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(101) 重大なお知らせがあります

◇◇◇ とあるレストラン ◇◇◇


個人経営の小さなフレンチ店。

オレは岩井さんに誘われ訪れた。


店内はオレら以外、お客はいない。

貸し切りのような感覚である。

そして、岩井さんと2人きり。


思い返せば考えられない光景だろう。

ノノンが幽霊となって現れてから

オレの学園生活は劇的に変化したと言っていい。


岩井さんとの食事。緊張はしていない。

むしろこの状況を楽しんでいる。

コンクールの時にも感じたが、

岩井さんとの2人きりは心地がいい。

お互いボッチ体質だからだろうか。


だが、今のオレは公園の時とは感覚が異なってる。

中身がオッサンであるのを思い出してしまったから。

心に余裕が生まれたというか、

ちょっとやそっとでは動じない。

今も美人JKとのお食事でウキウキ気分という心境だ。


店主がグラスに水を灌ぐ。

それを眺めてると、やっと一息つけたと感じられる。


「いろいろな事があり過ぎて

 どこから話せそう」


これは正直な感想だ。

ここ数日は、怒濤(どとう)の毎日で記憶も混乱してる。

岩井さんからするとハルキに会うのは

久しぶりだろうけど、ずっとそばに居たんだぜ。

黒服乱闘事件から片付けるか。


「病院では怖い思いをさせちゃったね。

 ごめん。

 あの時はオレも殺されると思ってた。

 これは本当だよ」


「ほんとうだよ。

 私も病院出たときはもう二度と

 ハルキに会えないって思ってた」

「オレもだよ。あの状況で岩井さんを

 そのまま解放するとは思えなかった。

 自分も何かされるじゃないかって。

 正直、全員死ぬなって諦めてはいた」


「ハルキは悪くないよ」

「いや。

 オレが暴走しなければ平穏に済んでた。

 きっと」


「あの状況なら、誰しも最悪な事態を

 想定して当然よ。

 それよりも危険を(かえり)みず乃々(ののか)さんを

 助けようとしたハルキには尊敬します」

「オレはそんな善人じゃない」

「病院の後、どこで何してたの?」


ついに来たか。どう誤魔化そう。


「眠らされてて、気付いたら

 山中の別荘にいた」


そこは、1階建ての大きな別荘で、

乃々佳も一緒に連れて来られてた。

別荘にはオレらの他にはメイドが2人だけ。

逃げ出そうと思えばいつでも逃げ出せたん

だけど、周囲が森林に囲まれてて、

どっちの方角に町があるのか

分からない所だったんだ。

携帯も財布もない。

乃々佳もいることだし、

1人で逃げ出すこともできず、

結果3日間も滞在することとなった。


と説明した。

良い感じの話しになった。

やはりオレはデタラメをいう天才だ。

今日もキレがある。


「そこでは何をしてたの?」

「何するにも自由。

 しばらく滞在してくれと言われただけ。

 一日中ぼーっとしてた」


ちょっと嘘くさいか。

読書してたくらいの方がよかったかも。


「全部嘘よね」


やっぱり!?無理ありますよね。

大体、オレと乃々佳は何者だって話しになる。


「ごめん。嘘です。

 オレには秘密があります。

 今は言えない。ほんとゴメン。

 これだけは信じて欲しい。

 反社とか犯罪組織の者ではない。

 また、そう言う連中に巻き込まれてもない。

 ということだけはお伝えしておきたい」

「どうして話せないの?

 私、誰にも言わないよ」


あぁ、分かってる。

だけど絶対に信じない。


「事情があるんだ」

「いつかは話してくれるの?」


「あぁ、時期が来たら必ず打ち明けます。

 それまで待ってほしい」

「それを聞けば、病院でのことも

 説明が付くのね。わかりました。

 その日が来るまで待ってます」


納得してくれるのかよ。ラッキー!


「あと、乃々佳が目を覚ました

 ことをお伝えしておきます。

 病気は完全に治りました。

 元気なので心配はいりません。

 夏休み明けには学校に来ます」

「乃々佳さんはハルキの秘密を知ってるの?」


さぁ、困った。

状況からしてオレとノノンは同族だ。

誤魔化してもバレる。


「あぁ、同じ故郷から来たので

 オレの全てを知っている。

 乃々佳もまた同じ秘密を持っている」

「2人は恋人なの?」


病院では否定したけど、疑るわな。


「彼女ではない。弟子って感じ!?」

「何それ」


岩井さんはクスクスと笑う。


「信じて欲しい。

 幼馴染だけど付き合ってはない」

「わかりました。信じます」


真剣な会話は好きではない。

一瞬でも(なご)やかになってホットした。


会話している合間に料理が次々と

運ばれて来る。

食事をしながら会話は続く。


「ここで大切なお知らせがあります」


岩井さんから意味深な発言が飛び出した。

ついに来たぁ。

乃々佳が彼女かどうかの確認からの流れだ。

オレに告白する気か?


「それ、Youtuberみたいだね」


面白の方へ発言してしまった。

さぁ、どうする。OKするか。

だけど、今や岩井さんは芸能人だ。

彼氏が居るとバレたらファンは離れるぞ。


「わたし」


ちょっと待って!

まだオレの気持ちが定まってない。


「学校退学します」


え!


「どうして?」

「だってバイト禁止でしょ?」


そんなことで学校辞めるき?


「芸能活動はバイトじゃないだろ?」

「今までだってコスプレのバイトで

 イベントに出てたし。

 SNSで大騒ぎにもなって

 学校にはいられないよ」


確かに、今までの活動が学校で問題になる

可能性は高い。

詐欺事件や芸能活動がニュースで筒抜けだ。

言い逃れできない。


教室でボッチだった子がクラスで注目の的となる。

人気者になるか、さらに孤立するかは分からん。


そもそも学校と芸能活動の両立は難しい。

ファンが学校に集まってくる可能性もある。

言い出したら切が無い。


聞いてて説得の余地がない。

オレに退学を止めて欲しいのかと

頭を過ったものの、どうやら既に結論が

固まってて強い意志を感じた。


ここでオレが無理やり引き留めたとしても

満足するのはオレ自信。

岩井さんにとっては苦痛を続けさせる

だけでしかない。

学校との両立で芸能活動のチャンスを奪う

可能性だってある。


ここでオレの取るべき選択は。


「いっしょに卒業できないのは残念だけど

 退学後も応援するよ」

「嬉しい」

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