(119) 今日はノノンDAY
◇◇◇ ハルの部屋 ◇◇◇
時刻は7時。
♪ピピピッ、ピピピッ
うるさい。目覚ましだ。
オレは目を閉じたまま、左腕を頭上へ
移動させ、いつものように手探りで
置き時計のアラームを停止させる。
夏休なんだ。早く起きる必要などない。
♪ ん~ん
左隣から人の声がする。しかも女子。
オレは目を開け、音の主を確認する。
ノノンだ!
幽霊のノノンが真横で寝ていた。
「起きろノノン」
・・・
起きる気配がない。
くっそ、触れられない。
叩いて起こすこともきない。
「ノノン、朝だぞ」
これじゃいつもの逆ではないか。
しかし、そんなポーズで寝てて、
首とか痛くならないのか。
「おーい」
ノノンの寝姿をしばらく眺める。
寝てる姿も可愛い。
ズーっと幽霊のままで居てくれないか。
「やだぁ」
やだぁ~、じゃねぇよ。
他人の部屋に勝手に上がり込んでおいて。
ノノンと目が合う。
「起きてるなら、起こしてよ」
「何度も声かけたぞ」
「どうしてオレの部屋で寝てる?
朝起こしに来て寝てしまったか?」
「怖くてハルの所、来ちゃった」
はぁ?
「深夜2時くらいかな。
寝ている上の天井裏でパキ、パキ
って音が鳴り出したの」
怖いって幽霊かよ。
お前も幽霊だろ!
「そんな理由かよ」
「だって怖かったんだもん」
「まっ、いいけどよ面白いもんが見れたから。
ガーガーってイビキかいてたぞ」
「嘘だぁ」
あせるノノンも可愛いなぁ。
「動画に取っておけばよかった」
映らないんだっけか。
「天使はイビキなんかしません」
「天使だってイビキくらいするだろ?」
「嘘なんでしょ?」
顔が近い。
ノノンが顔を近づけて来た。
「ね?ね?」
その笑顔やめろ。オレもつられる。
「嘘です」
「もう」
「今日はテストだろ?
早くメシ食って、支度しなさい」
「あぁ!また親みたいなこと言う」
「今日もお昼、中華屋行こうよ」
「午後は暇だし。
商店街で食べ歩きでもしようか?」
「なにそれ?」
「戸越銀座とか有名だよな。
ショッピングしながらいろんな
お店をはしごしながら食べるってやつ。
伝わってる?」
「行ってみたい」
ノノンにはこの世界のいろいろな所を
見せてあげたい。
「テスト終わったら、校門の前で
待ってろ。迎えにいくから」
「楽しみにしてる」
ノノンが消えた。
◇◇◇ ジム ◇◇◇
時刻は17時。
オレは久しぶりに堀北さんのジムへとやって来た。
もちろん、ノノンも一緒。
午前中はテスト、午後は商店街での食べ歩き。
そして夕方、今の至る。
気になるテストは問題なく終了し、結果は明日だそうだ。
自己採点ではオール100点とかぬかしてやがる。
明日の結果を聞くのが楽しみだ。
午後は、戸越銀座商店街でのデート。
ショッピング&食べ歩きをして来たのである。
オレも楽しめた。
ただ、デートと言うよりかは、オレが観光大使で
ノノンをご案内したって感覚である。
そして、3時間ほど時間を潰し、
堀北さんの所へと会いに来たという流れだ。
堀北さんにはオレらが行くことを伝えてはいない。
どんな反応するのやら。
「細倉先輩、お疲れ様です」
ジムに入ったら他校の後輩に挨拶された。
礼儀正しい出来た後輩である。
惚れそう。
いかんいかん、いつもの病気が始まった。
「遊びに来ました。
こちらは茂木さんです」
茂木 乃々佳ことノノンを紹介。
「こんにちわ」
ノノンも後輩ちゃんに挨拶を交わす。
「先輩の彼女さんですか?」
おっと、そう来たか?
女子と2人だからな、誤解するわな。
「堀北さんの友達です」
ノノンから説明してくれた。
「私達、クラスメイトなんです」
「凛心先輩ならあそこに居ますよ」
言われなくても姿が見えてる。
ボルダリングしてる堀北さんがそこに居る。
感動だよ。
おっと!堀北さんがオレらに気付いた。
手振ってる。
危ないって。やめなさい。
降りて来た。
同時にオレらも彼女の所へ。
「ノノンちゃんも来てくれたの?」
「来ちゃった」
え!
あんた達、いつのまにそんな親密なの?
オレも会話させろ。
夏休みで話す機会ないんだから。
「もう練習再開してるんだね」
「100%じゃないけど」
「手首はもう痛くないの?」
「嘘のように痛みが消えてる。
怪我してたのが嘘みたい。
何ともないです」
「へぇ、最新の医療技術って凄いなぁ」
「ね、私も驚いてる」
堀北さんの笑顔は最高だ。
不思議とオレが幸せな気持ちになる。