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(168) オレが幸せです

◇◇◇ MAEDAコンサルティング ◇◇◇

「どうだ、ガイヤ(地球)は気に入ったか?」

「バカ言うな!

 オレのチームがこの星を発見して

 お前に紹介したんだろうが」


「そういう意味ではない。

 ずーっと住み続けたい星だろ?

 と聞いている」

「気に入ってるに決まってる。

 でなきゃ何度もここに来るか」


つまらん話をしに来たのではない。

記憶を失った原因を聞いたら

急いで白川家に向かいたいのに。


待てよ。


「さては仕事の話しだろ?」

「話が早くていい。

 1兆円規模の国家プロジェクトが」


「あぁ、ストップ!ストップ!

 それ以上は言うな。

 興味がないし、専門外だ」

「いや、適任だと思うぞ。

 プロジェクトリーダーにお前を推薦する。

 自由に動かせる」


どうやら、オレに仕事を任したいらしい。


「ふざけんな!

 またオレに押し付けて逃げる気か?

 もっとタチが悪い。絶対にやらん。

 大体、お前の頼みに良い思い出が1つもない。

 言っておくが、オレの方が借りが

 あるのを忘れるなよ」


あぶねぇ。

電話した時、気軽に『オフィスに来てくれ!』

って言うもんだから嫌な予感はしていた。


「オレは急いでる。

 記憶を失った件で分かってることが

 あるのなら、さっさと教えろ。

 お前も異常が起こったって本当か?」

「あぁ」


「恐らく先月 (7月)も同じ原因だろう。

 前回は、うちのチームはガイヤに居なった

 からダイブ機を疑ったが。

 どうやら違っていたようだ。

 前回対策として、キミ達の実験機に

 詳細な通信記録を残すよう仕込んただろ?」

「ログを確認したら正常だったってことか?

 なのに通信障害が発生した」

「ご名答。正確には通信機器に

 異常がなかった、だがな。」


機器に異常がないだと?

どういうことだ。


「誰かがオレらの通信をじゃましたってことか?」

「そうだ」


バカな。

この身体であるホムンクルスは発着室から

反ニュートリノを使って通信している。

この世界の化学技術で、妨害波を作り出せる

とは思えん。


「そうとしか説明がつかん」

「ちょっと待て!

 通信と相互作用させるニュートリノを

 放つしか遮断する方法ないと思うが」

「その通り」


有り得んだろう。

たとえオレらの知識が盗まれたとしても

作れないはずだ。

それよりも対策を先に考えないと。

いつ同じことが起こってもおかしくない。


「遮断できるとしよう。

 犯人を見つけ出すことは可能か?」


「無理だ。

 地球の裏側からでも攻撃できる。

 犯人も発生場所の特定も厳しい」


だろうな。


「普通に考えてありえない。

 現代科学でニュートリノを手軽に

 発生させられるとは思えん。

 どっかの国の加速器実験で

 反応したんじゃないのか?」

「加速器実験程度では妨害にならんよ。

 調査は進めるが、また起こる可能性は高い」


通信機器の故障ではないことが

判明したのは大きい。

だが対策は不可能。どうすればいい。


「通信異常を検知して自動で

 リセットさせる方法はないのか?」

「仕組み的にできない

 我々のように強制的に研究室に戻された

 のであればリセットは不要だ」


「今回はたまたま運が良かったが、

 次の発生では、この身体が死んじまう

 可能性はある」


夜、白川さんとエッチしてて

遮断されたら大変。


「急いで対策を考えろ!」

「考えるから。

 その間、遠出はするなよ」


◇◇◇ 住宅街 ◇◇◇


オレは現在、白川さん宅に向かって

住宅街を歩いてる。

身体はハルキに乗り移っている。


前田のオフィスを出た後、

発着室に寄ったのである。

白川さんと会う時はハルキの身体でないと

しっくり来ない。

白川さんお同様に思うだろう。


歩きながら先に片付けておかなければ

ならない事がある。

カイからの大量のLineである。

横浜で生活してる合間に送られたものだ。

DMが面倒なので電話することに。


「オイ、ハル!お前、どこいる?

 ノノンちゃんが倒れたんだんぞ」


電話に出たらいきなりそれかよ。

言わんでも、分かっとる。

ウザいDMが大量に送られてるんでね。


「ノノンはもう寮に戻ってる。

 安心して問題ない。

 連絡が取れなかったのは

 お寺で携帯を紛失したからだ。

 さっき見つかって今DM見たところだよ」

「なぜ寺から姿を消した?

 メッチャ探したんだぞ」


そいつは悪いことをしたな。


「しかも、なぜ寮に戻らない?

 何度も部屋に見に行ったぞ」


おっと、説明できなくなって来た。

ノノンと一緒に意識失って病院に

運ばれたって言えばよかった。

ミスった。


「記憶を失ったって言ったら信じる?」

「はぁあ!バカなこと言うな」


「あれか。お寺で声を掛けた

 女性の家に居るのか?」


それいいね。

あながち間違ってはいない。


「バレました!?」

「夏休み中、寮に戻って来ないのも

 あの女の家に入り浸りか?」


「実は同棲してるんだ」

「ふざけんな!

 エミリン(アイドル)とも知り合いで。

 あんな美人の彼女もいるのかよ」


あれ?通話が切れた。

ま、いっか。

これで解決しただろう。

多分。


◇◇◇ 白川宅 ◇◇◇

時刻は20時。


長い1日であった。

白川さんのマンションへようやく到着。

前田のオフィスを出たとき、

到着時刻はLineで伝えてある。


時間通りだ。

白川さんもそろそろ来る頃と思ってだろう。

なんだか新婚夫婦の気分だ。

合鍵作っちゃおうかなぁ。


エントランスで部屋の番号を入力。


♪は~い


カワイイ嫁の声。

居住区内に足を踏み入れエレベータに乗る。


別れ話をした後、抱き締め合ったとはいえ、

会うのはなんとなく気まずい。

早く会いたくて飛んで来たのに。

今更だが、どんな顔して会えばいいのだろう?

他の恋人同士は仲直りの後、どうしてる?

喧嘩が無かったかのように過ごせてるのだろうか。


♪チン


白川さん宅のフロアに到着。

引き返したい気持ちが強くなって来た。

合わす顔がないし、

楽しく会話がでる自信がない。

緊急の用事が出来たとLineで伝えるか。


だがエレベータを降りて一変する。

白川さんが廊下に出て待っていたのだ。

もう、引き返せない。


近づくと、ハグしてと両腕を突き出して

きたではないか。

ニヤケ顔を見られるのが恥ずかしい。


オレ、幸せです。

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