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(144) 写真撮影

◇◇◇ マンション ◇◇◇

時刻は18時。


部活の親睦会は無事終了。

BBQは元々、金沢さんを外へ連れ出すのを

目的で開催した訳で、その本人が参加した

時点で目的は達成された。

終始笑顔だったのが印象的であった。

おそらくトラウマは消えないかもだけど、

あの事件が笑っては語れる日が来ることを願う。


後片づけの後は『用事がある』と説明して、

オレは急いで会場を飛び出してしまった。

女子3人はどこかでお茶するそうだ。

カイは知らん。


そして今、オレは岩井さんが住むマンションへと

到着し、エントランスを通って玄関前まで来ている。


♪ピンポン


玄関のチャイムを鳴らすとドアが開き

岩井さんが出迎える。


「お帰り」

「ただいま」


なんだこの会話。もはや新婚夫婦じゃん。

オレは中へと入り、靴を脱ぎ廊下に上がると、

正面に立つ岩井さんが。


「ん」


両手を広げ、ハグしてとポーズ。


「ん!」


早くと催促。

オレの嫁、超~カワイイんですけど。

オレはそれに応える。

岩井さんを強く抱きしめたのだ。

手に持つケーキがぐちゃぐちゃになりそう。


「寂しかったね」


彼女と出会った頃、付き合うなんて

あり得ないと思ってた。

しかも、こんな状況にまでなるとは

想像できたたろうか。

人生って分からならいものだ。


10秒くらいの沈黙だっただろうか。


「元気もらった」


反応もカワイイ。くぅ~。

そして、2人してリビングへ。


急いで帰って来たはいいが、することがない。

昨日と同じ2人寄り添い、岩井さんの好きな

マンガを読むことに。

そんなオレを見て岩井さんは幸せそうだ。


これは彼女を喜ばすためにパフォーマンスではない。

本当に面白いのだ。

ハマり過ぎて、一緒に居るのに会話がない。


分からないが、無言の時間が続いても

居心地がいい。

不思議な感覚である。

会話がなくても隣に岩井さんが居るって

だけで楽しいのだ。


ノノンのときは違う。

何かしてないと逆に落ち着かない。

無言にならないよう会話しながら

次の話題を探していた。

この差はなんなのだ?


「今日は早く寝よう。

 明日から仕事でしょ」


ついに岩井さんの仕事が復帰する。

心配だ。

それは、また事件に巻き込まれる心配ではなく、

笑顔で仕事ができるかの方。


「何時起き?」

「6時かな」


「早くない?

 なら朝ごはんは作らなくていいよ。

 車で食べな。

 オレがコンビニで適当に買っておくから」

「大丈夫よ」


「大丈夫じゃない。1日仕事でしょ?

 ギリギリまで寝てなって」


「心配しすぎ。

 ハルキは明日、何してるの?」

「寮に戻るよ。

 あとは適当にブラブラするさ」

「暇なら撮影現場に来たら?」


岩井さんの衣装姿は、そりゃあ見たい。

明日の仕事は写真撮影だ。

コスプレの写真集用だという。


「一般人が現場に入ったらまずいって」

「カメラマンとスタッフしかいないから平気」


呑気だな。

スタッフにオレのこと聞かれたら何と答える気?


「事務所の後輩が見学に来たと

 言えば誰も疑わないかもね。

 後輩だと休憩中も会話できるだろうし」

「天才、その理由ステキすぎ」


適当節さく裂だ。ほんとオレ天才かも。


◇◇◇ とある一軒家 ◇◇◇

次の日。

時刻はAM9時。


ここは都内にある一軒家。

本日、撮影現場として貸し切っている所。


オレは、岩井さんのマネージャーと

口裏を合わせ、事務所の後輩として潜入してる。

理解のあるマネージャーで良かった。

もしかして、オレを事務所に勧誘するつもりか?

イヤイヤ、それはないな!


そう、ハルキの身体で現場に来てしまった。

オレも大胆になってきたなぁ。

ここへ来た目的は、岩井さんの衣装姿を拝む

のもあるが、事件後の初仕事である。

トラウマが発動したら心を落ち着かせられるのは

オレしかいないと考えたからだ。


しかし、暇である。

後輩が遅れて見学に来たら、スタッフ達に

感じ悪いので岩井さんと一緒に現場入りした

のはいいが、回りが忙しくしてる中、

ぼーっと突っ立てるのは居たたまれなくなる。


なので、邪魔にならぬよう機材の搬入を手伝ったり、

撮影場所の掃除をしたりとカメラマン関係者に

猛烈アピールしてやった。

業界関係者に良いイメージを持たれることは大事。

これでアーツ事務所に貢献できたかな?


待つこと40分。

マネージャと共に岩井さんの登場。

化粧をしている上、顔が撮影モード。

そこに居るのはオレの知っている

岩井さんではない。

あなたは、美しい。こりゃファンになるわ。


♪カシャ、カシャ、カシャ、カシャ


撮影が始まった。

眩しい。あなたは眩しすぎるよ。

オーラを放った芸能人がそこに居る。

とても手の届かない存在に思える。

付き合う前の感覚が蘇る。


♪カシャ、カシャ、カシャ、カシャ


その笑顔いい。現場に来てよかった。

見たことのない表情をマジマジと

拝めたのだから。

よくよく考えたら岩井さんを

こんなにも直視する事なんてないかも。


♪カシャ、カシャ、カシャ、カシャ


どうしてオレを好きになった。

オレのどこがいいんだ。

写真を撮られてる岩井さんを見てると

自分に自信がなくなってくる。


いつの間にか撮影が中断され、

岩井さんは裏へと戻ってしまった。

恐らく衣装チェンジかな。


いやぁ、これはヤバいわ。

次の写真集バカ売れするぞ。間違いない。

ファンが更に増えるんじゃないか。

複雑な心境だ。

岩井さんがもっと有名になって欲しい反面、

なって欲しくない気持ちもある。


彼女と付き合ってて大丈夫なのだろうか。

だんだん不安になって来る。

いつかファンに刺されるぞ。


お!戻って来た。


これまた大胆な衣装ですね。

普通の彼氏なら彼女があんな格好したら

止めて欲しいって言うんだろうな。


オレは止めないけど。


岩井さんは、オレの正面へと来る。


「どう?この衣装。可愛くない?」

「エロ!」


やはり直視できん。

目のやり場に困ります。

これは最高の写真集になるよ。


「写真集でたら買う?」


上目遣いで見るな。


「気に入ったのがあればね。

 その時は、お渡し会に並ぶよ」

「言ったね。絶対、買わさせるから」


こういう所が好きだ。


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