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(161) 逃亡生活はじめます③

◇◇◇ シェアハウス ◇◇◇

ここはベッドしかない小さな部屋。

窓からの日差しでオレは目を覚ます。

今日も天気がいい。

デジャビュだろうか?

以前にも同じ体験をしたような。


上半身を起こし、ふと隣を見る。

白川さんが居るのを確認。

昨日の逃亡劇が現実であったことを再認識する。


彼女はタオルケットにくるまれ熟睡中。


「ん~ん」


背を向けてた彼女が、寝返りしてオレの方へ向く。

かわいい寝顔だ。

記憶を失い。2人で逃亡し、一夜を共にする。

まるで映画のよう。


いくらなんでも有り得なくないか?

もしかして彼女はスパイなのか?

同じ境遇のふりしてオレから

情報を盗もうとしているとか。

悪いことが頭を過る。


まさかな。

でも、騙されていいよ、という気になる。

こんなカワイイ子が一緒に生活してくれてる。

しかも、昨夜は理性に負けてしまった。

意気投合した若い男女が1つ屋根の下で

一夜を共にしたんだ。

なにも無い方が不自然だろう。

今更だが兄と妹だけは避けたい。シャレにならん。


ふと時間が気になる。

現在時刻を確認したいが、部屋に時計がない。


彼女は、しばらく起きないだろう。

明け方に寝たのだから。

まだ、2・3時間か経ってないはず。


オレの身体はベトベトで気持ち悪い。

シャワーを浴びて、ついでにコンビニで

朝ご飯でも買って来るか、と思い立つ。


自分のパンツを探と、

足元に白川さんの下着を発見。

思わず見入ってしまった。


そんなことをしてる場合ではない。

オレは早々と着替えて部屋を出る。


共用部のキッチンに時計があり

朝7時であることを知る。

ボーッとする頭で、シャワー室へ入り

彼女が何者か考える。


いくら考えも答えが出ない。

そりゃそうだ。情報が無さすぎる。

そもそも自分が何者かも分からない。


学生証を持っていたが怪しい。

どうも自分が学生であるのがしっくりこない。


結果、考えても意味がないという結論に達した。

それまでは、白川さんを信じることにした。


シャワーの後、コンビニへ行ったが

帰りはダッシュで部屋へと戻って来た。


「はぁ、はぁ、はぁ」


オレが居ない間に、白川さんがどこかに

行ってしまったらと、思い立った瞬間

足が勝手に走っていた。


オレはドアに立ち、ベッドに横たわる

彼女を見てホットする。


この感情は、恐らく恋愛感情からではない、

彼女が居なくなったら一人ぼっちになる。

そんな恐れからだろう。


「はぁ、はぁ、はぁ~~」


せっかくシャワーを浴びたのに全力で

走ったから全身がびっしょりだ。

なのでUターンして再度シャワー室へ。

こんなんだったら戻ってから入るべきだった。


・・・


部屋に戻ると、オレは壁に寄っかかり

ベッドをソファ代わりにする。

さて、することがない。

携帯もなければ本もない。

白川さんは寝たまま。

寝顔がカワイイ。


彼女を無理に起こす必要はない。

今日も逃げ回る可能性があるから

十分休息は必要だ。


1階にあった周辺マップを持って来たので

それを眺めることに。


「おはよう」


彼女と目が合う。

やはり上目遣いは破壊力がある。

かわいい。


「まだ寝てなよ」


彼女はタオルケットを巻いたまま起き上る。

胸の谷間が見えそうだ。

オイオイ、朝からムラムラするだろう。


オレは、彼女の胸元にあるタオルケットに

指を引っ掛け、下に降ろそうとするも。


「エッチ!」


オレの指を握り動きを封じた。

白川さんは隣に密着してきて、

手元のマップを覗き込む。


「何見てるの?」

「暇だから周辺マップを見てた。

 買い物に出かけよう。

 服が1着しかないだろう?

 化粧品も買おう」

「いいの?」


オレ達は逃亡中だ。節約は必要だろう。

だが、逃亡生活をいつまで続くかわからない。

1週か、1年か、一生なのか。

黒服が諦めない限り、いつかは捕まる。

どう考えても逃げ切れる自信がない。


こんなことを口にしたら白川さんに怒られる

だろうけど、いつ離れ離れになってもいいように、

この生活を楽しみたいと考えてる。


「もちろんだよ。

 スッピンで外出するのに抵抗ある

 なら化粧をして欲しい。洋服もそうだ。

 ストレスを抱えるのは避けよう」

「ハルキは優しいね」


「逃亡生活をつつけたら日々のストレスは蓄積する。

 捕まる前に自滅するよ。

 だから、この生活を楽しもう」


オレは彼女の腰に手を回し、強く引き寄せる。

そして、彼女はオレの肩に頭を乗せる。


これは決して恋愛感情ではない。

お互いが不安で助け合おうと再確認したのだ。


「いつまでこの生活が続くんだろうね?」

「遠くに逃げれば終わるよ。

 可能なら海外に行きたいけど、

 パスポートは作れないだろうな。

 九州まで行ってみようか?

 流石に追ってこないでしょ」


「そうね。

 2人でひっそり暮らすのもいいかも」

「オレもだ。

 せっかく宿をキープできたんだ。

 2日後に、九州に行こう」


その後は、部屋で朝食を済ませ。

横浜の観光も兼ねて2人でショッピングに

出かけたのであった。


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