(138) 沖縄リベンジします③
◇◇◇ コテージ ◇◇◇
時刻は18:00時
オレと岩井さんは水族館デートを楽しみ
コテージへと戻って来た。
そして、ノノンと合流。
夕飯はバーベキューをすることにした。
近々、部活メンバーともやるので
その予行練習でもある。
「まだぁ~?」
「落ち着け!」
炭に火を付けようとしてるんだが、
これがなかなか燃えてくれない。
かれこれ10分ほど格闘してるのだが
想像よりも難しい。
「火つけるの簡単そうなんだけどね」
岩井さんがオレの横に来て、炭に変化がないことを確認する。
「素人には難しい。
ネットでは空気を沢山入ればいいって
書いてあるけど、ダメだ。
どこを間違えているのだろう。
こうなったら最終手段」
♪ゴォー
スプレー缶のガスバナーを使うことにした。
これなら強制的に炭に火を入れられる。
「それ反則じゃない?」
「火を付けるのが目的ではない」
ノノンの指摘は正しい。
だが、食べるの遅くなるけどいい?
ようやく炭が赤く発光しだしてきた。
周囲の温度が上昇してるのを感じる。
「良い感じ、もう焼いていいよ」
「肉肉」
♪ジュー
ノノンと岩井さんが、肉や野菜を焼き始める。
その間、オレはさつま芋を濡れた新聞紙で
まるめ、更にアルミホイルで包み、
炭の中へと放り込んむ。
ネットに書いてある通りにしてるのだが
芋も炭にならないのか?
続けて、オレは焼きそばの調理に移る。
「はい、どうぞ。
まだ口にしてないでしょ?」
ずーっと手を動かしてて、
一口も食べてないオレを見かねてか。
岩井さんが紙皿に取り分けた肉を渡して来たのである。
「サンキュー」
上目遣いで渡すのやめろ!
わざとやってるだろ?
くっそー、超~カワイイじゃねぇか、オレ嫁。
「焼きそば出来たぞー」
「待ってたよ」
ノノンは大盛りで紙皿に焼きそばを乗せる。
「お前、さっきから食い過ぎじゃね?
デブるぞ」
「その分、身体動かしてるから平気なの」
あぁ、そうですか。
バーベキューって楽しいな。
今更だが、カワイイ女子2人に囲まれて
これってハーレムじゃね?
「明日の予定はあるの?」
岩井さんからの質問だ。
「マリンスポーツとかどう?
魚に餌付けとか、ジェットスキーを乗り回す
のも楽しそうだよ。
何がしたい?」
「バナナボート乗りたい」
「私は熱帯魚見たい」
ノノンは身体を動かしたくて
岩井さんは鑑賞がしたいのか。
「いいね。
じゃあ明日1日は沖で何かしよう。
クルーザ手配しとくよ」
「ハルキは何者なの?」
「ただのおじさんだよ」
おい!ノノンのバカ!
岩井さんの前で何てこと言うだ。
「オレが凄いんじゃなくて。
田中さんが凄い人なんだ」
確かにオレはオッサンだけどよ。
最近、若い人達の中にいるせいか
精神的に若返ったような気がしてますけど。
しかし、楽しい。楽しすぎる。
毎日が充実してる。
これもノノンのおかげだ。
ノノンが学生をやり直したいと言い出さなかったら
この状況にはなってない。感謝しかない。
バーべージューの後はジャグジー。
既定コース。
どれだけ好きなんだよ。
オレがジャグジーに入るということで
2人も入るということに。
・・・
夜のジャグジーも最高です。
オレの左にはノノン。右には彼女がいる。
3人で空を見上げ星を眺めてる。
最高すぎる。
幸せとはこのことを指すのだろう。
『この時間が永遠に続けばいいのに』
というのをマンガで見たことがある。
バカなこと言ってるなぁとは思ってたけど、
まさにこの瞬間が永遠に続けばいいと願っている。
その言葉の意味を理解したよ。
「花火買ってくればよかった」
人生最大の失敗だ。
「じゃぁ、明日やろうよ」
「私、花火したことないかも」
岩井さんの何気ない一言が、
オレの胸が締め付けられる。
おそらく普通の子たちが体験して来た
ことをして来なかったのだろう。
小さい時から父と二人暮らしで、
遊びに出かけない家庭だったようだ。
というか会話がなく、食事は朝昼晩を
職場で済ませる父だそうで、岩井さん自身は
小さいころから自炊を1人でやってきた。
友達が居なく、今まで1人で遊んでたようだし。
そんな家庭環境だったの知ってるからこそ、
何気ない発言がオレに突き刺さる。
だから、いろいろな体験をさてやりたい。
これからは沢山の思い出を作ろう。
オレは彼氏だ。
生まれて来たことを後悔させない。
岩井さんを幸せにします。
と言いたいところだけど、オレが幸せです。
「この後、みんなで映画でも観ようか?」
「賛成。恋愛ものがいい。
キュンキュンするやつ」
えぇ、恋愛ものを岩井さんと見るの?
ハズいんですけど。
岩井さんはどうなのだろう?
「見ましょ。恋愛映画」
「それでいいの?」
「私は何でもいいよ。
ハルキのしたい事に合わせるから」
ノノンが選択したんですけど。
「じゃぁ決まりだね」
一見、興味がなさそうな回答に思えるが、
実は逆なのかも知れない。
岩井さんにとっては全てが新鮮なのである。
ただ、ジャグジーに入ってるだけでも楽しいのだ。
彼女を幸せにしたい。
そんな思いにさせてくれた神に感謝する。