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(143) 親睦会

◇◇◇ 立会川駅 ◇◇◇

時刻はAM9時半。


オレは京浜急行線の立会川駅に到着。

今日は部活メンバーによる親睦会の集まり。

そうBBQ (バーべーキュー)開催日である。

集合場所は、駅の改札口を出たところ。

オレは1人、集合場所へ来たのである。

周囲を見渡すと顔見りが1人。


「あれ!彼女と一緒じゃねぇの?」


カイが1番のり、だったようだ。


「乃々(ののか)の事か?彼女じゃねぇ」


あぶねぇ。

岩井さんの名を出すところだった。

確かに本来ならノノンと一緒に来てたところだ。

だがオレは岩井さんのマンションから

直行したで単独行動となったのだ。


動物園の日から2日間、

岩井さん宅に連泊してる。

そして今日、何をするのかは

岩井さんに伝えてはある。

『一緒に行かないか?』と誘ってはみたが

『大勢いるところは苦手』と断られた。

元々集団が苦手な人だったからな。

分かってて敢えて聞いてはみたけど、

もし『行く』と言われてたらどうなって

いただろう。

動揺するのはオレだけか。


BBQが終わったら、岩井さんの

マンションへ戻るつもりでいる。

これってもう同棲じゃん。

このままだと永遠に居座ってしまいそうだ。


「ハル君よぉ。

 最近部屋に居ないけど。

 どこに出かけてるんだ?」


夏休みで友達いなからってオレの部屋に来んな!

さて、どう説明しよう?


「住み込みのバイトをしてる」


これでどう。信じます?


「どこで?」

「どこだっていいだろう」


「カラオケBOXか?

 金ないもんな」

「カイもだろ」


セーフ。

とりあえず信じてくれたようだ。


「お待たせぇ」


金沢さん、堀北さん、ノノンの

女子3人が仲良く登場。

途中で待ち合わせしたのかな?


「皆さん、おはようございます。

 時間的にちょっと早いですが、

 全員そろいましたので

 会場へ向かうとしましょう」

「カイが仕切るな。

 部員でもなんでもないだろう」


「失礼しました。

 では部長、ご挨拶お願いします」


突然カイから挨拶をふられ

金沢さんが動揺する。


「私はいいです。

 岳中(たけなか)くんがこのまま仕切って」


「部長からの推薦もあり、

 この岳中が部長代理を務めさせてもらいます」

「何が部長代理だ。

 お前は単なるガイド役だ。

 さっさと行こうぜ!」


女子3人はオレとカイの会話を聞いて

クスクスと笑う。

部活を思い出す。これも部活だった。


移動中、ノノンの視線が痛い。

そう言えば、朝の事件から会ってなかった。

ノノンがオレの真横へと来る。

()ぇよ。


「博士のエッチ」


周囲に聞こえる。もっとトーンを下げて!


「だから誤解だって。

 オレと岩井さんは健全な交際をしています」


頼むよ。


「岩井さんからLineで事細かく

 聞いてますから」


マジ?

ニーナとつながってるのか。

女子同士って()ぇ~。

人に言えない事まで打ち明けるのかよ。


「頼む。

 研究室の連中にだけは言わないでくれ」

「ほらぁ、怪しい事してるじゃん」


はめられた。カマ掛けられた。

そうだよ。

冷静に考えて、オレ達の関係を岩井さんが

ペラペラ話す訳ないじゃんか。

やられた。


「オレは本気なんだ。

 岩井さんを大切にする。

 約束する。だから頼むよ」

「分かりました。1つ貸しね」


はい?なぜ貸しなの?意味分からん。

部下に弱みを握られたのは痛い。

研究室、戻ったらやり辛くなる。

戻るまでにオレが貸しを作らねば。


◇◇◇ BBQ会場 ◇◇◇

時刻はAM10時半。


♪カシャ、カシャ(カメラのシャッタ音)


BBQ会場に到着してオレはすることがない。

炭担当はカイがやってくれてる。

焼くのは女子達。

オレは食うだけ。

沖縄での予行練習は何だったのだ。


なので、オレは携帯で写真を撮って

グループLineにアップする役割となった。


だがこれは、表向き夏の思い出として

写真を撮ってるかのように装っているが、

真の目的は岩井さんに嘘ついてないですよ

と証拠写真を撮っているのだ。


そして、定期的に状況のDMも送ってる。

返答はないものの既読にはなってるので

見てはくれてるようだ。

彼女を持つ世の男性陣は

こんな事を裏でしてたんだな。


♪ツツチチツツ、ツツチチツツ。


おっと、岩井さんからLine電話。


「ハルキです。なに?」

「楽しそうでいいわね」


声のトーンが低い。機嫌斜めですか!?

オレだけ楽しんでるのが気に入らん?


「うそ」


なんだよ。脅かすなよ。


「夕方戻って来るでしょ?」

「終わったら直行する。

 途中でスーパー寄って買い物してこようか?」


ご機嫌取りも大変だ。


「今から買い出しに出かけるからいい。

 夜、なに食べたい?

 お腹空いてないよね?」

「多分、すかないかも」


だって、することなくて食べ続けてますから。


「分かった。

 夜遅くに小腹が空いたら

 直ぐ食べれるの準備しとく」


なんて出来た嫁なんだ。

あなた最高っす。


「ケーキ買って帰る」

「やった。楽しみにしてる」


そんなに喜ばれると適当な店で買えなくなる。

嫁を置いてここで遊んでる訳だから

後ろめたい気持ちはある。

世の男性陣は大変だ。


「じゃ、あとで」


電話を切ると同時に。


「ハル!誰と会話してたんだ?」


えっと、お母さんって言ったら信じます?


「バーチャルかよ。

 お前、会話に入れないからって

 電話してるふりすんなよ」


はぁ?


「いや、本当に電話してたんだ」

「分かった分かった。

 女性陣の皆さぁ~ん。

 ハルも会話に入れて差し上げて」


もう最悪。

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