(013) 新たな女子と知り合いに①
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
朝の学校。
いつもの時間に教室へ入る。
この時必ずやることがある。
堀北さんが居るか否かだ。
彼女が居ないと1日のテンションが違う。
気になってるのに、挨拶せず自席へ座る。
よくもまぁ、こんな性格で告白する気に
なったもんだと我ながら感心する。
せめて、挨拶できるくらいになってから
告白しろよって感じだ。
二度とあんな思いはしたくない。
そして隣のクラスからいつものように
自分の教室であるかのように我が物顔で
やって来る人物がいる。
カイだ。
オレの席へと来ては、くだらん話をして
時間をつぶすというのが日課である。
今日の彼はいつもと違った行動を取る。
「堀北さん、おはよう」
「おはよう。毎朝テンション高いよね?」
カイやめろ!
オレの堀北さんと気軽に会話すんじゃねぇ。
しかし、お前すげぇな。
ガン無視されるとか発想ないのか。
そのメンタル欲しいわ。
オレも便乗しとこ。
「おはようございます」
「細倉くん、おはよう」
よっしゃぁ、始めて女子と挨拶交わしたわ。
しかし、その笑顔が眩しい。
興奮が顔に出てたかも。
キモオタと思われてないだろうか。
・・・
ノノンさん?そんな目でオレを見ないで!
「こいつ。
まだ幽霊に取りつかれてるんだってさ。
聞きました?」
「細倉くん、そうなの?」
だから気軽にしゃべるんじゃねぇ。
<<そうなの?>>
ノノン!お前のことだ。
「信じてもらえないかもしれないけど。
オレの後ろに立る」
そう答えると、カイと堀北さんはオレの
背後に視線を移す。
まぁ、そうなるわな。
ごめん、嘘です。
オレの膝の上に座ってます。
ノノンもオレの背後を確認する。
つっこまないぞ、ガマンガマン。
その事について堀北さんから提案が
だされた。
仲の良い友達に心霊好がいるんだとか。
その子にオレの話をしたら是非会って
見たいという。
世の中、物好きがいるねぇ。
「会います。会います。今日いいですよ」
「カイは関係ないだろう。」
堀北さんとの会話に割り込まないでくれます?
「その友達って他高校ですか?」
だから割り込むな!
目的も変わってる!
その友達とは、Aクラスの金沢さんだそうだ。
超常現象に関する部活をされてるとのこと。
なるほど、オレに興味を示す訳だ。
「同じ学年じゃん。
ハルはその子、知ってるか?」
「いや、顔見たら分かるのかなぁ」
「とりあえず、会いに行こうぜ」
「カイも行く気か?」
「当たり前じゃん。
お前のマネージャーだろ?」
言ってる意味が分かん。
いつからオレはタレントになったんだ。
「心霊にスゲー興味あるんですよ。
その子と話し合いそう」
嘘つけ!下心しか見えん。
「金沢さんは彼氏とかいるの?」
「それ関係ねぇだろう」
「どうだろう。
異性の話とか聞いたことがないから
いないと思うよ。多分」
堀北さん?
真面目に答えなくていいですよ。
カイはオレの肩に腕を乗せ
顔を近づけて小声で話す。
「これチャンスだよな?」
止めとけ!
堀北さん抜きでその子と会って
大丈夫なのか。
「会うとしたら放課後だよね?
堀北さん居なくて、うちらだけで
その子、怖がらない?」
「大丈夫、大丈夫、オレに任せろ。」
「カイには聞いてない」
堀北さんが言うには、昼休みはいつも
その子と部室で食べてるという。
なので、1つの提案が出された。
「今日のお昼とか、どうかなぁ?
もしかしたら紹介するかもとは
伝えてあるんだけど」
マジ?オレを誘惑してます?
じゃぁ、2人で・・・
「行きます行きます。部室ってどこ?」
台無し。お前来るのかよ。
昨日のお昼にオレの話をしてくれたそうだ。
その友達にはオレも事をどのように説明して
いるのだろうか?
キモオタの糞野郎だったらへこむわ。
「一緒に食事しながら親睦を深めましょう。
な?ハル!」
勝手に決めるな。
お前はナンパでもしに行く気かよ。
念のため堀北さんに確認しておくか。
「こいつも一緒で大丈夫ですか?
その子、嫌がりません?」
「あぁ!自分だけ抜け駆けしようとしてる。
ずるいぞ」
どうしてそうなる。
<<ハル!エッチだ。
エッチこと考えてる>>
ノノンもか。
堀北さんの解答は『岳中くんもいいよ』であった。
どうやらオレ1人だと女子2人で
居心地悪そうと心配してくれたらしい。
ということで、お昼になったら3人で一緒に
部室へ行きましょうと誘われた。
だがここで1つ問題が生じる。
オレとカイは、お昼は学校の売店でパンを
買ってるということ。
なので、売店でパンを買うから
遅れていくと告げる。
部室は別館3階だいう。
オレにはさっぱりだ。
だいたい別館がどれかさえ分かってない。
まぁ、カイが知ってると言う事で一安心。
<<ノノンも楽しみ。
三角の大きな帽子被ってるかなぁ>>
あのぉ、ノノンさん?
魔女と誤解してません?
カイも楽しみだという。
どうなることやら。
◇◇◇ 3年C組 ◇◇◇
♪キーンコーンカーンコーン
「そこ!まだ授業終わったとらんぞ」
「ちょっと用事があるんで!」
4限の終わりを告げるチャイムの音。
音と共に立ち上がる男子生徒がいた。
カイである。
彼は先生の制止を振り切り教室を
飛び出したのである。
そんな状況を知らないオレは、
授業が終わると堀北さんに『では後ほど』と
挨拶を交わして、カイの教室へ。
だが、奴の姿はない。
あれだけノリノリだったのに、どこ行った?
早くしないとパン買うのにすげぇ時間掛かるぞ。
「お待たせ」
背後からカイの声が。
「どこ行ってたんだ?
売店激混みだぞ!」
そんなオレの言葉にカイは動揺をみせず
ビニール袋を目の前に差し出す。
その袋が何なのか、オレには理解できた。
「マジか。早くね?」
パンが詰まってるのだ。
そう、毎日見てる袋だから。
「だろ。ハルの分まで買ってあるぜ。
今日はオレのおごりだ」
金欠なので超ラッキー。
おごりってくれるならお言葉に甘えるまで。
そして、オレらは部室へ向かうことに。