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(171) 人生プランを考えます

◇◇◇ 白川さん宅 ◇◇◇

時刻は22時。


オレは現在、白川さんのマンションで

まったりと(くつろい)でいるところ。


「どうぞ」


テーブルに水色のマグカップが置かれる。

中身は色と匂いからカフェラテだろう。

オレの大好きな飲み物の1つ。

つい先ほど、レストランから帰って来た

ばかりだというのに。

休憩せずに、キッチンで何をしてたかと思えば、

飲み物を作ってたか。

なんて気の利く嫁なのだろう。

だが、一緒に休んでもらわないとオレが後ろめたい。


「ありがとう。

 ちょうど飲みたいところだった」


その後もお風呂の準備だろうか。

バスタオルを出して風呂場へと行く。


「そういうのは、オレがやるから休みなよ」

「ちょうど終わったところだから」


そう言って、ピンクのマグカップを持って

オレの真横に座り、密着してくる。

猫のようだ。

こういう所がカワイイ。


彼女の胸元で緑に輝く物に、

つい視線がいってしまう。


「ネックレス似合ってる」


オレが先ほどレストランでプレゼントした物。


「凄く気に入ってる」


元々選んだのは白川さん自身なんだけどね。


レストランでは新居について会話が弾んだ。

明日、物件を一緒に見に行こうということとなった。

白川さんは広い部屋じゃないのがいいとのこと。

同じ1LDKが候補になってる。

引っ越す意味があるのだろうか。


白川さんも高校へ通ってくれれば、

一緒に通学できて意味があるのに。

というか一緒に通学したい。

それが何度も頭を過ってる。

男子高校生なら1度は憧れるシチュエーション。

そんな事を思いながら話しは逃亡中の話題に。


「横浜、また行きたいよね?」

「分かる。まだ行ってない所、沢山あるよ。

 もう一度。中華街にも行きたいし。

 他の店も食べてみたくない?」

「ハルキ、中華系が好きだもんね。

 行こう行こう」


やはりオレと白川さんは気が合う。

(よこしま)な考えは出来るだけしたくないが

オレに気を使って合わせているなら止めて欲しい。


「横浜以外でも行きたいところ全部行こう。

 沖縄だってもう1回行きたいし。

 北海道だって行きたい」


自分で言ってて沖縄行きたくなった。

懐かしい思い出だ。


「そうだ!

 ボディガードって、もう不要じゃない?

 スーパー、買いに行くのも

 付いて来られると人目が気になります」


あ!伝えるのを忘れてた。


「その件なんだけど、告別式で

 オレたち記憶を失ったでしょ」

「理由が分かったの?」


「いや、原因はつかめてないけど、

 また再発する可能性があるんだ」

「どうすればいいの?」


「それが防ぎようがなくて。

 今回のように記憶喪失ならいいが、

 心臓が止まるパターンもある。

 普通の人間のように5分、

 脳に酸素が送られなければ

 その身体は使えなくなる」

「でも心は死なないんでしょ?」


「その通り。

 その身体が使えなくなるだけ。

 死ぬわけではない。

 だけど、10代の女体は今のところ

 ニーナしか残ってないんだ」

「あれは乃々(ののか)さんのだもんね」


「そんな事はない。だた、なんか嫌でしょ?

 抵抗ないなら乃々佳の身体で学園

 生活をやり直してもいいくらいだけど」

「それはダメだよ」


ダメか。

まぁ、学校通うなら白川だっていい訳だ。


「出来れば白川の身体を失ってほしくない」

「私だってそうよ。

 もう、この身体に馴染んでるもの」


「なので話を戻すと、直ぐ病院に運べるよう

 ボディガードを付けてるってこと」

「そういうことね」


「この身体、もう作れないの?」


ちょうどいい。

ここであれを伝えておくか。


「何体か作ってる。

 直ぐには使えるのがないだけ。

 その中に岩井さんの細胞から

 培養してるものもある」

「それって私の身体?」


驚いただろう?

オレもそれを聞いた時、驚いた。

前田が気を利かしてくれたのだ。


「そう。

 岩井さんの死亡が確認された時、

 細胞を採取したんだ。

 ハルキの細胞と一緒に培養してる」

「ハルキも?」


「元の身体に戻れるなら戻りたいけど

 私この身体も気に入ってます」


直ぐには変えられないんだ。


「ホムンクルスの成長は

 普通の人間と同じなんだ。

 なので18歳まで成長させるには」

「18年掛かるってことね」

「そういうこと」


「同様に今の身体も年と共に成長していく」

「理解しました」


「ハルキと一緒に成長させているんだ。

 だから18年待って。

 その時、世界は変わってるかもだけど

 元の身体に必ず戻します

 そして、もう一度高校に入学して

 またコスプレイヤーになるんだ。

 そこでハルキと出会う。

 今度は岩井さんが死なない世界線で

 一緒に学園生活を送りたい。

 これがオレの夢」


オレは、隣にいる白川さんの肩に手を回し

強く引き寄せる。

白川さんはオレの肩に頭を乗せる。


「素敵。過去に戻ってやり直せるんだ」

「高校卒業したら結婚を申し込むよ」


「それは楽しみ。

 なら頑張って18年生きないと」

「OKしてくれるよね?」


「さぁ、どうかしら。

 その時の気持ち次第じゃない?

 その前に18年後はハルキと付き合うか

 分からないし」

「確かに。また好かれるよう頑張るよ」


岩井さんのホムンクルスを作ってることを

言うかどうか迷った。

反応が怖かったから。

結果、打ち明けて良かった。

これで白川さんに生きる目標が出来たと思う。


「1つ聞いていい?

 なぜ18年後なの?

 家が隣同士で、幼少から幼馴染

 って設定でもよくない?」


それはオレも考えたさ。


「暇ならそうしたい。

 こう見えても社会人なんでね。

 こちらの世界に連続で来れるのは

 頑張っても3カ月から1年が限界。

 しかも頻繁に来るのも厳しい」

「そうだよね」


「あと、18年後というのは

 オレが続きをやり直したいからなんだ。

 今でも後悔してる」

「ごめんね。変なこと言ってしまって。

 何度も言いますけど、全て私の責任です。

 ハルキに背負ってほしくない」


「それは違うよ・・・」


と言いかけて、白川さんの手の平がオレの口を塞ぐ。


「その話しは止めません?

 今が楽しいなら、それでいいじゃない」

「そうだね。未来を考えよう」


「岩井さんの身体の話しだけど、

 もし早く自分の身体に戻りたいなら

 園児から乗り移ってもいいよ」

「ハルキが居ないならいいです。

 でも高校入学からなら1人でもいいかも」

「その時は言って」


結婚かぁ。

高校生夫婦ってぇのもいいなぁ。夢が広がる。

勢いで言ってしまったがオレも楽しみになった。

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