(145) 再びヤバいことが
◇◇◇ とある一軒家 ◇◇◇
時刻は15時半。
撮影は終了した。
予定よりも30分押している。
現在、カメラマンによる最終チェックを
行っているところ。
岩井さんは私服にお着替え中だ。
オレも着替えを手伝った方がいいのか。
なんて。
「全てOKで~す。今日はお疲れ様でした」
カメラマンの助手が大声で周知させる。
♪パチパチパチ (手を叩く)
スタッフ一同が拍手する。
オレもそれに合わせた。
「はーい、注目!
全ての作業が完了しました。
急いで撤収作業お願いします。
怪我のないように」
全てのスタッフが一斉に動き出し、
機材や小道具の片付けとセットの解体が始まる。
そして、衣裳部屋から私服の岩井さんが現れる。
いつものナチュラルメイクで見慣れた
岩井さんがそこにいる。
「お待たせ」
「見学に来てよかったよ」
「でしょ。ハルキさぁ。
私のマネージャーになれば?
そしたらズーっと一緒だよ」
「クソガキが務まるわけないよ」
「そうかなぁ。向いてると思うけど。
高校卒業したらどう?」
そう言えば、高校卒業してからのことを
考えてなかった。
オレは、廉価版ダイブ機の運用試験で
一年間滞在してるだけ。
卒業と同時に研究室に戻る必要がある。
研究室に戻ったら、こちらに来るのが難しくなる。
岩井さんとの関係はどうする?
考えないようにしてたが、
離れたくない。
「大学に行くつもり。
まだまだ遊びたいので」
「大学行けるなら行った方がいいよ」
岩井さんは高校中退するんだったか。
一緒に卒業まで学園生活を満喫したい。
夏休み明けに退学申請するだったか。
撤回してくれませんか?
「帰ろうか」
「バッグ取って来る」
岩井さんが荷物部屋に入ると。
♪ガシャーン
その部屋の内部から大きな物音が鳴る。
何事?
もしかして岩井さんが貧血で倒れたとか。
オレは急いでその部屋に入ると。
衝撃の光景が。
岩井さんしかいない部屋だと思ってたら
正面に1人の若い男性が立ってる。
そいつの足元に岩井さんが倒れてた。
「お前、岩井さんに何した?」
♪バリバリバリ
あれ?立ってられない。
オレの腰にスタンガンが押し付けられてる。
背後にも誰か居たのか?
自分の意志とは関係なく、足元からくずれ、
うつ伏せで倒れてしまった。
そして、オレは口にガムテープを張られ、
頭に黒い布をからかぶせられた。
視界が遮られ周囲が全く見えない。
続けて、手足を結ばれる。
岩井さんが心配だ。
物音からして相手は4名。
2人つづでオレと岩井さんを運んでるようだ。
そして、車に乗せられた。
「いいぞ、出せ!」
車が走り出す。
状況がつかめない。
岩井さんも同じ車に乗ってるよな?
ここで暴れたらオレも岩井さんも
なにされるか分からない。
助けが来るまで待つとしよう。
「兄貴!また黒い車だ。
追って来てる」
追跡してる車はPMCだな。
オレの部下は優秀だ。
こいつら代々木公園の連中か。
くっそ!
両グループを一掃するはずだったのに。
平和ボケしてた。
岩井さん!痛い思いしてないよね?
2度目だ。絶対にトラウマになる。
お前ら、ただじゃおかねぇ。
♪ピ、ピ、ピ、ビーーーー。(機械音)
「足首にありました」
「嘘だろう?
そのバンソーコ、発信機なのか?」
「間違いありません」
「この女、一体何者だ?」
岩井さに付けた発信機が見つけられた。
準備いいな、そんな物を用意してたのかよ。
「外に捨てろ!」
窓から発信機が捨てられる。
まぁいい。
発信機を捨てられたところで問題はない。
PMCは東京都内の至る所に監視カメラを
設置してある。
尾行された時点でお前らの隠れる場所などない。
♪ドン
車がぐらつく。
車同士が接触したようだ。
オイオイ、PMC!手荒な事すんなぁ。
岩井さんが乗ってるんだぞ。
「どうした?」
「左隣の白いベンツがぶつかって来た」
白いベンツ?PMCではない。
別の連中か?
どう考えもオレは巻き沿いにあっただけで
目的は岩井さんのようだ。
どうしてそんなに人気なの?
次から次へといろいろなグループが
岩井さんを狙って来てる。
もしかして、岩井さんは石油王の隠し子か?
「ここでUターンだ!」
オイオイオイ。
わぁ、乱暴な運転だなぁ。
♪プップー、ブー (クラクション)
大丈夫かぁ!事故るなよぉ。
くっそ、外はどうなってるんだ。
頭の布を取ってオレにも見せてくれ。
「いいところ見つけた。
あそこに入れ」
車が止まって。扉が開く。
どうやらここで車を捨てるらしい。
警告する。無駄だと思うよ。