(183) ドキドキのミッション
◇◇◇ IEC本社 ◇◇◇
ここはIEC本社18階にある研究室エリア。
なんとか無事に目的地への潜入に成功した。
ここに存在するか不明なQGP22(量子発生機)を探してる。
軽くエリア大体を確認したが測定器に反応でない。
盗んだのはIEC社かも知れないが、
支社に保管してある可能性もあるし、
関連会社に調査依頼してる可能性だってある。
ここ本社にあるとは限らないのだ。
ニュートリノは地球を貫通できる。
すなわち機器の場所を特定するのは不可能なのだ。
返ろうかなぁ。
白川さんとノノンは引っ越し大丈夫だろうか。
なぜ、オレはここにいる?
ブル。
あれ?
ペンが振動したような感触があった。
検知したのか?
周辺をくまなくチェックさせると。
ブル。
特定の方向で反応が見られる。
その方向へ近づくと。
ブルブル。
更に反応が大きくなる。
お目当ての物か分からないが、見つけた。
とある部屋の中に検知した物があることが判明。
壁沿いに移動し、入り口を見つける。
1812室。
扉を開けようとしたところで最悪な事態に遭遇する。
利用表示が『使用中』マークになっている。
すなわち中で誰が作業中のようだ。
さてどうしよう。
『忘れ物を取りに来た』と言ったら
信じるだろうか?
この部屋が、個人用なのか共用なのか分からない。
中の者を人質にするという手もある。
そうすれば、堂々と作業できるかもと頭を過る
出て来るのを待ってたら、オレの存在がバレる
かも知れない。
意を決し扉を開け、中へと入る。
・・・
誰も居なかった。
なんだよ。脅かすなよ。
『使用中』マークはスライド式で
手動で切り替えるタイプだ。
前の人が『空室』に戻し忘れたのだろう。
一時的に退出してる可能性だって考えられる。
どちらにしても急いだ方が良さげだ。
ブルブルブル。
更に反応が強くなる箇所がある。
この部屋で間違いない。
ブルブルブルブル。
反応がMAXになる場所を特定。
だが、物が確認できない。
だってそれは鉄製のラック内だから。
開けようとするもロックが掛かってて開かない。
数値ボタンを入力タイプのラックである。
さて、何桁の数値を打ち込むのか。
何回ミスできるのか、分からない。
>>まずいことになりました。
偽造している社員さんが入館されました。
佐々木からの連絡が入る。
今日は1日外出じゃないのかよ。
中止になったってこと?
>>見つかるかも知れません。
急いでください。
急げと言われても、どうすりゃいい?
オレは胸ポケットから別のボールペンを手にする。
こちらも見た目はペンだが、放射線を放出して
機器を壊させるための道具になる。
当初は、量子発生機に直接当てて破壊する
予定だったができない。
放射線で破壊できるということは、
このラックは貫通できるはず。
ブルブルブルブル。
オレは、検出機が一番強く反応する場所を特定し
そこへ放射線を10秒ほど照射させてみた。
そして、チェックしてみる。
ブルブル。
反応が弱くなってる。
破損させられた?
多分そうだよな。
再度放射線を30秒ほど照射させる。
計測器の反応が無くなった。
破壊に成功したようだ。多分。
ちなみに破壊といってもQGP22から
ニュートリノが発生しなくなるだけ。
それ以外は壊れてない。
この機器を解析してる者は壊れたことさえ
気付かないだろう。
オレは急いで部屋を後にして出口へと向かう。
研修室エリアを出るときも同じ手順を
踏まなければならない。
とにかく急がないと。
ボックスに入る。
持ち物検査が実施され。結果OK。
次が問題の指紋である。
>>大変です。西田様が発見されました。
不審者が検知され警備員が18階に向かってます。
佐々木からの連絡が入る。
オイオイ、焦らせるな!
指を中に入れる。
♪ピッピッ (認証NG)
指紋認証失敗。
最悪!
>>監視カメラの映像から
特徴が全警備員に通達されてます。
肩まである茶髪のロン毛で・・・
佐々木はオレがどこに居るか把握できてない。
一方的に情報を送ってるだけであった。
オレは再度指を入れる。
頼む、認証通ってくれ。
♪ピッ (認証OK)
良かった。
急いでボックスから出る。
通路は一本道。
このままだと警備員と鉢合わせになる。
オレはトイレに入り、カツラを取って黒髪になる。
そして、メガネを掛ける。
茶髪のカツラは内ポケットにしまう。
通路に出て、来た道を早歩きで戻る。
警備員2人が正面から向かって来た。
ドキドキだ。
2人ともオレに見向きもせず、
急ぎ足でオレを通り抜けて行く。
ふぅセーフ。
だが、更に遅れてもう3人目の警備員が
やってきて、オレの目の前で立ち止まる。
「ちょっと、あなた!」
声を掛けたられた。
終わったと思った瞬間である。
オレはポケットに手を突っ込み毒薬を握る。
白川さんの悲しむ顔が脳裏を駆け巡る。
「社員証は見えるように!」
首から掛けてる社員証が作業着の中に入ってて
見ないようになっていた。
「すみません」
オレは社員証を表に出すと、
警備員はそれを確認せず去ってしまった。
危なかった。
もし顔写真を確認されてたらアウトであった。
顔が一致しない上、指名手配中の人相なのだから。
しかも、カツラを持っているし。
そして、鉄扉のところまで来るとメガネを外し
茶髪に戻す。
理由は、監視カメラがあるので変装してることが
バレないため。
さて、カード認証が突破できるだろうか。
もし、IDが利用停止、または権限がはく奪
されてたらNGになる。
♪ピッ
認証OK。
カード認証を突破できた。
まだ、IDへの変更はされてなかったようだ。
そして、エレベータ前に立つ。
問題のIDでカード認証してしまった。
管理室でも把握してるはず。
先ほどの警備員が戻って来る可能性は高い。
エレベータがなかなか来ない。
どれだけ長く感じただろうか。
もしかしたらエレベータを停止された可能性がある。
エレベータに警備員が乗ってることもありえる。
捕まるリスクを考慮し、階段で降りることにした。
たかが18階から降りるだけ。
オレは、3個飛ばしで階段を駆け下りる。
その間、茶髪のカツラを取り、メガネに戻す。
既に安心している。
目的は成功できたので。
3階に来たところでフロアに出る。
トイレに入り、茶髪のカツラを
ビニールに入れてゴミ箱に捨てる。
メガネを外し、顎鬚のシールを張る。
念には念を入れ更に変装することに。
そして、エレベータに乗り1階へ。
1階に降りると人気を気にしながら
作業服を裏返す。
実はこの作業服、リバーシブルの特注品。
スーツ的に上下の色が合わないが気にしない。
続けて社員証をポケットにしまい。
受付で受け取ったゲストカードにチェンジ。
ついに最後の入館ゲートのところに到達。
多くの警備員がゲートの前後で待ち構える。
来た時よりも警備員の数が増えてる。
しかも目が怖い。
オレを捕らえようと待ち構えてるのだろう。
落ち着け。オレ!
内心はビビりまくっているが平常心を装い。
♪ピッ (認証OK)
入館ゲートを通り抜けた。
警備員はオレに興味なさそうだ。
受付でゲストカードを返却。
「お疲れ様でした」
受付嬢からの挨拶。
オレは軽く頭を下げる。
本当に疲れたぜ。
ミッション終了。