(195) 生徒会 vs カイ ①
◇◇◇ 生徒会室 ◇◇◇
時刻は12時45分。
オレとカイは昼食を取らず、直接
生徒会室へと伺うことにした。
理由は、生徒会メンバーがそろっている
だろうと考えたからだ。
そしてオレらは、生徒会室の入口に立ってる。
入るのに緊張している状況だ。
職員室に入るよりハードルが高い。
オレの勝手な想像だが、生徒会メンバーは
全員意識高い系の集まりだろうと考えてるので
会話がかみ合わないのでは?
簡単に論破されるのでは?
と恐れている。
さて、どうなることやら。
♪コンコン
「ちーす」
カイよ。それはない。失礼すぎだ。
オレらがやべぇ奴認定、決定だな。
この一言で、対等な立場は望めなくなった。
「失礼しま~す」
ここはオレが仕切らないと。
「はい。生徒会にご用ですか?」
部屋には女子1人しかいなかった。
小柄でカワイイ子だ。
この子が生徒会長なのか?
「文化祭の事で相談に来たんですけども。
あなたで宜しいですか?」
「そろそろ会長が来ますので、
直接会話してもらっていいですか?」
この子は生徒会長ではなかったようだ。
確かに見た目は頼りない感じがする。
この子の役割はなんだろう?
秘書か。マスコットかも。
「あんた、生徒会役員の人?」
「はい。会計を担当してます」
カイよ、高圧的過ぎ。
オレらはお願いする弱い立場なんだから
わきまえてくれ。
「キミ、可愛いね」
「やめろ!ナンパしに来たのなら帰れ」
終わった。オレ1人で来れば良かった。
相手は女子1人。
男子2人が入り口を塞ぐように立ってたら
どうみても監禁してる構図だろう。
目の前の少女が怯えてるように思えて来た。
ここは一旦退散して出直した方がよさそうだな。
♪コンコン
「入ります」
男子2人が現れた。
あんたらも生徒会に用事?
オレらが先着だから。
「会長、お客さんです」
おっと、あんたらか。
どっちが会長?
メガネ掛ける方かな。
「会長の根本です。こちらは副会長
生徒会に用ですか?」
ハズレたか。
メガネくんは副会長なのね。
「文化祭の事で相談したいそうです」
いいね。出来た子だ。
そのまま立って会話が続く。
「聞きましょう。
予算の話しならもう変えられない」
副会長が仕切るのね。
オレが言葉を発する前にカイが口を開く。
「単刀直入に言う。
文化祭でバンド演奏したいから
演奏して良い場所を教えてくれ?」
「あなた方は音楽部ですか?」
「いや、違うけど」
「個人やサークルでの受け付けはしてません。
また、クラスの出し物としても認められません」
あれれ、ダメな流れになってきた。
続けて、会長が説明する。
「演奏できる場所は3か所のみです」
体育館、校舎前の広場、音楽室だそうだ。
使えるのは部活のみ。
受付は既に1学期の終わりに終了しており、
プログラムは決定してる。
学校側の承諾ももらってる。
なので演奏できる場所も時間帯もない
とのことが告げられた。
「そんな事は分かり切っている。
だから相談しに来たんじゃん。
校舎裏なら演奏していいよな?」
カイ、言い方。
こりゃぁ、OKでも却下されるな。
「近隣住民から苦情がきます」
副会長がダメな理由を説明し会長が後押しする。
「申し訳ないけど許可はできないですね」
この会長、弱腰だなぁ。
強く押したら許可もらえそう。
「じゃぁ、どこなら演奏していいんだ?」
「話し、聞いてました?
近隣住民から苦情が来るんです。
だから時間と場所が決まってます。
他に使える場所はありません。
大体、おたくらは個人ですか部ですか?」
そう言えば何ていう部名だっけ?
「奇怪現象研究会だ」
そんな名称だっけ?
会計の女子が調べてる。
「超常現象研究部ですね」
「そう、それそれ!」
なんだよ部名間違ってるじゃん。
よくもまぁ堂々と言えたもんだ。
「そんな部があるのか」
生徒会が知らねぇのかよ。
「えーっと。
部員は金沢さん1名だけのようです」
名簿があるの?
ちょっと待った!
あなた達、誰ってなりません?
帰ろうぜカイ。ダメだ。諦めよう。
「部員は増えてる。
部長含めて5名居る。
オレらも当然そのメンバーだよ」
オイオイ、勝手に決めて良いのかよ。
カイは、サッカー部だろ。
「そうですか。
申し訳ないですけど、来週でいいので
部員の変更届を提出してもらえませんか?」
会長、もっとビシッと言った方がいいと思うよ。
「そのメンバで演奏したいってこと?」
副部長の方が会長みたいだ。
「そうだよ。ダメなの?」
カイ、諦めろ。
「あのですね。文化祭は部の活動を
発表する場なのですが。
バンド演奏関係ないですよね?」
ごもっともです。
超常現象部がなぜバンドなの?って感じ。
オレも説明できんわ。
「なら野球部が、焼きそば屋やるの変だろ?」
おぉ、確かに。
やるね、カイくん。お前連れて来て正解だわ。
さぁ、どう反論するのかな?
副会長さんよ。
「とにかく。
パンフレットが完成してるので、
プログラムの変更はできません」
あれ?逃げた。オレらの勝ち?
いや、戦う前から負けが決定してる。
「あのぉ。
弁当食べるんで終わりにしませんか?」
この会長ダメだ。
副会長と交代した方がいい。
しかし、プログラムの変更が出来ない
となるともう諦めるしかない。
カイが会計の女子に問う。
「体育館と校舎前って、毎年同じ
部が同じ時間を使ってるじゃん。
本当に応募して決めたの?」
なるほど。暗黙の了解で決まってる説か?
「一般生徒へは募集してません。
部会で話し合って、今年も例年通り
の時間割に決まりました」
「部会でおたくらの部が手を挙げな
かったのが悪い。
もう手遅れです。帰ってください」
ここまでだな。