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(146) ■■ 5th・インパクト ■■ ■■■■■■■■■■■■■■■

◇◇◇ ??? ◇◇◇

どこだ!ここは?

どうやら拉致集団は車を捨てた模様。

オレは2人に担ぎ上げられて運ばれてる。

おそらく岩井さんも一緒だろう。


「ハルキ!」


岩井さんの声だ!

近い。

良かった。声のトーンからして

まだ酷いことをされてなさそうだ。


「ん、ん、ん~ん」


返答したいが口を覆うガムテープがじゃま。


「ハルキに何しようとしてるの?」

「兄貴!こいつ連れて来て正解っすよ」

「ああ」


くっそ、音でしか状況がつかめない。

黒い布を被せられたままだから。

状況からして野郎2人が側にいるのは把握できてる。


すると突然、頭の布が剝がされる。

視界が鮮明となり、やっと周囲を確認できる。

と言いたいところだが、どこ?


回りは鉄くずの山。

フォークリフトなどの重機が置いてある。

どうやらスクラップ工場のようだ。

20mくらい先に岩井さんが居る。

腕を縛られてて2人の男に拘束されてる。

岩井さんの足は縛られてない。


「ん~ん、ん、ん」


岩井さんに呼び掛けたいが声が出せない。

逃げ出したくも手と足を縛られてて動けん。

しかも腕は腰の後ろで手首を縛ってやがる。


この場にもう1人野郎が現れる。

どこかに行って戻って来たようだ。

逃げ道のルートを探しに行ってたのか?


そいつが息を切らして報告する。


「はぁ、はぁ、はぁ。兄貴!

 2枚合わせて180しか入ってない」


どういう意味?暗号?

キャッシュカード2枚をケツのポケット

から出した。

なるほど、キャッシュカードの残金が

合算させても180万しかなかったことだ。


オイオイ、180万あれば十分だろう。


もしかして、あれ、岩井さんのカードか。

近くのコンビニで残高を確認して

戻って来たということか。

暗証番号は岩井さんから聞きだしたのだろ。


「もういいでしょ。全部あげるから。

 私たちを解放してください。

 お願いします」


岩井さんの悲痛な声が響きわたる。

絶対に許せねぇ。

お前らの顔を覚えたからな。


2つグループとも岩井さんの所持金が

目当てだったのか。

180万で満足できないということは、

やはり岩井さんは石油王の娘ってことか?


「30億をどこに隠した?

 知らないとは言わせない」


30億円?

岩井さん!

そんに持ってるの?

やはり石油王確定か。


「そんな大金持ってないです。

 カードに入ってるのか全部です」

「大仁田組から(かね)奪っただろう?

 あと宝石もだ」


大仁田組?ヤクザ?

岩井さん関係ないだろう。

お前ら人を違えてるぞ?


「盗んでません」

「なら思い出させてやる」


「こいつを車に乗せろ」


リーダーがオレの横にいる奴に命令する。

大型のプレス機の中にスクラップの車が見える。


♪ドン


痛ってぇ。何しやがる。

その車はフロントガラスがなく、

オレは放り込まれ、フロントからその車の

助手席へと横たわった。


まさかだけど、

車ごとオレを潰す気じゃないよな?


「そんな恐ろしい事やめて。

 お願いします」

「だから30臆はどこに隠した?」


「そんな大金知りません」

「これを見れば思い出すんじゃないか」


リーダーが何かを指示する。


「いいんすか、死んじゃうよ」


ペシャンコにする気?

うそだろう。

くっそ、手足の結束バンドが外せない。


♪グーン、グーン


プレス機の動く音が聞こえ、ゆっくりと動き出す。

オイオイオイ、本気で殺す気だよ。


「いやぁ~」


♪ガシャ、ガシャガシャ


車が潰れてる。

脱出方法はないのか?


