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(173) 部屋探し①

◇◇◇ 開発部門 ◇◇◇


ここはMAEDAコンサルティングが所有する

研究開発部門。


オフィスは1人1人のデスクがパーティションで

区切られたアメリカンスタイルとなっている。

その一角にて、会話する2人の姿があった。

1人は研究員であり、自席のPCを操作ながら説明し、

もう1人が横に立ってモニタを眺めている。

その立っている人物は前田社長である。


「QGP22(量子発生試作機)が

 盗まれましたというのは本当か?」

「はい。

 第6保管庫にありませんでした。

 念のため放射線測定を隅々までしましたが

 存在が確認できませんでした。

 これは、紛失などではなく

 盗難に遭ったと考えるのが自然でしょう」

「なるほどな」


これは先日の記憶喪失の件に関係している。

次回発生時の検出方法を検討していたところ

この事実が発覚したのである。


座標の特定実験を試みようと、

ニュートリノの発生機器であるQGPを

倉庫に取りに行ったところから始まっている。


第6保管庫は、不用となった試作機を

格納しておく場所。

いわばゴミ捨て場のような用途である。

問題なのは、厳しく管理されてないのが現状。


ゴミ捨て場とは言え、格納してる物は

リストアップしており、全て把握されている。

改めて格納物を1つ1つチェックしたところ

QGP含めて4点ほどの機器が消えている

ことが発覚したのである。


ホムンクルスは、反ニュートリノを用いて

発着室と通信している。

紛失したQGPを使えば、通信を相殺する

ニュートリノを照射させることが可能だ。


現代科学ではニュートリノを手軽に

発生させることなど出来ない。

それを考えると、ここから盗みだされた

QGPが犯行に使われたと考えた方が自然である。


となると犯人の特定は容易だ。

第6保管庫への出入した者を調べればいい。

幸いにも入り口には監視カメラが設置してあり

24時間記録している。


調べたところ1人の人物が浮かび上がった。

5月下旬に、廃棄物を荷台に乗せて

第6保管庫に入り、出て来たときには

荷台は空であったが、入るときにはなかった

バッグを肩に抱えて出て来たのである。

非常に怪しい。


1月から7月までの入出記録を全て確認したが、

怪しいのはそのバッグの人物ただ1人だけ。


開発者が前田に証拠映像を見せながら

報告が終わる。


「IECが怪しいと」

「はい。彼ら以外考えられません」


IECとは伊勢エレクトロニクス株式会社

の略称であり、製造委託会社の1つである。

倉庫への出入りを許可している業者でもあり、

そこの社員を疑っている。


「昨日、本件について

 IECへ問い合わせたのですが」

「そんな物は社内に無いと突っぱね

 られたんだな?」


「その通りです。

 社内にて関係者にヒヤリング調査

 も実施してくれたそうなのですが、

 持ち出した者はいないとの回答でした」

「まぁ、持ち出したとしても

 そう主張するだろうな。

 これ以上手出しは不可能か」


バッグの中身が不明なため、

確実に持ち出したという証拠がない。

あくまでIECの社員が怪しいというところ。


「あの会社にあると思われますが、

 確証がありません」

「分かった。この件は私に任せろ。

 二度とこのような事件が

 起こらないよう対策を取ってくれ。

 設計書は厳重に管理してあるのに

 試作機が盗まれたのでは本末転倒だ」


「それに関しては、既に動いてまして。

 緊急対応と致しましては保管庫への出入りは

 業者にやらせない対策に切り替えました。

 また、恒久対応致しましては、本件を自動検出

 するシステムを構築しております」

「仕事が増えて申し訳ないが頼む。

 我々が試作してる機器は

 現代科学で実現不可能な物も含まれてる。

 今更だが扱いには十分気を付けてくれ」


◇◇◇ 高校付近 ◇◇◇

時刻は午前11時。


「リビングが広い。

 南向きだし、ここもいいね」

「キッチンがオシャレよね。

 全体的に作りがカワイイ」


ノノンと白川さんが、会話するのを

オレは横で聞いている。


引っ越し先のマンションを探すべく

物件を見物しているところだ。

ここは2件目になる。


この場に居るのは3人のみ。

説明員は付けてない。

業者からカギを借り、勝手に見て回っている。


「ここからだと学校は歩いて40分かぁ」


部屋は気に入ったが、学校までの距離が

遠い事にノノンが引っかかっている。


「徒歩なら近い部類だろう?」


車で送迎でも良くない?


「博士はランニングしてるから体力あるんだろうけど、

 ノノンは10分歩いたら疲れるよ」


ノノンも今日からランニング始めろ!


「駅が近いから買い物、楽じゃない?」


白川さんが気に入っるようだ。

なら、決まりだね。


「もしかして食事は自分で作るの?」


ノノンさん、今更?

忠告したでしょ。

だから寮に居た方がいいんだって。


「白川さん、料理上手なんだよ。

 ノノン教われば?」


「料理したことないよ」

「できるよ。サラダ作るとか、

 簡単なのから始めればいいんだから」


なんかいい。楽しいし。

ノノンが来て正解だったかも。

いいんじゃね。ここで!


「ここに決めるか?」


白川さんはOKっぽい。

あとはノノン次第。

まぁ、NGだしても決定だけどね。

世界は白川さんを中心に回ってるのだよ。


「コンビニ1分で行けるからいいか。

 このマンションでいいよ」


そんな理由かよ。

ここのマンションは1階がコンビニ。

ノノンはどこまで怠け者なのだ?


「部屋割はどうするの?」


ノノンが疑問に思うのも当然だ。

この部屋は2LDK。

要するに部屋は2つしかない。


「私はどこもでもいいけど」


白川さんは気を使って、オレと同室で

いいと言っているのか。

オレは敢えて、この間取りを選んだんですけど。


「下の階に1DKの部屋が空いてるから

 オレはそこにするよ。

 2人でここを使えばいい。

 そしたら1部屋づつ自分の部屋が持てるでしょ?」

「ハルもここに住めばいいじゃん」


ノノン、それはNGワードだ!

微妙な空気になるぞ。


「ノノンはユーリちゃんと同室でいいよ。

 部屋広いし」


そういう割り振りかよ。

まったく考えてなかったわ。


「バカ!

 学校にノノンと同じ住所で変更届け出せるか!」

「住所なんて適当でいいじゃん」


おっと、食い下がらないのかよ。


「もし、部活メンバーが遊びに来たら

 どう説明するんだ?」

「来ないでしょ」


「例えばの話しだよ」

「それもそうか」


え!納得したの?


3人で同居したらいろいろと問題が起こる。

ノノンもオレが居ると気を使うだろうし。

女子同士の方が話し易いとかあるだろう。

総合的に考えて、オレが別の部屋に住むという

結論に至った。


「食事とかは3人でここに集まれば

 いいんじゃない?

 寝るときだけハルキが自分の部屋を

 使えば同じでしょ?」

「そうだね」


いいの?

オレの分も(めし)作ってくれるの?

嫁はポジティブで優しい。宇宙一の嫁です。


「決定でいい?

 気に入らなかったら、また引っ越せばいいし」


また引っ越せばいいって、自分で凄い事いってるなぁ。

庶民の感覚にならないと。


「ノノンはあのホテルの最上階のが

 お気に入りなんだけどな」


もっと、やばい奴がここに居た。


「学校、通うの大変だろう?

 目的を失うな」

「そっか」


「じゃあ、決定ってことで!」

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