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(152) 久しぶりのジム②

挿絵(By みてみん)


◇◇◇ ジムの外 ◇◇◇

PMCからのメールによって拉致事件の

全容が明らかとなった。

これを岩井さんに伝えるべきか、否か。


答えは分かり切ってる。

伝えるべきでない。

だって岩井さんは早く忘れ去りたいはずだから。

聞いたところでもう何も変わらない。

あの時の恐怖を(よみがえ)るだけだ。


迷ってるのは、むしろオレの方。

岩井さんに会う口実を作ろうとしてる。

(あきら)めが悪いな、オレは。

大体、オレの姿を見たら事件を

思い出せてしまうではないか。

しかも化け物だと感じてる。


彼女の幸せを願うなら、岩井さんとの事は

良い思い出でとして胸にしまい込むことだ。

ただし、別件で岩井さんに隠してることがある。

もう、どうでもいいか。


携帯をケツにしまう。

さぁ、気を取り直さなければ。

応援団長として、堀北さんに負のオーラを

見せる訳にはいかない。


シャァー!


気合を入れて、オレはジムの中へと入る。


◇◇◇ ジム店内 ◇◇◇


「ハル!何してたの?」

「電話してた」


ジムの後輩は3名来てて、

既にボルダリングをしている。

ノノンは、オレと会話しつつ。

後輩の動作を目で追っていた。


「見てるだけじゃなくて、やってみれば?」

「えぇ、いいよ。見てる方が楽しい」

「そうですか」


堀北さんが、トレーニングウェアに着替えて

オレらの前に姿を現す。


「手首の調子はどう?」


恐る恐る手術その後の経過を聞いてみる。


「凄くいいよ。痛みもないし。

 怪我してたのが嘘のよう。

 病院の先生方には凄く感謝してる。

 だから試合で恩返ししないと」

「毎日頑張ってるもんね」


へぇ、毎日か。

ノノンは堀北さんと頻繁に連絡取ってるんだな。


「もう全力出せるんだ?」

「8月いっぱいまでは無理するなって

 お医者さんに言われてるの。

 全力はちょっとづつ出してる感じ」

「そうか」


良い知らせを聞けて安心した。

悪い事ばかりでテンション下がってたけど

堀北さんの笑顔を見てたら元気になれた。


ただ堀北さんの場合、手術に失敗して

選手生命が途絶えたとしても

前向きに生きていくだろう。

オレとは正反対な人だからね。

オレも前向きにならないと。


堀北さんは早速ボルダリングの

トレーニングを開始する。


壁のホールドを掴み、上へと登って行く。

見ただけでも難しそうな場所を

いとも簡単にやってのける。

しかも楽しいが伝わってくる。


不思議とオレまで楽しくなれる。

そして、見てる間は何もかも忘れられる。

スポーツ観戦って良いものだな。


選手がファンに元気を与えるという

意味を今なら理解できる。

堀北さん、あなたから元気もらってます。

あなたはオレの女神だ。


オーナー兼コーチも退院したことだし、

全てがうまく行き始めてる。

堀北さんについては問題ない。

あとは、試合で全力を出すだけ。

12月のライバルとの試合が楽しみすぎる。

応援団長として全力でサポートするよ。


金沢部長についても大丈夫そうだ。

BBQでも元気だったし。

人目が怖く無くなってたように伺える。

もっと外の活動を増やさないと。


岩井さんだけが心残りだ。

生きてるって言えるのだろうか。

芸能生活でやっと自分の居場所を

見つけられたというのに。

全てはオレの責任。最悪過ぎる。

写真集はどうなるのだろうか。

きっと発売するよな。

見たら泣いちゃいそう。


あの笑顔を取り戻すまでは

陰ながら応援するしかない。


◇◇◇ マック ◇◇◇

時刻は13時。


オレとノノン、堀北さんの3人でマックに来てる。

珍しいメンバーと言いたいところだが、

隣のテーブルに後輩ちゃんの4人も付いて来た。


お昼休憩という訳だ。

食べ終わったら午後も再開する。

夏休みだというのに、みんな青春してるなぁ。


堀北さんとノノンがレジからトレイを

持ってオレのテーブルへ。


「博士!メッチャ並んでる」


博士、言うな!


「ご馳走様です」


いつもの500円券を全員に配ったのだ。

後輩が付いて来たのもこれが理由。

オレが声を掛けたのではない。

堀北さんとの会話の流れからこうなってしまった。


「いやいや、大スターに買いに

 行かせて申し訳ない」

「おごってもらったんだもん。

 これくらいしますよ。」


オレの役目は席の場所取り。

堀北さんにオレの分まで買いに行かせたのだ。


・・・


3人で仲良くお食事。

楽しい。学校を思い出す。

早く2学期が始まらないかなぁ。


♪ピコ


アイミーからのLine。

篠崎(しのざき)さんとのグループへの書込み。

明日13~15時、スケジュールが空いたそうだ。

バンド練習しませんか?だって。

せっかくのオフで休まないの?

こちらも頑張ってる。


♪ピコ


篠崎さんからOKのスタンプで返答。

オレもOKを送り、場所を抑えますと追記する。

また、渋谷にしよう。

あぁ、楽しい。なのに笑えない。

原因は岩井さんだ。早く忘れなきゃ。


「ハルは、さっきから何してるの?」

「篠崎さんとLineしてる。

 明日、練習が決まった」


「例の学際のバンド?」

「そうそう。その練習」


「ノノンも行っていい?」

「私も見たい」


堀北さん!

オレとデートしたいってこと?

んな訳ないな。


「じゃあ、明日は部活だし。

 バンド練習の見学にする?

 メンバー紹介をするよ」


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