(169) まったりモードです
◇◇◇ 白川宅 ◇◇◇
オレは白川さんと玄関前でハグしたあと
家の中へと入る。
ここはマンション、住民に見られたら気まずくなる。
彼女も大胆だが、受け入れるオレもオレだ。
人前でイチャイチャするカップルが居ると
白い目で見てたのに、オレが当事者になるとは。
社会の風紀が乱れる、育ちが悪いなどと
感じていたが、単なる嫉妬だったのだな。
リビングに入るとキッチンから食欲をそそる良い香り。
どうやらオレが来る直前まで料理をしてた様子。
「ハンバーグ作ったけど食べる?」
そりゃあ、食べますよ。
むしろ白川さんの手料理は大好きです。
「わざわざ作らなくて良かったのに」
「私もまだ食べてないの。
買い物と片付けに時間掛かっちゃって。
作り始めたのが遅くなっただけ」
嘘つけ。
待ってくれてたんだよな?
オレが食って帰って来るかも知れないのに。
なんて、いい子なんだ。
オレにはもったいない人だ。
「小さいの沢山作ったの。
余ったの冷蔵庫入れるから
無理に食べなくていいから」
出来た嫁だ。
オレが幸せで良いのだろうか。
どうしたら白川さんに喜んでもらえるのだろう。
「食べます。凄くお腹空いてるんだ」
「そっ、なら一緒に食べましょ」
笑顔がまたカワイイ。
料理を運んだりと手伝いながら
横浜での事が頭を過る。
記憶が戻るのが怖かったけど結果良かった。
白川さんとこんな未来が待ってるとは
想像していなかった。
ありがとうノノン。
お前が居なかったら、どうなってたか。
食べる準備が出来た。
テーブルに料理が並べられてる。
ハンバーグにポテトサラダ、そしてスープ。
オレのために一生懸命作ってくれたんだな
その行為だけで満足です。
テーブルをはさんで白川さんと向かい合わせで座る。
「いただきます」
さっそくハンバーグを頬張る。
白川さんはオレのリアクションに注目。
デジャビュか?前もあったよな。
「美味しい。
白川さん、料理上手だよね」
「普通だよ。
今日のは凝ってないから」
いやいや、そんな事ない。
「ポテトサラダって作れるんだね」
「それも以外と簡単なの。
片付けの方が面倒かも」
「それはオレに任せてよ。
洗い物担当だから」
幸せだなぁ。
「コンソメスープも美味しい。
プロの味じゃん」
「ごめん。それはインスタント」
やっちまった。
学習しねぇなぁ、オレは。
「イヤイヤ、騙されない。
愛情の隠し味がする?」
「わかります?」
なんだ、この会話。
ノノン、見てないよな。
オレはリビングを見渡し、安心する。
絶対に聞かれたくない。
最近のオレは変だ。恋愛脳になってる。
仕事の復帰ができるのだろうか。
「今日は遅いから泊まっていくでしょ?」
マジ?
まぁ、横浜でも同じベッドで寝たもんな。
「泊まっていくよ。
明日は寮に一旦戻る。
2週間くらい帰ってないから。
部屋の様子を見たいし
流石に誰かに怒られそうな気がする」
あ!学校の制服。店に捨てたわ。
確か予備はあったはず。
確認しないと。
夏休みも終わりか。
「これからどうする?
芸能活動したいなら手配するけど」
「まだ何も考えてない」
「一緒に学校いかないか?
編入できるよ」
「学校はいいです。楽しい思い出無いから。
しかも3年の2学期から編入する人
なんて怪しくない?
前の学校のこと絶対聞かれるよ」
だよな。一緒に卒業したかったなぁ。
オレを助けるために岩井さんは身体を
張ってくれたんだ。
どうにかしてお返ししたい。
「やりたいこと見つかったら言って。
大抵の事なら叶えられるから」
夏休みが終わればオレは学校生活が始まる。
白川さんが1人になってしまう。
楽しい思い出を作らせたいと願って
無理やり延命させたのに。
何も変わらないじゃないか。
「寮を出て、ここのマンションに引っ越すよ
どこか空いてるでしょう」
「なら、ここに住めばいいじゃん」
同棲ってやつ?
学生で同棲かよ。
本当にドラマのような展開になって来た。
「なら大きな部屋に引っ越そう」
ダブルベッドが置けて、お風呂も2人で
入れるくらい大きなところ。
夢が広がるぅ。
「引っ越すなら学校の近くにしたら?
ここもだけど、通学が大変でしょ?」
学校行く意味ある?
「オレ、退学するよ。
この星の学生を体験したくて
通ってるだけだから」
「いつでも退学できるんでしょ?
ハルキが学校に居ないと乃々佳さんが
困るんじゃないの?
あとお友達も出来たんでしょ?」
確かにな。退学はいつでも出来る。
それよりもノノンを部活メンバーに紹介したいし。
文化祭をやり遂げたい。
「分かった。
学校の近くに引っ越すでいい?」
「私はしたいことが無いからどこもいい。
ハルキに付いて行きます」
あぁ、楽しい。
オレが幸せだ。
未来を考えると白川さんが心配。
どうしたらいい?