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(182) ミッション開始

◇◇◇ IEC本社 ◇◇◇

時刻は午前9時50分。


ここは有楽町にある20階建てのIEC本社。

現在オレはスーツ姿でリュックを背負って

1階ロビーへと到着。

これから受付で入館手続きを行うところ。

身体はハルキから30代男性に切り替わっている。


「STLシステムの西田です。

 10時から企画室の佐々木様と

 打合せを予定しているのですが」

「西田様ですね。少々お待ちください」


受付嬢は内線電話にてどこかに連絡してる。

恐らく佐々木だろう。

とりあえず、オレはその場で待機する。


ここに来た目的は、QGP22(量子発生機)の破壊。

ホムンクルスを使うオレやノノン、

白川さんにとって、その機器の存在は脅威だから。

触りどころが悪ければ、

この瞬間にオレ達は倒れることになる。


だが、そのQGP22がこのビルに保管

されてるかは確認が取れてない。

可能性が高いというだけ。


ここは大手電気機器メーカー。

開発室はセキュリティレベルが非常に高い。

社員でもないオレが、存在するかも分からない物を

求めて潜入しようだなんて無謀としか思えない。


正直、成功する自信がない。

なぜか自殺するための薬を持たされている。

捕まったら死ねってか?

冗談じゃない。死んだら研究室に強制送還だろ。

戻って来れなくなるとか、ないよな。

フラグか?


