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(110) 篠崎さんを復活させます②

◇◇◇ スタジオ ◇◇◇

時刻は朝7時半。


カイ(ちち)に依頼した仕事の返答がない。

1日待ってくれとの事だが音沙汰なしだ。

悩んでいるのだろうか。それとも忘れてる?


もし、断られたらどうする?

策はあるのか。

大体、仕事を受けたところで、

カイが退学を取り消さない可能性もある。

岩井さんと同じように無理に引き留める

つもりはない。

それは無責任な偽善なのだから。

お金の問題で退学せざるを得ないのであれば

その手助けをしたいだけ。

とにかく、カイ父の返答を待つとしよう。


そんなことが頭を過りながら

渋谷の音楽スタジオへと入店した。

ここはロックバンドが練習に使う場所。


アイミーと篠崎さんには、Lineで伝えてある。

篠崎さんとは駅で待ち合わせしていたが

急遽遅れるとのことで、オレだけ先に

スタジオ入りしたのである。


まさか篠崎さん、このまま来なかったりして。

十分ありえる。

昨日のLine断り辛かったもんな。

まぁ、来なかったら、その時考えよう。


ここでの目的は2つ。

アイミーが作った曲をフォークギター以外で

演奏したらどう聞こえるか知りたいため。

フォークギターが悪い訳ではない。

オレには同じ曲に聞こえてしまったんでね。


アイミーの曲がポップスやロック調に

変わればどのような曲になるか

確かめたいというのが狙いだ。

それができるのは篠崎さんしかいない。

アイミーもオレの熱意に同意してくれた。


そして目的のもう一つは、篠崎さんに

ピアノの演奏をさせること。

ピアノが楽しいことを思い出せたい、それだけだ。


来なかったらアイミーの曲をLineで

送り付けよう。

昨日、そうすればよかったんだ。

失敗した。


<<こんな場所があるんだね>>

「バンドが練習する場所だ。

 自宅で演奏したら近所迷惑だろ?」


ノノンは幽霊として参加してる。

今日は日曜日。特に予定がなく暇だという。

乃々(ののか)で来られると話がややっこしく

なるので幽霊で参加して頂いたという流れだ。


<<この電子ピアノどうしたの?>>

「レンタルした。

 色々な音色が出るらしいよ」


<<聞きたい。音出してみてよ>>

「使い方が分からん。

 篠崎さんが来るまで待てって」


その時である。


♪ガチャ


分厚い扉が開く音が耳に飛び込む。


「こんにちわ。おはようかな」


篠崎さんだ!

来た、来てくれた。


何だか嬉しい。

まだ何もしてないけど、もう満足です。


「篠崎さん、ナイスタイミング。

 これの使い方わかります?」


オレは、レンタルキーボードが使えるか、

篠崎さんに尋ねてみる。

電源は差した。使えるハズだ。

ボタンが多すぎて分からん。


♪ ♪~♪~


<<やっぱ上手いよ。

 どう練習したら指があんなに動かせるの?>>


篠崎さんは、軽く弾いて見せてくれたのだ。

どれが電源かも分からなかったのに流石だな。


「色々な音色が出せるみたいなんだけど」


♪ ♪~♪~


篠崎さんはストリングスなど、

いろいろと音源を変え弾いてくれた。


「バックでドラムの自動演奏ができると聞いてます」


♪♪~♪~


プリセットドラムのリズムに合わせて

適当に曲を弾いてくれてる。


♪パチパチパチ(ノノンの拍手)


<<すごーい>>


「篠崎さんは天才です」

「大げさよ。

 こういうの使ったことある人なら

 これくらい出来ます」


ふふふ、迷える子猫ちゃん。

まんまとオレの策略に引っかかりましたね。

オレはキーボードの使い方を知らないふりを

して鍵盤に触らせたのだよ。

ハハハ。


「みなさん。早いですね」


おっと、ここで主役の登場だ。

20分も早く来てくれた。

みんな、やる気マンマンで嬉しい。


「初めまして篠崎です」


篠崎さんがアイミーに挨拶をする。

この2人には仲良くなってもらいたい。


「今日、お手伝いしてくれる方です」


オレもフォローする。


北篠(ほうじょう)です。

 今日は、よろしくお願いします」


<<ノノンです。天使してます>>


つっこまないぞ。


「本当に細倉くんと知り合いだったんだ」


篠崎さんは実在するアイドルを見て

感動してくてるのが伝わる。


「そうですよ。ハルキとはお友達です」


よかった。

ギャグでも友達でないと言われたら立場なかったぁ。


オレはアイミーにLineで事前に篠崎さんの

演奏技術やコンクールでのこと。

そしてピアノを諦めようとしてることの

全てを伝えてある。

その篠崎さんの心情を理解した上で

貴重な時間を割いて来てくれたのだ。

初対面だというのに。

良い人だ。


しかも、自前のフォークギター抱えて来てくれた。

ありがたい。


この御恩は必ず返します。

『やられたらやり返す。倍返しだ。』


「時間がもったいないので始めましょうか」


段取りは決めている。

まずはアイミーが自作曲をフォークギターで

歌ってもらい、

篠崎さんに聞いてもらう。

それを篠崎さんにアレンジするという流れ。


♪パチパチパチ(ノノンの拍手)


<<いい曲>>


あぁ。

やはり、弾き語りのアイミーは新鮮だ。

アイミーによる1曲目の演奏が終わる。


♪パチパチパチ


「ジャジーでノリが良いですね。

 ブレス位置が変わってるから

 聞いてて面白いです」


ジャジーってなに?


「どう、覚えられました?」

「大丈夫です」


流石は篠崎さん。

一度聞いただけで把握できる能力は凄すぎる。


♪♪~♪~


「こんな感じです」


いきなりかよ。サビ部分を弾いてくれた。

すごくいい。イメージが湧く。

アイミーの歌で早く聞きたい。


「では、篠崎さんは演奏してアイミーは歌で

 1回やってみましょう?」


♪ ♪~♪~


同じ曲でもフォークギターとピアノでは

雰囲気が違う。

別の曲だ。

アイミーには申し訳ないが良くなってる。


♪パチパチパチ


オレは盛大な拍手で楽曲の感想をアピールする。

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