(131) 夏休みの思い出その後
◇◇◇ 那覇市上空 ◇◇◇
時刻は22時。
「博士見て見て!きれいだよ」
デジャヴか?
オレはかつて、ノノンと同じ会話を
したような気がする。
ここは飛行機の機内。
オレとノノンは、上空から那覇市の夜景を眺めてる。
これで沖縄とは、お別れ。
「本当によかったのか?」
「いいよいいよ。
岩井さんと次、いつ、仕事できるか分からないもん。
沖縄はいつでも来れるし」
「確かに、夏休みは長いからな」
しゃぶしゃぶの後、オレとノノンは
国際通りを散歩して、首里城へと向かった。
一応、観光スポットだから行ってみたnのだ。
そして、コテージには戻らず、
そのまま空港へと直行し今に至る。
結果1日だけの沖縄。
せめてもう1日は満喫したかった。
今回の旅行はノノンのテスト祝い。
本人が望むのであれば、それに従うまでのこと。
「コテージは借りたままだから
明日の対談後、沖縄に戻って来てもいいぞ」
「次は部活メンバーで沖縄行こうよ。
大勢いた方が楽しい」
確かにな。楽しいだろうよ。
堀北さんの水着姿が見たいし。
「それは却下だ。
オレは貧乏学生って設定だからな」
「なら、岩井さんとならいいでしょ?」
なるほど。
田中さんにお金出してもらったと言えば
岩井さんなら騙せそう。
2人で仲良く行って来たら?
そっちの方が楽しいと思うぞ。
「構わないが、岩井さんが1日オフに
なる日はしばらくないぞ」
「仕事キャンセルさせればいいじゃん」
「岩井さんは駆け出し中なの。
受けた依頼をキャンセルさせるのはよろしくない」
「博士が沢山仕事詰め込むからでしょ?」
「自分で詰め込んでるんだが。
確かに仕事を持って来たのはオレだが、
選択してるのは本人だぞ」
そんな、会話をしてたら、いつのまにか
東京の上空へとやって来た。
早いな、もう到着かよ。
◇◇◇ ホテル ◇◇◇
時刻はAM4時。
いつものホテルへと到着する。
羽田からホテルへ直行だったので
ノノンの姿はニーナのまま。
室内に入ると、お互い、自室へ。
日帰りで沖縄なんかに行くもんじゃない。
昨日はディズニーランド。
気付いたら、どっと疲れが押し寄せる。
オレはそのままベッドに倒れたのであった。
目覚めたのは朝8時。
流石にノノンも疲れてるようだ。
幽霊で起こしに来るかもと構えていたが
来ることはなかった。
暇なので田中宛のメールを確認することに。
アーツ社からお知らせメールが届いてる。
本日の対談の件だ。
日時と場所が記載されていた。
今日は暇だし、田中になって対談の様子を
見学に行くのもありだな。
続けてPMCからの報告メールを確認する。
新宿のチンピラどもの監視状況だが、
進展がないとのこと。
どうやら、ボスは彼らと接触することは
ないようである。
恐らく電話等で指示を出してるのだろう。
先日のひき逃げ事件。
あれから理由を考えているが
どうして狙われたのかサッパリ分からん。
もしあれが、衝動的なオヤジ狩りだったのなら、
頻繁に犯行を犯してもよさげだ。
だが彼らはあれから再犯に出ることはない。
また、彼らの拠点である歌舞伎町周辺でも
騒ぎを起こすようなことはしてない。
くっそ。
オレのモヤモヤはどうしたら晴れる?
ひき逃げ事件の容疑者として捕まえさせる
には証拠を持っている。
奴らを拘束して、携帯の発信履歴を調べた
方が手っ取り早そうだ。
♪ピコ
Lineが来た。
久しぶりにアイミーからである。
Line>14時から17時まで急に時間が
空いたからお茶しない?
今日の話しだよな。
久しぶりにアイミーに会いたいなぁ。
篠崎さんにも声掛けた方がいいのか。
バンドメンバーなんだし。
Line>お茶もいいけど、
バンド練習するのはどう?
篠崎さんが空いてたらだけど。
我ながら、いい案だ。
アイミーは忙しいからバンド練習する
タイミングが見つからない。
そして、オレに取って練習は、
生ライブをタダで聴ける場でもある。
Line>それでもいいよ。
バンドグループのLineに切り替え。
篠崎さん交えて会話することに。
篠崎さんも暇してるとのことで、
練習があっさり決まってしまった。
場所取りはオレの役目。
先日行った渋谷のスタジオに問い合わせた
ところ既に予約で埋まっている。
いろいろ探したころ、14時から16時まで
なら使える下北のライブハウスを見つけ
抑えることに成功。
アイミーと篠崎さんにその旨を伝え
14時現地集合することに。
そして、ノノンが起きてきたのは10時。
11時に2人で朝食兼昼食を済ませた後、
2人してホテルを出る。
ホテルの前には黒塗りの高級車が1台待機。
オレがノノン用に用意したものだ。
ボディーガード兼運転手が運転席から降り、
後部座席を開ける。
「1人で大丈夫か?」
「子供じゃありません。博士!行って来ます」
いってらっしゃい。
ここから先は別行動。
オレはアイミーとバンド練習で下北へ。
ノノンは岩井さんと仕事。
ちなみに、ノノンの対談はネットで
テキスト掲載されるそうだ。
アパレルメーカーがスポンサーのようで
対談の様子と何着か用意された服装姿も
載せるとのことで、写真撮影もある。
意外と時間の掛かる仕事となっている。
ノノンが乗り込むと車は直ちに出発。
オレは車が視界から消えるのをその場で
呆然と眺めていたのである。
2日間一緒に居て、あっさり別れると
意外と寂しいものだなぁ。
<<博士、寂しいの?>>
「うわぁ、驚かせるな!」
幽霊のノノンが隣に居たのである。
「幽霊で遊ぶな!」
<<天使です>>