(186) 今日は疲れました
◇◇◇ 品川の新居◇◇◇
時刻は19時半。
「お腹いっぱい。
しばらく動きたくない」
ちょうど夕食が終わったところ。
ノノンはソファに寄りかかり、
両手をお腹に乗せ苦しそう。
大げさな。言うほど食べたか?
白川さんは食器の片づけをしてる。
偉いなぁ。
白川さんだって動きたくないだろうに。
オレは立ち上がり、キッチンへ。
「洗い物はオレがやりますよ」
「私がやるからハルキは休んでて」
なんて良い子なのだろう。
「白川さんこそ休んでよ。
朝からズーっと動きっぱなしでしょ?
後はオレがやりますから」
「ハルキだって朝から忙しかったんじゃない?」
精神的に疲れてますけどね。
「片付け担当ってことで。
全部を白川さんにやってもらうのは
気が引けます。
これから毎日なんです。
オレは洗い物担当ってことで、
ちゃんと役割分担しよう」
「ありがとう。なら、ここお願いね」
それでいいんだよ。
オレも手伝わないと後ろめたい。
白川さんはペットボトルのお茶と空のグラス
を持ってノノンの横へ。
「映画観ようよ。恋愛映画。
キュンキュンするやつ」
「見たい見たい」
始まった。ノノンの恋愛脳。
白川さん?嫌なら嫌っていいなよ。
楽しそうな女子2人を眺めながら食器を洗う。
白川さんの笑顔を見るだけで幸せな気分になれる。
横浜での逃亡生活を思い出す。
二度と白川さんの前に現れるつもりはなかったのに。
ある意味、記憶喪失に感謝だな。
◇◇◇◇◇◇◇
「ハルキ!」
ん?白川さん?
「ハルキってば。映画終わったよ」
あれ、寝落ちしてました?
「ごめん。いつの間にか寝てたわ」
洗い物を済ませたあと、3人でソファに
寄りかかり、映画を見ることになった。
だが、開始10分までしか記憶がない。
「ハルキ疲れてるんだよ。もう寝たら?」
ポジティブに捉えてくれて助かる。
出来た嫁だ。
確かに午前中のミッションで電池切れかも。
身体がだるいし、やる気も起きない。
自分でも驚いてる。
そうとう朝から張り詰めてたんだな。
「部屋に帰って寝るわ」
「付いてってあげる」
1つ1つの言動がカワイイ。
「大丈夫。下に降りるだけだから。
それよりも明日はどうする?」
「夏休み最終日だよ。
お出かけしようよ」
ノノンは元気だな。
最終日くらい、まったりしようよ。
オレがオッサンであることを自覚した。
「引っ越しで足りない物とか無いの?」
「日用品買いに行かないと」
白川さんは主婦してるなぁ。
ノノン、見習え。
「じゃあ、買い物は夕方にして。
それまでどこか行こう」
「賛成!」
ということで明日は何となく決まり
オレは3階のマイホームへ。
◇◇◇ 自宅 ◇◇◇
時刻22時半。
オレの新しい新居。
ベッドしかなく、寂しい感じの部屋。
寮を思い出す。
♪ピコ
岩井さんからLine。
お休みのスタンプだった。
おや、アイミーからLineが来てたわ。
気付かなかった。
昨日じゃん。無視してたわ。
内容はオレが生ライブ見た感想の
返事であった。
Line>>見てくれたんだ嬉しい。
言ってくれたらスタジオ呼んでのに。
武道館ライブも楽しみにしてて。
スタジオ呼ぶって、観覧は全員女子でしたよ。
当たり障りのない返答であった。
良かったこの内容なら敢えて返さなくても
問題ないな。
文化祭に向けて、もう1回くらいは
練習しておきたい。
明後日、学校で篠崎さんと会話するか。
なんだかんだ忙しいなぁ。
♪ピコ
Line>>明日。お昼食事しません?
既読になったのを知ってかアイミーからDM。
明日か。アイミーとメシ行きてぇ。
でも明日は白川さんとお出掛けだ。
モテる男は辛い。
アーツの事務所に行くと嘘を付くか?
Line>>ごめん、彼女が出来ました。
もう2人で会うのはちょっと。
送ってしまった。くっそー。
アイミーとのデートだったのに。
もったいない。
そして返事が怖い。何て返してくるだろう。
Line>>彼女さんも連れて来なよ。
お昼代出すから、どんな子か見たい。
え!
予想外の反応にパニックです。
Line>>彼女はアイミーのファンなんです。
喜ぶと思う。
彼女と同居人の女子も連れってて
いいですか?
オレ含めて3人になりますけど。
OKのスタンプが返された。
オレは白川さんに電話して、この件を話す。
即OKの返事。聴くまでもない。
もちろん、ノノンもだ。
電話越しでも凄く喜んでるのが伝わる。
夏休み最後の思い出として、
いい1日になりそう。
この事をアイミーに伝え、明日のお昼に
4人で食事することが決定した。
場所は原宿。
もう田舎者じゃない。免疫は出来ている。
凄い楽しみだ。
よくよく考えたらオレ、ハーレムじゃねぇ?
遅咲き来たぁ!