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(113) ■■ フォース・インパクト ■■ ■■■■■■■■■■■■■■■

◇◇◇ 出版社 ◇◇◇

時刻は20時。


ここは大手出版社の本社ビル。

ロビー入口からぞろぞろと帰宅する社員達に

逆らって、中へと入って行く者がいる。


その者は、ハルキから50代のおじさんに

乗り換えたジュンである。

ここへ来た目的は、岩井さんのスクープ記事を

掲載しないよう交渉するためだ。


2時間前にダメ元で掲載先の事務所へ

電話したところ、運良く編集長とつながり

すんなりアポが取れたのである。

内容は、岩井さんのスクープについて

意見したいというもの。


アポイントメントが取れたのは、(かね)ズルが来た

と考えてのことだろう。

でなければ、こんな簡単に面会できるとは思えん。

金で解決できるならはオレの得意分野だ。

簡単な交渉になることだろう。


◇◇◇ 応接室 ◇◇◇


ロビーで事務所へ電話すると若手社員が現れた。

案内されるがまま付いて行くと、

とある応接室で待たされることに。

そして待つこと1分。


「お待たせしました。編集長の斎藤です」

「市川と申します」


軽く挨拶を交わせ、お互い席へと座る。

相手は編集長1人のみ。


「ユーリさんの件でご相談があるとの事でしたが」


さっそく本題に切り込んで来たか。

話しが早くていい。


「その掲載についてです」


「その前に1つお聞きしたい?

 ユーリさんとはどういったご関係でしょう?」

「アーツ事務所とは一切関係ありませんし、

 ユーリさんとも直接関係は御座いません。

 知人から依頼を受けまして参じた次第。

 いわば知人の代理人であります」


この質問は想定内だ。


「その依頼人とは、どのような人物でしょう?」

「それはお答えできません」


依頼人はオレだけどな。


「なるほど。

 では、記事の内容について訂正をお求めで?

 お相手の素性を伏せて欲しいとか。」

「いえ、掲載を取り下げて欲しいということです」


さぁどう出る?


「本件は既に掲載が決まっておりまして、

 取り下げるのは難しい状況にあります」


どのネタを掲載するかは、ギリギリまで

差し替えられることは把握してる。


「写真の男子高校生は単なる友人です。

 如何わしいことはありません。

 そんなものを載せても読者は意味ないでしょう」

「そうですかね?

 高校生の男女が2人きりでレストランに

 行ってるのですよ。

 彼らはもう大人です。

 最近の若者が食事後、何をしているのか

 世間は興味あると思いますよ」


「2人とも未成年です。

 しかも男性の方は一般人ですよ。

 写真を載せるのは如何なものか」

「目に黒線を入れますし、個人情報は載せません

 こちらはプロです。ご安心を」


問答しても永久に平行線だ。

編集長が求めてるのは知っている。

直球で攻めるか。


「では2000万で記事を買い取らせてください。

 もちろん、編集長の個人口座に直接振り込みます。

 なんとかなりませんか?」


さぁどうするよ。

直接振り込まれるんだぜ。


「掲載中止となると、多方面に根回しが

 必要となります。

 最低でも5は欲しいところです」


5ってなんだ?5千万ってことか?

足元を見やがって。

もっと小さな額を提示してれよかった。

オレのバッグに金持ちがいると踏んだのだろう。


金額的な問題はない。

だが、一度支払えば何度もゆすられる可能性はある。

きっとカメラマンを張り付けさせて

永遠に金を搾り取りに来そうだ。


失敗した。過去に学んだではないか。

編集部に何を言っても無駄なのだと。

出版社本体に圧力を掛けるのがベスト。


オレは立ち上がる。


「どうされました?」

「この話し、無かったことにしましょう」


「市川さん、よろしいのですか?

 来週、掲載されますよ」


それで脅してるつもりか?

こんな奴に美味しい思いをさせてたまるか。


「できれば取り下げて頂きたいが

 ご自由にどうぞ」


オレは出口へと歩き出す。

編集長は座ったまま、オレを目で追う。


「市川さん?交渉の余地がありますけど」


2000万でOKしなかったことを後悔しろ。


「私の権限でなんとかなるかもですよ」


ドアを開け、無言で応接室を後にするのであった。


外に出て夜風に当たりながら考える。

何しに来たんだオレは。

アホか。

社長に圧力を掛けるべきであった。


オレはハルキの携帯に電源を入れる。

岩井さんから何度も電話が来ているのを確認。


あと、篠崎さんからもLineが来てる。

曲が出来たようだ。仕事が早い。

bluetoothがない。

どんな感じの曲か聴いてみたい。


<<ここ、どこ?>>


おぃ!脅かすなよ。

幽霊のノノンが突然現れた。


<<ハルじゃない。おじさんだ>>

「おじさんで悪いか」


<<今日はホテルに泊まるの?>>

「いや、ハルキになって寮に戻る」


♪キキィー


突然、オレの真横にワンボックスカーが停止。

何事?


スライドドアが開き。

いかつい野郎2人が車から飛び出す。

そしてオレと目が合う。


「合わせたい人がいる。

 一緒に車に乗ってもらえねぇか?」


<<何よ、あんた達!キモ>>


ノノンが幽霊でよかった。

刺されてるぞ。


「おたくらが何者か教えろ!」


野郎1はオレに小型ナイフをちらつかせる。


「おとなしく車に乗ってくれれば

 痛い思いをしなくて済む」


オレはニヤついてしまった。


「何がおかしい。

 恐怖でおかしくなったか」


ドラマで見たような光景が繰り広げられたからだ。

リアルに起こるんだな。


「待てこのやろう!」


オレは手に握る携帯を見ながら逃げだす。

走りながらビデオON、ライトON。

そして振り向き、追って来る奴らを撮影する。


「何しやがる」


野郎1はライトが眩しいらしく、

自身の腕で光を遮る。


「兄貴!こいつ撮影してやがる」


携帯を奪っても無駄だぜ。

データはクラウド上だ。


♪キュルル


車が急発進する。オレに向かって来てる。

やばい、車の中にまだ居るのか。

オレは前へ前へと必死に走る。


ここはビルとビルに(はさ)まれた1本道。

中央車線が無く道幅が狭い。

左右に逃げる場所などない。


オレは、真後ろを撮影しながら

ひたすら走った。

だがオヤジの足は遅く、体力もない。


<<博士。車。危なっ!>>


♪ドン


・・・

・・・

・・・


♪ニュースです。

 本日21時ごろ、身元不明の50代とみられる

 男性が路上で倒れてるところを発見。

 警察が駆けつけた頃には、心肺は停止しており

 死亡が確認されたそうです。

 現場には車に引かれた形跡があり、

 引き逃げ事件として調査を進める方針のようです。

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