「ハルキ!愛してる」


あぁ、知ってる。

始めて岩井さんの口からその言葉を聞けた。

こんなんで死ねるか。


「ん~ん」


せめて足だけでも自由になれば。

くっそ、バンドが切れない。


♪グーン、グーン

♪ガシャガシャ


岩井さんが好きな、ハルキを死なせてたまるか。

絶対に生きてここから脱出する。


♪・・・


あれ?プレスが止まった。


「どうだ。何か思い出したか?」

「止めてください。お願いしますぅ」


岩井さんは泣き崩れる。

お前ら覚えておけ!

生まれて来た事を後悔させてやる。


「きゃあ~」


岩井さんの悲鳴?彼女に何した!

お前らいい加減にしろ!

オレの位置からだと状況がつかめん。


「貴様ら何者だ!」


見えない。

別グループが登場した雰囲気。

次から次へと何が起きている。


オレはシートに横たわったまま

手首を足元に移動させ足をくぐらせる。

腕を正面へもって来ることに成功。

自由度は上がったが、手足をほどくすべが見つからない。


♪グーン、グーン


やばい!またプレス機が動き出した。

ペチャンコになる。


「誰か止めて!お願い!」


岩井さんの悲痛な叫びが聞こえる。

車がギシギシ音を立てて変形する。


手足が結ばれてる状態で、

フロントガラス枠の上部を強く握り、

逆上がりの要領で腹筋を使って

車の天井に乗ることに成功。


だが危険な状況に変わりはない。

車の天井に乗ってはいるが、プレス機の中だ。

車が1mくらいにスリムになっていた。

それを見て身震いする。

そして、思いっきりジャンプしてプレス機の外へ。

転がるようにして着地する。


()てて。


膝を思いっきり打った。

痛みをこらえ立ち上がる。


「ハルキ!」


岩井さんがオレの元に来て抱き着く。

あれ、逃げ出せたの?

彼女の手が震えてる。怖かったよね。


『もう大丈夫だから』とはまだ言えない。


周囲を見渡すと、オレらを拉致したグループB

とPMCの黒服が警棒を持って戦ってる。

ありがとう。助けに来てくれたのか。


プレス機の音がいつのまにか

消えてることに気付く。

見ると車は小さな鉄のかたまりとなっていた。


それを見て背筋に悪寒が走る。

一歩間違えてたらハンバーグの包み焼きであった。

ハハハ。笑い事ではない。


♪うぅー、うぅー。


パトカーも数台到着した模様。


「あぁあ」


岩井さん!泣いる場合じゃない。

安全なところへ逃げよう。

この場を離れないと。


「ん、ん、ん」


必死に話し掛けるオレを見て、

岩井さんは口を塞いでるガムテープを()がす。


痛てて、痛い痛い。

やっと口が解放された。


「どこかに隠れよう」


カンガルーのように両足でピョンピョン

跳ねながらオレは前へと前進。


「早く!」

「ハルキ危ない!」


気付くとフォークリフトがオレに向かって来てる。

運転手はリーダーだ。


どうする?目と鼻の先まで迫る。

フォークリフトがオレに接触する寸前で

岩井さんはオレを押し、2人して地面へ横たわる。


フォークリフトはオレ達を横切り、

5mある瓦礫(がれき)の山へと突撃。

すると瓦礫が崩れ、フォークリフトを破壊していく。


(あぶ)ねぇ。ありがとう、岩井さん。

オレは直ぐに起き上がってる。


「ユイリー!逃げよう」


彼女の返答がない。

オレは足元を見て驚愕する。

岩井さんが瓦礫の下敷きとなっていたのだ。

目をそむけたくなる姿で、周囲は血だまりが広がる。


うそだろう?


オレはパニックとなり、その場に立ちすくむ。

ピクリともしない岩井さんの悲惨な姿を

ただただ眺め続けているしかなかった。


♪ニュース速報です。

 タレントでコスプレイヤーのユーリこと

 岩井(いわい)友璃(ゆうり)さんが先ほど死亡しました。


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