「西田様。お待たせしました」


背後からオレの名を呼ぶ女性の声。

振り向くと20代後半のキャリアウーマンが

そこに居た。

この方が前田が送り込んだスパイか。

カッコいい。

見た目だけで仕事ができそうなのが漂ってる。


「はい、これ。

 ゲスト用の入館証になります。

 お帰りの際は、ここの受付にお返しください」

「分かりました」


首から掛けるタイプの入館証である。

しかし、大きい会社だけあって訪問者が多い。

ロビーにスーツ姿の人達で溢れてる。

オレ1人くらい忍び込んでも問題なさそうだ。


「では参りましょうか」


佐々木さんが先導し入館ゲートを通過する。

ゲートの両サイドには、警備員が立っており

監視の目を光らせていた。

続けてオレもゲストカードを使って入館。

問題なくクリアできた。


ついに入ってしてしまった。

もう、戻れない。


会議室を用意してあるそうで、

佐々木さんの後を付いていき

1階の107号室へと入る。


そこは大きなモニタのある20名入れる会議室。

広い空間に2人だけしか居なく寂しい気分になる。


オレはリュックから作業着を取り出し上着を交換。

これは前田が事前に用意したIECの作業着だ。


「ここから先は、こちらをお使いください」


ストラップ付の社員証が渡された。

氏名は別人だが、顔写真は西田(オレ)である。

受け取った社員証を首から掛けた。

これでオレは、IECの社員って訳だ。


続けて、人差し指の模造品を受け取る。


「こちらは指紋認証で使うものです」


なるほど。

てっきり手品の道具かと思った。


目的地は18階の研究室エリア。

そこは荷物を持っては入れないという。

なのでリュックとスーツの上着は

佐々木さんに手渡す。

携帯も財布も持ってない状態である。

ゲストカードは内ポケットに収めてる。


次に丸型のバンドエイドを1つ受け取る。

こめかみに張り付けるという。

骨伝導を通じて佐々木さんの音声が

聞こえるとのこと。

どうやら小型のトランシーバらしい。


だがオレからは発信はできない。

一方的に佐々木さんからの情報を

聞くだけというもの。


そして最後に研究室までの行き方を記した

メモを受け取って、案内は終了。

ここから先は、単独で行動しなければならない。


どうして破壊工作を引き受けてしまったのだろう。

後悔している。


「では私は自席に戻ります。

 社内の状況は随時お伝え致しますので

 成功をお祈りいたします」

「宜しくお願いします」


ここで佐々木とは別行動。

さぁ、ミッションインポッシブルの開始だ。

本当に映画のようになってきた。

帰りたい。


◇◇◇ 18階 ◇◇◇


♪チン


エレベータが18階に到着。

オレは、開発フロアに立つ。

目的の場所は近くて遠い。

メモによると、この先には2つの認証があると

記されてる。

カード認証と指紋認証だそうだ。

研究室エリアに入るには、2つセキュリティを

突破する必要がある。


通路をまっすぐ進むと鉄扉(てっぴ)に到着。

これが第一関門だ。

扉の横には認証パネルがあるのを確認。


認証OKならいいが、NGだった場合

どうなるのだろう。

ドキドキものだ。

首に掛けてる社員証をかざす。


♪カチッ


ロックが解除されたような音が聞こえた。

認証ランプが赤から青へと変化してる。

どうやら第一関門は突破したようだ。

ドアノブを回して中へと入る。

拍子抜けだ。すんなり入れてしまった。


メモに細かく記載されてあるので

難しいことは1つもはない。

『誰でもできるだろ!』と疑問に思いつつも

奥へと進む。


ここに来るまでの間、何人もの社員さんと

すれ違ってはいるが、怪しまれてる気配はない。

社員数が多いから知り合いに会う方が

レアなのだろう。


ちなみに、使ってる社員証は顔写真は違えど

実在する人物のIDだという。

研究室エリアに入れる権限を持つ社員らしい。

その人の社員証を複製し、顔写真だけ変えてある

というもの。

複製された本人は本日外勤だそうで社内には不在。

なので、このビルに同一人物が2人いる

ことにはなっていない。


>>今のところ問題ありません。


佐々木の音声が入ってきた。

おぉ、声がハッキリと聴き取れる。

耳が塞がってないので周囲の音も聞こえてる。

これは素晴らしい。

PMCで双方向に通話できるタイプを開発しよう。


ついに研究室エリアへ入る扉まで来た。

ここは入室方法が難しい。

2重扉となっていて、研究室エリアとの間に

2m四方のボックスがある。

その中で指紋認証を行い。

認証OKとなれば反対側の扉が開く。

すなわち研究室エリアに出てるということ。


ボックスは1人しか入れないルール。

要するに1人づつしか出入りができない。

ちなみに、ボックスの扉は水族館のような

分厚く透明な素材でできており

誰が認証中か双方のエリアから丸見え。


携帯すら持ち込めない上、監視カメラで

チェックされている。

怪しい行動をとればボックスから出れなくなり

捕まるのは確定。

下手な小細工はできない。

ここは正式な手順で抜けるしか方法はない。


おっと、入るのに悩んでいたら

オレの後ろに2人並んだ。

『お先にどうぞ』と言ったら怪しまれる。


やるしかない。プレッシャーだ。

1人づつしか入れないので早くやらないと。

扉を開けボックへと入る。


中に入るとセンサーと監視カメラによる

持ち物チェックが開始される。

チェックOKにならないと指紋認証は行えない。

携帯やノートPCを持ち込むとNGになる。

帰りもここを通る必要があるため、

研究室内の物を持ち出すのも不可能。

だからQGP22を破壊しに来たのである。


緊張がオレを襲う。

だって手ぶらと言う訳ではない。

ペンとノートは持ち込み可能であるため、

内ポケットにいろいろな文房具を入れてあるのだ。


♪ピッ

突然鳴った音にオレはびくつく。


青色のマーク。チェックOKだそうだ。

どうやら持ち物検査はパスしたらしい。


そして指紋認証。

当然、オレの指では通らないが、

受け取った模造品の人差し指をはめてある。

なので、その指を所定の場所へと突っ込む。


♪ピッピッ


赤色マーク。認証NGになってしまった。

なにぃ!嘘だろう。

ヤバい、並んでる人に見られてる。

もう一度。

そーっと指を入れチェックさせる。


♪ピッピッ


赤色マーク。2度目もNGをくらった。

どうしよう?

一度出て待ってる連中に先を譲るか。


『あいつの人差し指、太くね!』とか

思われてないか頭がパニック状態。


3回認証に失敗したら、使ってるIDが

ロックされるとかあるのだろうか?

並んでる人達の目が気になる。


落ち着け。

もう一度やってみよう。


♪ピッ


青色マーク。認証OK。


♪カチャ (施錠解除)


ヨッシャー。突破したぁ。

握る拳に力が入る。


解除された扉を開け、目的の研究室エリアへ

足を踏み入れる。


感動である。

だが帰りも同じ認証をしなければならない。

1階まで戻れる気がしない。


さっさと終わらせて(うち)に帰りたい。

オレは内ポケットからペンとメモを取り出す。

手にしたペンは、一見普通のボールペンにしか

見えないが、実は放射線測定器なのだ。

シャツに引っ掛ける用フックが

スイッチとなっており、スライドさせると

ペン先で測定できるというもの。

反応は5段階で、ブルブルと振動の大きさで

教えてくれる。


研究室エリアに入ってすくに、

入り口付近を測定してみたが全く反応がない。

もう帰っていい?


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