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(167) 幸せにするのって難しい

「オレは化け物だ」

「私も同じでしょ?」


それは違うよ。


「岩井さんは他の身体を借りてるだけ。

 この星で生まれ、この星で育った。

 れっきとした人間だよ。

 それに対して、オレは宇宙の外から来た者だ」

「アメリカだって、

 宇宙の外からだって同じでしょ?」


同じじゃないだろう。


「それにオレの側にいると不幸になる。

 だからもう、キミの前には姿を現さないよ」

「どうして?

 私がいいって言ってるのに?」


どうしてそこまで。

オレの心が揺らぐ。

永久に会わないと決心したのに。


「キミには人間なんだ。

 ちゃんとした人と恋をして

 普通の女の子と同じような人生を進んで欲しい。

 オレの願いはキミに幸せになって欲しい」

「ハルキの側に居ることが私の幸せなの

 勝手に決めつけないで。

 ゾンビのような身体にしておいて、

 用済みになったら捨てるの?」


正論だよ。

オレのエゴで無理やり岩井さんを延命しておいて、

後は1人で生きろと突き放すのは酷い話だ。


岩井(いわい)友璃(ゆうり)は死んだんです。

 家族もない。過去も語れない。

 私はもうこの世界では1人なの。

 普通の男性と結婚とかできると思う?

 バカ言わないで。

 死ぬまでパートナーや子供に嘘を

 つき続けろって言うんですか?

 それが私の幸せなの?」


これはオレに強く突き刺さる。

オレは彼女を死なせてしまった責任を感じてる。

彼女の願いを叶えることが

責任の取り方ではないのか?


「半年後は元の世界に戻らなければならない。

 それでもいいの?」

「もう、戻って来れないの?」


「半年か1年に1日くらいなら来れると思う」

「それでもいいよ。待ってます」


マジか。

オレも白川さんが好きだ。

可能ならば、ずっと一緒に居たい。


「オレでいいのか?」

「ハルキがいい」


「わたし感謝してるの。

 ずっと守ってくれてたんだよね?

 田中さんとして。

 心のケアまでしてくれてた。

 私が死んだのは自分のせい。

 ハルキじゃない。

 父との誤解も解けたのも感謝してるの。

 2度目の人生をくれてありがとう」


感謝を言われると心が痛む。

むしろ礼を言いたいのはオレの方。

彼女になってくれたのも。

オレをかばって犠牲になったのも。


岩井さんの死は防げたんだ。

愛する人を死なせてしまった。

全てオレの責任だ。後悔してる。


「オレといると、また危険な目に遭うよ」

「もう、死なない身体なんでしょ?

 刺激があっていいじゃない」


ポジティブだな。

そいうところが好きだ。

彼女は未来を見てるのに

オレが過去を引きづってる。

オレが幸せになっていいのだろうか。

もう、考えるな。

半年後もだ。その時考えよう。


オレは、脇腹に食い込む岩井さんの

腕をほどき、180度回転して対面にある。


「オレは白川さんが好きだ。

 この前、好きという感情が分からない

 と言ったけど、今なら理解できる。

 大好きだって胸張って言える。

 改めて言わせてください。

 オレと交際してくれませんか?」


白川さんは無言で首を縦にふる。

オレは彼女を正面から強く抱きしめた。


「絶対に幸せにします」


この世に生を受けて、生れて来たことを

後悔させません。

これからは幸せをいっぱい届けたい。


・・・


体感で5分くらいは無言で抱き合って

いただろうか。

冷静に考えると、人通りが少ないとはいえ

大通りで堂々と何やってるんだオレらは。

公衆の前で、いつもいつも。

急に恥ずかしくなってきた。

知り合いに見られてないよな。


その後どうしたかというと。

その場で別れての行動となった。


白川さんは自分のマンションへ戻り

掃除するとのこと。

一週間ぶりの帰宅となるのだから。

食品等の買い出しも必要となるだろう。


オレは用事を済ませたらマンションへ行くと伝えた。

用事というのは、記憶喪失の原因究明のため。

発着室を出る直前に前田へ連絡したのだ。

本日の夕方なら空いてるとのことで、

これから向かうと伝えてしまった。


前田はいつも忙しい。

会えるときに会っておかないと。

次いつ、オレとノノン、そして白川さんが

記憶喪失になるか分からない。

対策は置いといて原因だけでも聞いておきたい。

そんな理由から白川さんと一旦別れたのである。


◇◇◇ MAEDAコンサルティング ◇◇◇

時刻は17時。


♪コンコン


「入るぞ!」


オレは前田のオフィスへ到着し社長室へと入る。


「待ってたぞ」

「研究室に戻されたって本当か?」


発着室を出る直前で電話したときに

同じ時間帯で前田は強制的に研究室に戻されたという。


「気が早い」


前田側チームからは3名がガイヤ(地球)に来ている。

その3名とも研究室に戻された。


こちらも、オレ、ノノン、白川さんの

3名全員が被害にあってる。

症状は違えど、関係はありそうだ。


「汎用ダイブ機の問題ではないのか?」

「だから気が早い。

 久しぶりの再開だろ?

 世間話でもしようぜ!」


今回の件、オレなりに考えたが

白川さんも被害者ということは

発着室と研究室間の通信が

問題であったことは間違いない。


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