(185) 新居にお邪魔します
◇◇◇ MAEDAコンサル ◇◇◇
時刻は16時。
「なるほど、状況からしてミッション
成功と言っていいだろう」
なんだこいつ。偉そうに。
オレは、IEC本社から前田が利用する
発着室へ行き、ハルキの身体へと戻った。
そして、ミッションの結果報告をしに
前田のオフィスへと足を運んだのである。
現在、社長室にて前田と2人で会話している
ところだ。
「はやり、お前に頼んで正解だった」
「だれでも出来た作業だったんだが」
「いやいや、西田の身体が無事だった。
ニュースにもなってない。
ジュン博士だから成功したと言えよう」
「調子の良い事、言いやがって。
今回の件はそちらの管理問題が原因なんだからな。
なぜオレが尻を拭かなきゃならん。
寿命が縮まったぞ。二度と御免だ」
「それはご苦労さまでした。
これからも金で解決するなら支援させて頂く」
「当たり前だ」
♪ピコ
白川さんからのLine。
きっと心配してるハズ。
返答して安心させてあげないと。
「もういいだろう?
用事があるんで退散する」
「ご足労掛けた。
次、何かあったら連絡する」
「仕事の話しは持ってくるなよ」
オレは前田の事務所を出ると同時にLineを確認。
Line>>まだお仕事中?
ノノンちゃんと餃子作ってるます。
ハルキの分も残しておくから。
それだけ伝えておきます
あぁ、癒される。
食べたい。白川さんの手作り。
Line>>今、仕事は終わりました。
1時間後に到着します。
夕飯一緒に食べよう。
『お疲れ様』のスタンプが返って来た。
続けて『ハグ待ってます』のスタンプも。
クー!
オレの嫁はモヤモヤを晴らしてくれる。
お望みとあらば、ハグだろうと何でもしますがな。
◇◇◇ 品川の新居 ◇◇◇
時刻は17時。
オレは引っ越し先のマンションへ到着。
前田のオフィスから直行して来た。
オレ、白川さん、ノノンの3人は、今日から
同じマンションで居住することとなる。
白川さんとノノンは8階の2LDKで
シェアする形。
オレだけ、3階のワンルームになる。
白川さんと同居できないのは残念だけど
女子同士の方が何かと相談し易いだろう
から結果良かったと思える。
いざとなれば、白川さんがオレの部屋に
泊まりにくればいい。
同じマンションだ。深夜でも移動は楽だ。
これで、白川さんと気兼ねなく
会えるようになったのは嬉しい。
だが寮から出て、朝と夜の飯が無くなったのは痛い。
料理は出来ないし。
毎日コンビニ弁当にしら白川さんに怒られそう。
ちなみにオレの引っ越しは既に終わってる。
PMCにやらせたからだ。
と言っても寮から持って来た大きなバッグ2つのみ。
それを部屋に置いてもらっただけ。
家具はベッドだけ交換した。
収納はクローゼットがあるからそれを使う。
エントランスを通り抜け居住区に入る。
今度は自分のマンションでもあるため
開けてもらう必要がなくなった。
エレベータに乗り、8階を選択。
まずは自分の部屋でなく、白川さんだ。
きっと、オレの帰りを心配して待ってる。
顔を見せて安心させてやらないと。
♪ピンポン
玄関のチャイムを鳴らす。
♪はーい
インターフォン越しから白川さんの声が聞こえる。
彼女の声を聞いたら早く会話をいたい。
「ウーバーイーツです」
♪もう
声でオレだとバレたようだ。
施錠が解除されドアが開く。
そして、白川さんと目が合う。
「頼んでませんけど」
「ハグの注文されませんでした?」
「あっ!しました」
カワイイ。
オレの嫁は宇宙一カワイイ。
玄関へ入ると
彼女はハグしてと両手を広げる。
注文だからな。
オレは彼女を強く抱きしめるのであった。
「お疲れ様でした」
「ただいま」
旦那が仕事から帰ってきた新婚夫婦じゃねぇか。
「怪我してない?」
「あぁ」
「カギ持ってるんでしょ?
