(142) 恋とは?
◇◇◇ 上野動物園 ◇◇◇
時刻は10時。
オレと岩井さんは上野動物園へと来た。
正門から入園したが人、人、人で溢れてる。
その光景を見て失敗したと感じた。
オレは人込みが苦手だ。
どうしてこんなところに来てしまったのだと。
「マップ見ながら順番に行こうか」
いつものように岩井さんはサングラスをし、
芸能人ユーリであことを隠してる。
なぜ岩井さんは変装しなければならない?
高校生カップルのような普通の
デートがしたいと感じてるはず。
2人が密着してても、変装することで
壁を感じてるのはオレだけか。
「ゾウだ。
マップを見ると現在地はここだね。
鳥を見に行こうか」
動物園に来たのは、こんなところがあるよ
と岩井さんに見せてやりたかったから。
沖縄の水族館もそう。
「ライオンまで来た。
想像よりも広いわ、この動物園。
この先はゴリラらしい」
これって接待じゃねぇ?
デートといえるのか?
「ホッキョクグマだよ。
次はパンダ見にいこう」
そもそもオレは本当に岩井さんに
恋をしているのだろうか?
恋とはなんだ。
一緒に居たい。守りたい。
という気持ちはある。
それは揺るぎない。
これを恋と呼んでいいのだろか。
ノノンや堀北さんに対してはどうだろう?
同じように一緒に居たい、守りたい。
という感情があるか?
と問われたら答えは『YES』。
岩井さんが特別という訳ではない。
やばい、分からなくなって来た。
だからと言って浮気をするつもりはない。
幻滅させたくないから。嫌われたくないから。
それが恋なのか。
では愛とはなんだ。
良く親子の間では愛があると聞くよな。
両想いなら愛なのか。
片思いは恋。両想いは愛なのか。
岩井さんとは愛で合ってるか?
いや、同じじゃね?
恋愛とも言うよな。
『恋=愛』
訳が分からなくなったが、少なくとも
こんな気持ちで付き合ってていいのか。
「パンダは大人気だね。
せっかく来たんだ。並ぼう」
こんなに好きなのに。
好きという感情は理解できる。
もしかして『好き=恋』なのか。
ノノンも堀北さんも好きだ。
考えれば考えるほど迷路。
恋とはなんだ。愛とは。
「楽しいね」
「実はオレも初めて来たんだ。来てよかった」
「ハルキと一緒にいるだけで楽しい」
もう考えるのは止めだ。
恋や愛なんてどうでもいい。
岩井さんに告白したとき、
正直に伝えたじゃないか。
オレの思いが恋かどうかわからないと。
岩井さんはオレと一緒にいたい。
オレも岩井さんと一緒にいたい。
それで十分じゃないか。
なら一緒に居るだけ。
悩む必要などなかったのだ。
◇◇◇ アメ横 ◇◇◇
時刻は15時。
「お腹すいたよ」
「飲み物しか飲んでないもんな」
オレ達はまだお昼を取ってない。
なんとなく食べるタイミングを
失ってしまってた。
いい加減お腹が空いたので、
動物園を出て食べ歩きの出来る
アメヤ横丁へと寄ったのである。
とはいうものの、ここは衣類、雑貨、
宝飾品などがメインの商店街だ。
もちろん食事する場所も沢山あるが
どうしても雑貨に目が行き
なかなか食事にありつけないでいる。
「お揃いの物、買おうか?」
やはり高校生と言えば、お揃いの物を
身に付けるでしょ。
「欲しい!」
嬉しそうな顔するなぁ。
その提案気に入りましたか。
「普段持ち歩ける物にしようよ。
財布とか、キーホルダーとか」
Tシャツとかは避けたい。
同じものを着て歩くのは恥ずかしいから。
「逆にブレスレットとか身に付ける
のは止めとこう」
「どうして?」
オレがブレスレットするの変じゃね?
カイに見られたら説明できんよ。
「だれにも気づかれず、
オレ達だけが共有している
って、ステキじゃないか?」
「いいよそれで」
よし、うまく誘導できた。
そうと決まればペアーの物を探すまで。
雑貨屋を転々とするも、
キーフォルダーやマグカップがほとんど。
魅かれるのが見つからない。
「ハルキ、夫婦守りどう?」
岩井さんが指差す先に、
青と赤のペアーとなるお守りが陳列されている。
確かにいい。
いいが携帯するには不便だぞ。
岩井さんはバッグとかに入れとけばいい
けど、オレが手ぶらの時はどうしよう?
「小さいのもある。
財布に入りそう。これ良くない?」
それは100円玉サイズの
黒とピンクのペアーのお守りであった。
「小銭入れに入れてたら
商売繁盛しそうな気がしない?」
確かに。
岩井さんにはもっとメジャーになって
もらいたいからな。
目的が変わってしまうがいいか。
でも財布を尻に入れてたら
罰当たらないか?
岩井さんがいいならいいけど。
結果その小さな夫婦守りを購入することに。
カップルってペアーなものを持つよな。
これでオレ達もそいつらの仲間入りだ。
商店街で一緒に探し物して、
ペアーな物を購入する。
やっと、恋人らしいことをしたような気分だ。
「お腹空いた。早くお店決めよう」
岩井さん?台無し。
その言い方、可愛いから許します。