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(135) 試合結果発表

◇◇◇ ホテル ◇◇◇

「好きなのは岩井さんなんだ。

 彼女になってください」


ここはホテルの最上階。

岩井さんはエレベータの前に立ち、

ドアが開くのを待っている。

彼女を引き留めるべく、

勢いで告白してしまった。

しかもホテルの廊下で大声で。


このタイミングで告白はないだろう。


「また適当なこと言って」


YES / NO が返ってくると思いきや

その返答は想定外です。

確かに、引き留めるために勢いで

口ばしったが、半分以上は本気だ。

えーっと。


「ほら図星じゃん」


♪チン


エレベータが到着し、ドアが開く。

せめてノノンとの事を誤解されたまま

帰らせたくない。

岩井さんが片足を1歩踏み入れようと

したとき、オレは彼女の手首をつかみ

進めないようにした。


「聞いて?

 引き留めるために告白したのは認める」

「もういいです」


岩井さんはエレベータの中へ入ろうとする。

だめだ。


「キャッ!」


オレは強引に押し倒してしまった。

ホテルの廊下で、岩井さんは仰向けに倒れ、

逃げられないようオレが四つん()いで

覆いかぶさる。


やっちまった。これ犯罪だろう。


「最後まで聞いて?

 オレは岩井さんが好きだ。

 嘘じゃない」


♪チン


エレベータのドアが閉まり、降下していく。


オレは岩井さんを見つめるも

顔を反らされ目を合わせようとしない。

だが拒む様子はない。じっとしている。


なにやってるんだ、オレは。

これじゃ拉致集団と変わらない。

本気でトラウマになるぞ。


オレは岩井さんを解放し真横へと座る。

彼女はうつ伏せで倒れたままだ動かない。


さて、この後どうしよう。

会話が続かない。

こうなったらオレの本音をぶちまけるまで。


「オレは人を好きになったことがない。

 だからこの感情が恋なのか分からない」

「そんな気持ちで告った訳?」


ダメか?


「岩井さんとはずっと一緒に居たい。

 何かあったら守りたい。

 そんな理由で告ってはダメか?」


・・・


「ニーナさんとは、どのような関係なの?

 説明して」


おっと、説明し辛いところを突いて来た。

さて、どう答えたら誤解が解ける?


「田中さんから、1週間だけ面倒を見て

 欲しいと頼まれたんだ。

 訳アリなんじゃねぇの?

 東京に知り合いが居ないようだし。

 知らんけど。

 恋愛感情はない。それは断言できる。

 ここに岩井さんを連れて来たのは

 ニーナが居れば安心できると思ったんだ。

 ごめん、来る前に説明しとくべきだった」


いつもの適用がよくもまぁ、こんなにも

スラスラと口から出て来たものだと

自分の才能が怖くなる。


ただ、いろいろと突っ込みどころ満載だ。

簡単に嘘だってバレそう。

ここは攻めに反転。

彼女は反対側に顔を向けているが、

オレは岩井さんを直視しながら話す。


「岩井さんの気持ちはどうなの?

 オレの事、恋愛対象として見れるの

 見れないの?

 答えて欲しい」


話しをニーナからそらすにしても

告白の続きはないだろう。

やっちまった。

詰めが甘い。


岩井さんはオレに顔を向ける。

ようやく目を合わせてくれた。

顔が笑ってない。


・・・


こりゃ振られたな。

オレのことが好きだと思ってたのは

やはり勝手な思い込みか。


今後、気まずくなるな。

ノノンと一緒に生活してもらうよう説得しよう。

岩井さんには話し相手が必要だ。


岩井さんは起き上がり、オレの首に腕を回し

抱き着きついてきた。

苦しいくらいに強く密着してる。


そして耳元でささやく

「知ってるくせに」

そう言って、岩井さんはオレにキスをした。


あまりにも唐突にされたので、

後ずさりして今度はオレが仰向けに倒れ、

岩井さんが覆いかぶさる形に。


想定外の展開である。

これって付き合うってことで良いんだよな。

顔を見られるのが恥ずかしいのだろう。

直ぐにオレ耳元へ顔を移動させる。


オレも彼女の顔を見るのが恥ずかしい。

結果、天井を見つめる形となる。

岩井さんを放したくない。

そんな思いから両腕で彼女を強く

抱きしめる。


ふと冷静になると、ここはホテルの廊下だ。

何やってるんだが。

まぁ、最上階は誰も通らないからいいんだけど。


<<ちょっと、見てて恥ずかしいんですけど>>


はい?

声の主の方へ眼球を動かすと、

幽霊のノノンが立って覗き込んでいる。


最悪だ。

この場を見られたのは人生最大の失敗です。

いつから居た?

全部見てたのか?

ノノンの存在にまったく気付いてなかった。

落ち着けオレ。冷静を装うのだ。


「部屋に戻りませんか?」


数秒だが、お互いが強く抱きしめ合った。

会話はないけど誤解が解けたような気がする。

そして、はっきりとは口にしてないけど

岩井さんと付き合うこととなった瞬間である。


2人して立ち上がるとノノンの姿はない。

リビングでオレ達が戻って来るのを

待っているだろう。


こうなったら開きなおるしかない。

オレは、岩井さんの指をからめ恋人繋ぎをする。

岩井さんは嫌がってない。

そして彼女を引っ張るようにして部屋へと入る。


「お帰り」

「おう」


やべぇ。オレの方が動揺してる。

ここは、岩井さんのためにもオレ達の

関係をはっきりさせておかないと。


「ニーナ!伝えておくことがある。

 オレと岩井さんは付き合ってるんだ」


で、いいんだよね?

岩井さんがどんな表情をしてるか見るのが怖い。


「えぇ!そうだったの?知らなかった」


わざとらしい。


「いつから?どっちから告白したの?」


もうやめて、これ以上は聞かないで。


「ノーコメントだ」


ノノンは岩井さんに目を向け話し掛ける。


「さっきは不適切な発言をしました。

 ゴメンなさい。

 まさか2人が付き合ってると思わなかったから」


付き合ってるうんぬん関係ないだろう。

普通、人前で言うかよ。


「ハルとは肉体関係ないから安心して」

「おい!言い方」


「これからもニーナちゃんとお友達で居たい。

 いい?」

「いいもなにもずっと友達だよ」


ノノン、お前って良い奴だな。

頼むよ。

女同士の方が話し易いこともある。


「じゃぁさ。3人で沖縄行こうよ。

 親睦会ってやつ」

「それいいね

 岩井さんの仕事キャンセルになったし。

 1時間で支度できる?」


岩井さんに確認すると。


「今から?」

「夏休みなんだし行こうよ、ね?」


ノノンがプッシュする。

オレも後押しだ。


「事件のこともあるだろうし

 沖縄なら安心できるでしょ?

 ニーナの部屋に、服が沢山あるから

 好きなのに着替えてよ」


「えーと、はい。

 シャワーだけは浴びさせて」


事件の後だもんな、気になるよな。


「どうぞどうぞ」


ということで沖縄行きが決定した。

沖縄に行けば事件の事が薄れるハズ。

ノノン!素晴らしい。


「その合間、オレは田中さんに

 飛行機とか手配してもらうから」


ということで、岩井さんはオレの彼女となった。

そして、ノノンと3人で旅行することに。


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