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(103) 乃々佳も負けてられません

◇◇◇ 校内 ◇◇◇

今朝のランニングの後、朝食を取るのに

ノノンは自室へと戻った。

幽霊のノノンはいろいろと使い道がありそうだ。

確かに男子寮に入ってこれるのは便利。


って、スマホ持てばいいだけだろう。


とりあえず、毎朝起こしに来てもらうか。


◇◇◇ 超常現象研究部 ◇◇◇

時刻は9時40分。


オレは、金沢さんの部室前で立っている。

ネームプレートを見て少し動揺する。

そうそう、そんな部活名だった。

なつかしい。

10時集合なのに早く着過ぎてしまった。

どんだけ楽しみなんだオレは。


ノノンも補習授業で登校しているが一緒でない。

授業開始が8時40分だから。

補習の目的は7月休んだ分をチャラにするため。

授業は午前中までなので、終わり次第

ノノンを部のみんなに紹介するつもりでいる。

誰を紹介するかは伝えていない。


どうせなら岩井さんと篠崎さんも

声掛ければよかった。

あの2人、大勢集まるところ苦手だったっけか。


さぁ、部室に入りますか。


♪コンコン


「こんにちわ」

「ハル、(おせ)ぇよ」


カイからの返答。既に来ていた。

あれ、金沢さんも堀北さんも居る。

なんだよ。4人、全員そろってるじゃん。

みんなも早く会いたかったかのか?

同じ気持ちだったら嬉しい。


「そのギャグ面白くないぞ」

「ギャグじゃねぇし。ハルが最後だし」


「細倉くん1人なの?」


あれれ!?

堀北さん。

紹介する子、そんなに気になります?

彼女だったらヤダなぁとか、思ってくれてたら嬉しい。


オレはまだ、堀北さんを(あきら)めてないのか。

彼女はJKだぞ。援助交際だろ。

そうなのか?訳わからん。


「紹介したい人って二次元だろ?」


カイの突っ込みが早くも炸裂。


頭悪(あたまわる)ぅ。アニメキャラ紹介するのに

 わざわざ前日から宣言するか?」


あぁこの感だ。やはりこの場所は居心地いい。

この関係を壊したくない。

あれだけ人とのコミュニケーションを

避けてたオレが、どうしてしまったんだ。

人は変わるもんだな。


「ヒントとして、その人は既にこの学校に居ます。

 本館で補習授業を受けてて4限が終わったら。

 ここへ連れて来るよ。それまでお楽しみ」


「そうなの?誰だろう?」


部長の金沢さんが真剣に悩んでる。

いくら考えても無駄だけど。


「不良グループの番長か?」

「うちの学校に不良は居ねぇだろう!」


オレとカイのやり取りを聞いて女子2人がクスクスと笑う。


「わたし、分かっちゃったかも」


お!さすが堀北さん。

ノノンのこと、気に掛けてくれてたもんな。

ありがとう。

堀北さんのおかげで記憶を全て取り戻せたと

言っても過言ではない。


「女?男?それだけでも教えろよ」

「だから、お楽しみにしてろって」


「そこまで秘密にされると気になる。

 みんなで教室見に行こうぜ」

「授業中だからやめろ!」


見に行ってもいいが先生に怒られるぞ。

しかし、金沢さんが学校に来てくれて嬉しい。

まだ人目が怖いだろうに。

元気そうで安心した。


このメンバーなら安心だろう。

夏休み中に部会を何度か繰り返せば以前

のように戻れるかも。


「ハルも来たことだし。

 堀北さん!

 報告したいことがあるんだよね?

 ではどうぞ」


カイが仕切り出した。

はいそうですかと話し出せるかい。


「カイが仕切るな。

 そんなふりで話し出せるかよ!」

「細倉くんありがとう。

 皆さんにお伝えしたいことがあります。

 実は一昨日、大学病院で手術しました」


カイと金沢さんは驚きはしたが、

リアクションが弱くて残念。

オーバーアクションしなくてよかった。

もうちょっとで浮くところだった。


堀北さんは座ったまま、腕を(かか)

手首の包帯を見せる。

そして、それついて話し始めるのであった。


去年から怪我をしてたこと。

先日の東京都大会で、無理したために

怪我が悪化して日常生活に支障をきたす

ほどの大怪我になったこと。

対処方法が高額な手術しかなく、

成功する見込みが50%であったこと。

それに伴い、引退を考えていたことを

告げてくれた。


金沢さんとカイは怪我してることは

把握してたが、まさかそこまで悪い状況

だったとは知らなかったらしい。

そりゃそうだな。

堀北さんは相談しないし、いつも笑顔で

そんな素振りを微塵も感じさせないのだら。


話しは続き、通っていた病院にて

大学病院への紹介状をもらい、

その病院へ行ってから昨日の退院までを

こと細かく説明したのである。


全てを知るオレは、わざとらしくリアクションする。


「ラッキーだったじゃないですか。

 宝くじ当たるよりも凄いよ」

「一生分の幸運を使っちゃった」


カイも続く。


「もう痛くないの?」

「違和感はあるけど。

 痛みはないから治ってると思う」


「すごい。ほんと奇跡だね」


金沢さんも喜んでくれた。


「ドキュメンタリーの本を出せば?

 きっと映画化されるよ」


それ、やめて。

ニュースにされたら偽の手術だってバレる。


「お金、儲かるよ」


そっちが目的かよ。


なぜ堀北さんは手術の話をしたのだろう。

今まで自分の事は話さなかったのに。

奇跡の手術だったから?

それとも金沢さんを外に出すため?


おそらく後者だろう。

だって、堀北さんは金沢さんに沢山

話し掛けてる。

外は楽しいんだよ。仲間がいるんだよ。

って、言ってるようにしか思えない。


堀北さんは良い子だなぁ。


♪キーンコーンカーンコーン


4時限目が終わった。

さて呼びに行きますか。

オレは立ち上がる。


「ちょっと迎えに行ってくる」


そう言って、オレは廊下へ飛び出し、

急ぎ足でノノンの居る教室へと向かう。


・・・


ノノンが授業を受けてた

教室へと到着したのはいいが。

廊下から教室を覗くと1人しかいない。

後ろ姿だが茶髪女子。

乃々(ののか)は黒髪である。


補習は3人居ると聞いている。

その1人だろう。


どこ行った?トイレ?

その子に聞いてみるか。


♪ガラガラ


開けた扉の音で茶髪の子が振り向く。


・・・


乃々佳だ。

その女子は乃々佳本人だったのだ。


「髪染めたんか?」

「うん、昨日の夜」


しかもポニーテールって。


「どういう心境?」

「だって、金沢さんも堀北さんも

 可愛いじゃない!?

 わたしだって負けられない」


お前は、何と戦ってるんだよ。

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