表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/249

(198) 営業活動頑張ります②

◇◇◇ トライデント社 ◇◇◇

時刻は10時。


ゲーム制作会社であるトライデントヴェーダ

にオレは伺っている。

かつて1度だけ、ここの仕事を受けたことがある。


本日は、仕事をもらいに営業に来たのだ。

アポを取ってない。飛び込みである。


社内に入ると雰囲気は昔のまま。

何も変わってない。

入り口には警備員はおらず、

企画室へと向かう。

懐かしさを感じつつ余韻にひたりながら

廊下を歩いてると懐かしい人物に出くわす。


「おや、久しぶり。元気そうで」

「どうも田中です。

 その節はお世話になりました」


この方は、ゲーム制作プロデューサーで

世界的に有名な人物だ。

ここで佐久間さんに会えたのは大きい。


「最近お見かけませんが、現在は

 どのようなお仕事をされてるのですか?」


この人も神楽の社長と同じことを質問する。

研究室に戻ったから、この業界から

足を洗ったとは言えない。


「特に仕事はしておりませんでした。

 最近になってこの業界に復帰した感じです」

「ちょうど良かった。

 ご相談がしたい事がありまして

 ちょっとだけ相談にのって頂けませんか?

 時間はとらせません」


これって仕事の話だよな?

願ってもないことを相手サイドから発せられた。

断わる理由などない。


「構いませんが、どのようなお話でしょう?」

「歌えて踊れて、しゃべれる女子って

 居ないですかね?」


まさにオレがここに来た理由そのものだ。


オレは顔が広く、やり手の業界人に思わてる

ようだが、そんなことはない。

岩井さんの時だって、仕事は全て神楽経由で

紹介してもらっていた。

オレ自身、なんのつてもない。


だから、小さな仕事でも何かないかと

昔のよしみでここへ訪ねた訳なんだが。


「それはゲーム関係ですか?」

「極秘に進めてる新作ゲームのプロジェクトが

 ありまして、ちょっと言い辛いですが」


「アカリの時と同じようなイベントを

 したいのですね」


アカリとは、過去にオレがプロデュース

してたアイドル。


「そうなんですよ。

 司会進行役をお願いしたくて。

 どなたかご紹介して頂きたい」

「それっていつ頃の話しですか?」


「来月中旬くらい。日程が決まりましたら

 改めてご連絡いたします。」

「なら私から1つ提案があります」


願ってもないことが舞い込んだ。

オレが頭の中で、こんな仕事ないかなぁと

漠然と考えていたことを伝えたのである。


「それ面白いですね。

 どうせならゲームに組み込んで

 しまいましょう」

「それができるなら話題になるかは未知数ですが、

 ゲーム自体は面白くなそうです」


この場で考えた案であるが、

あっさり仕事が決まってしまった。


「ところで本日はどういった御用件でこちらに?」

「まさに営業に来た次第です。

 たった今、目的が達成できました。

 また新作のゲームに携われそうで

 ワクワクして来ましたよ」

「こちらこそです」


ということで口約束であるが仕事がゲットできた。

発注書が来ることを願うばかり。


◇◇◇ アーツファクトリ ◇◇◇

時刻は13時。


久しぶりにアイミーの芸能事務所へと訪れる。

5つのアイドルグループを持つ事務所だ。

だが、売れてるのはアイミーだた1人だけ。

岩井さんが軌道に乗って来たのに

亡くなってしまったは残念なところ。

もし、生きていたら2人がこの事務所を

引っ張って行ったことだろう。


ここに来た目的は2つ。

社長にある決断をしてもらうため。

そしてアイミーの進退についてだ。


この事務所でのオレの立ち位置は

単なる岩井さんの専属マネジャーでしかない。

彼女が亡くなった現在、

オレに居場所などない。

岩井さんの残作業と武道館ライブで

つながってるだけだ。


なので事務所からいつ去ってもいい状況にある。

だが事務所側としてはオレが去られるのは困る。

それは資金源がなくなるから。

理由を付けては、出資という形で

関係のないところにまでお金を提供している。

そろそろ貸し付けにしないと

この事務所のためにもならない。

そいう意味では(いびつ)な関係と言えよう。


オレは社長室へ入る。


「これは田中さん。お待ちしておりました」

「お忙しいところ、ありがとうございます」


お互いソファに腰かけ、対面で会話する。


「それでお話しとは何でしょう?」


社長の方から本題に入ってくれた。

話しが早くていい。


愛美梨(えみり)の今後についてです」


アイミーのプロデュースをオレにさせて

欲しいと提案したのである。

この事務所にとっては願ってもないことだ。

ライブ後は、夢であるシンガーソングライター

を目指すと宣言してる。

正直、この事務所では扱い切れない。

アイミーは売れっ子とは言え、

アイドルが卒業したらファンが離れるのは確実。

アイドル枠の仕事は消える。

そしてシンガーソングライターでは

新規の仕事を取るのは難しいだろう。

卒業したアイドルたちが芸能界に残るのが

如何に難しいかってことだ。


「実は私の方からお願いしたいところでした」

「ですが条件があります。

 神楽芸能と業務提携して欲しいのです」


アイミーの仕事を取るには大手の神楽から

もらった方が早い。

書類を見せて社長は目をしかめる。

業務提携と言っても対等な立場での

取り引きではないのだから。

最終的には神楽芸能の傘下になるということ。

その際、社長は交替させられるだろう。


事務所やタレントにとっては良いことだ。

神楽芸能の傘下になれば仕事は増える。

事務所が大きくなる可能性を秘めている。

だが、社長にとっては、自分が作った事務所

を奪われることとなる。


オレが個人的にアイミーをプロデュース

することも考えた。

だが携われるのは半年まで。

それを考慮すると、アイミーを神楽に任せるのが

ベストな選択だろうと考えた訳だ。


「決断は非常に難しいでしょう。

 第二案としては、愛美梨を神楽へ

 移籍させるというのもあります。

 その場合、移籍料を支払います」


強行に移籍させてもいいが、

この事務所には愛着がある。

せめてものオレからの謝礼だ。

このままオレ抜きでアイミーを抱えてても

失敗する道しか残されてない。

結果、アイミーは他の事務所に移籍することと

なると読んでいる。

ならば、神楽に移籍させるのがベスト。


「一日考えさせてもらえないだろうか?」

「それはもちろん。重要な事なので。

 おそらく事務所にとって

 ターニングポイントとなるでしょう。

 じっくり考えて結論を出して頂けたらと」


オレの目的は達成した。

あとは社長の決断しだい。

社長と挨拶を交わし、事務所を出たのである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