レディース専門の洋服店に到着した。

めっちゃ入りずらいのですが。


入り口でオレは入るのをためらってしまった。

男子には入りずらい。というかオレが入りずらい。

イケメンなら許されるであろうが、

オレみたいな奴はダメだろう。

挙動が変質者だ。


下着専門店ではないのだから問題ないじゃんと

言われそうだが、入ってみれば分かる。

店員の目線が怖い。


頼むから警察呼ばないで。


無理やり引っ張られる感じで入店したものの

まぁ居心地の悪いこと。

何もしてないのに犯罪者になった気だ。


店内に入るとアイミーはサングラスと帽子を

外したのである。

やっとまともに顔を見れた。

まぁ、なんて綺麗な人なのだろう。

(まぶ)しくて直視できない。


「これ持っててもらっていい?」

「ああ、気が利かなくてすみません。

 カバンも持ちますよ」


オレは手を差し伸べ、サングラスと帽子。

そして、小さなショルダーバックを受け取る。


アイミーは適当に商品を何点か手に取り

試着室へと入る。

オレはその正面で待機してる訳だが、

何と興奮するシチュエーションだろうか。

カーテンがあるとは言え、布1枚挟んで

反対側ではアイミーが生着替え中だ。

想像だけでも興奮する。


もし、彼氏だったら『サイズどう?

1つ大きいの持ってこようか?』などと

言いつつ、着替えを堂々と拝見するのだろうか。

いいなぁ、カップルって。

妄想が広がるなぁ。


あと2歩ほど左にズレれば、隙間から覗けそうだ。

その2歩がなんと遠く感じることか。

オレの被害妄想かも知れないが、

背中に刺さる店員の視線が痛い。


そんなことを考えてたらカーテンが開く。


「どう?」


どうって言われも。

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