勝手に入ってくればいいのに」
「一応ね。ノノンも居ることだし」
これでも社会人なんでね。常識はわきまえてます。
見た目は子供、頭脳はオッサン。
その名は常識人ハルキですから。
このフレーズ、どこかで聞いたような。
リビングに入ると。
「お帰りぃ~」
ノノンがリビングで餃子を作っていた。
「良いね、こういうの。
寮にはないから新鮮」
楽しそうなノノン。寮を出て正解だったか。
オレまで楽しくなってくる。
「最初から住むところマンションに
しとけばよかった」
「ノノンは一人暮らし無理だろう?
だから寮にしたんだ。
学校も近かったし、あればあれでよかっただろ?」
「まぁね」
何が『まぁね』だ。
「明後日から学校だよ。
楽しい楽しい夏休みが終わっちゃう」
確かに。
長いようで短い夏休みだった。
沖縄、また3人で行きたいなぁ。
「学校始まったら、ご飯どうします?」
白川さんから疑問が投げられた。
「お昼?
いつも学校の売店だから何も変わらない」
そう言えば、ノノンはお昼どうしてたんだ?
「お昼もだけど、朝と夜はどうするの?」
「気にしなくても大丈夫。適当に食べるから」
そこで白川さんが次の提案が出される。
「もしよかったら朝と夜、作るけど。
あとお弁当も」
要するに全部じゃん。
マジ?
「ノノンも手伝う。料理楽しい」
行為に甘えていいのだろうか?
1日だけならまだしも、毎日となったら大変だぞ。
「気にしなくても大丈夫だよ。
元々1人で自炊してたから。
それが3人分に変わるだけ。
ノノンちゃんも手伝ってくれるって言ってるし」
「ノノン手伝うよ。料理覚えたい」
確かに、白川さんは実家に居た時から
1人で自炊してたっけか。
1人寂しく食べてたってことにもなるけど。
やばい、状況を思い浮かべると目頭が熱くなる。
「そう言ってもらえると助かる。
ならお言葉にあまえます。
でも辛い時は言って?皆で食べ行こう」
「うん、わかった」
ノノンが包んでる餃子を見る。
お皿にキレに並べてある。
形も統一されれて売り物のようだ。
へぇ、ノノンも意外と器用だな。
白川さんの教え方が上手いのかな。
「へぇ、上手いもんだな。
これ全部、ノノンが作ったの?」
「ここからこっちがノノンが作ったやつ」
「ちゃんと餃子の形してるよ。
うまそう」
「でしょ?」
ここで白川さんが補足してくれた。
「そうなの。
ちょっと教えて2、3個作ったらプロ並みなの」
「ノノンは料理に目覚めましたから」
白川さんは、おだてるのが上手いな。
こんなん言われたらノノンも張り切る。
「ノノンは天才なんです。
教えてもらえれば出来る子だから」
こいつ調子にのってんな。
「夕飯は7時でいい?
作った餃子は直ぐ焼かずに冷蔵庫で
冷やすと、もっと美味しくなるから」
「冷蔵庫入れると変わるんだ?」
ノノンが驚いてる。オレもだけど。
なるほどね。
こういうところで味の差が生まれるのか。
白川さん、あなた完璧です。
「ノノン!ちゃんと覚えろよ」
そうか!良い提案が思いついた。
「白川さん、お店開いたら」
「それいい、ノノン賛成!
料理上手なのに私達だけしか味わえない
って、もったいないよ」
小料理屋で働く和服を着たママさんを
想像してしまった。
似合いそう。
「作るのは好きだけど、
客商売はちょっと嫌かな」
「分かる。
バカッターとか変な人もいるもんね」
ノノンはコロコロと意見変えるな。
「お料理教室とかだったらいんじゃない?
変な人は来ないでしょう。
直ぐに返事はいいから、気が向いたら言って。
協力するから」