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(162) 逃亡生活はじめます④

◇◇◇ 研究室 ◇◇◇

♪ピッピッ、ピッピッ、・・・


音がする。

ノノンは重いまぶたをこじ開け、

音の方へと視線を移とアラームが

鳴ってることに気付く。

もう時間が来たらしい。


セットしたアラームが鳴ってる。

10分はあっというま。

本当に10分経ったのかと疑いたくなる。


アラームを止め、立ち上がろうとするも

そんな気分にはなれない。

前回は2時間ほど休息したのだから

10分で良くなるとは考えてない。


ダイブさえしてしまえば具合など関係ない。

ノノンはダイブ室に目を向け、移動距離を確認する。

たかが10歩ほどしかないのに

果てしなく遠く感じるのであった。


アラーム設定を10分延長させ、

再度ソファで眠りにつくことに。


◇◇◇ 横浜駅周辺 ◇◇◇

ここはJR横浜駅を出たところ。

オレと白川さんはショッピングも兼ねて

ここまで来たのである。


白川さんが携帯を持っているので、

お店の検索に使える。

だが横浜は店が多すぎる。

逆に行きたいところが沢山あり過ぎて

どこから攻めていいのやら。

まぁ、オレ達には時間がある。

ゆっくりと観光するとしよう。


ここで白川さんの携帯を見て

疑問が生まれた。

「どうして連絡先が1件も

 登録されてないんだ?」

「さぁ、どうしてかしら」


てっきり連絡先にオレの情報が登録されてる

のかと思いきや、まさかの1件も登録がないなんて。

そんなことってある?


「通話履歴もないって変じゃない?

 SNSも使ってないみたいだし。

 何のために持ってるの?」

「さぁ、私も知りたいわよ」


お互い記憶がないのだから仕方ないが、

これは普通に考えて異常だろう。

携帯持ってて、連絡先がない、通話履歴もない

SNSアプリが未登録。

何のためにスマホ持ってるの?


「ハルキだって、スマホ持ってないって変じゃない。

 学生でしょ?

 今時の若者が持ってないなんてある?」


確かに。

これは全てが黒服の仕業で、

白川さんのスマホは初期化され

オレのスマホは取り上げられた。

そう考えれば説明がつく。


ご都合過ぎじゃないか?

今の所、黒服連中を見かけてない。

本当に彼女を信じていいのだろうか?

白川さんはスパイで、オレの記憶が戻った

ところで捕まえる気じゃ。


そんな会話をしつつも、和気あいあいと

平然を装って店を見て回る。


「これも可愛いくない?」

「いいじゃん。買おうか?」


ワンピースの服をオレに見せて来た。

気を使ってるのだろう。

安いものばかりを選んでいる。


「もうちょっと見てから決める。

 他のお店にもっとカワイイのが

 あるかも知れないし」


何てしっかりした子なんだろうか。

オレは彼女に魅かれ始めてる。


◇◇◇ デパート ◇◇◇

オレ達は、とあるデパートのレディース

フロアへと来た。


「入口で待ってる。

 ゆっくり見て来なよ」


レディースの下着専門店へ彼女は入っていく。

流石に男性が入店するには抵抗がある。


「これで買って来なよ。足りる?」


オレは2万円を差し出す。


「下着くらい自分で買います」

「足りなかったら言って」


そう言って、オレは金をひっこめた。

待つこと10分。

彼女はなかなか出て来ない。

店内の様子を覗くとまだ時間が掛かりそうな雰囲気。

オレはトイレに行くことに。


そして戻って来たときのことである。

店内を覗くと彼女の姿が見えない。

勇気をもって店内に入り、

隅々まで探したが彼女の姿はない。


通路に出てフロアを見渡すも同じ。

隣の店も覗いてみたがいなかった。


再度、通路に出ても彼女の姿はない。

彼女はオレの前から消してしまった。


オレは(あせ)る。

考えられる理由は2つ。

黒服に捕まったか、オレから逃げたかだ。

まさか、彼女が消えるなんて想像も

してなかったことだ。


「ハルキ!」


すると背後から彼女の声が聞こえる。

振り向くと、急ぎ足で向かって来た

かと思えば、オレの胸に飛び込み、

強く抱き付いた。


彼女は肩で息をしている。

相当走り回ったようだ。


「どこ行ってたのよ。

 ずっごく探したんだから」


「ごめん。トイレに行ってた」

「なら一言いってよ。

 連れていかれたのかと心配したじゃない」


悲痛な叫びがオレに響く。

彼女もまた同じ思いだったのだ。

どこか気が抜けていた。

よくよく考えたらオレ達は逃亡者なのだ。

いつ黒服に拉致されてもおかしくない。


「オレもトイレから戻って来て、

 白川さんが居なくて探してたよ。

 ほんとごめん」


オレも彼女を抱きしめる。

フロアのド真ん中でオレ達は何してるんだ?


「オレも携帯買うよ。

 離れ離れになったら連絡が取れるし」


スマホを持っていれば、こんなことにならない。

ならばと、家電量販店へ行きプリペイドのSIMを購入。

続けて中古ショップへ行き、そのSIMが

使える激安スマホを購入したのであった。


その間の移動は、白川さんと恋人繋ぎ。

お互いが離れないぞという意思表示。


ちなみに、プリペイド式のSIMにした理由は、

身分証明書の提示に学生証しかなかったから。

契約できるかどうか不安だったので

プリペイドにしたのである。

携帯が使えるのを確認しアドレス帳を開く。


「最初の連絡先は白川さんだね」


そんな嬉しそうな顔すんな。

オレまでニヤケてしまう。


「私もだよ。永久にハルキだけかも」


なんだか恋人同士のようだ。

こうなったら2人の関係をはっきりさせよう。


「白井さんのことが好きだ。

 オレの彼女になって欲しい」


もう彼女がスパイだったとしてもいいよ。

勇気を振り絞って告白した。

既に肉体関係があるというのに、

今更告白なんて順番が逆だろう。

でも、はっきりさせておきたい。


「私もハルキが好き。離れたくない」


なんて嬉しい回答だろうか。

分かっていても、口に出して言ってくれると

嬉しいものだ。

思わず抱きしめてしまった。


ふと周囲を見ると、周りの視線が痛い。

人通りの多い所でやることではなかった。

そりゃ見るわな。

急に我に返って恥ずかしくなる。

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