(010) 弁明させてください②
なぜオレが取り憑かれたんだ!?
逆に聞きたいよ。
ノノン?教えてくれ!
寝てるし。
この時点でオレに焦りはない。
質問が次々に来るということは
信じようとしてくれると確信したからだ。
MEMO<確かに。どうして自分なのだろう。
幽霊に聞きたい。
堀北さんを助けたから?
逆恨みかなぁ。
これでどうだ。
オレも被害者 面すればいい。
しかし、この時代に手書きとは。
携帯のDMでよくない?
Lineアカウント、交換しません?
返信はノートの切れ端ではなく、
別の教科のノートの後方を使うことにした。
そのまま堀北さんにノートを手渡す。
MEMO>前々から伝えたかったことって何?
しまった!すっかり忘れてたわ。
抱き付く前に告白しようとしてたやつね。
『好きです』だなんて、今更言いたくねぇ。
考えろ。
MEMO<『ありがとう』と伝えたかった。
面と向かって言い辛かったけど
文書だと書ける。
3年生になるまで学校が嫌いだった。
休み時間は苦痛で苦痛で。
でも堀北さんが話し掛けてくれて
学校来るのが楽しくなってたんだ。
だから感謝してます。
と返答してみた。ちょっと盛り過ぎたか?
確かに学校は嫌いだけど、そこまでではない。
2年間も苦痛だったなら学校来ねぇよ普通。
自分の返答につっこんでどうする。
別の言い訳にした方がよかったか。
MEMO>学校が嫌いだったんだ。
知らなかった。
そうでなくなったのならよかった。
私は学校好きだよ。
おぉ!
オレの解答はベスト・オブ・ザ・イヤーだった。
今年の流行語大賞ノミネートだな。
しかし、堀北さん?
あなた、オレの言葉信じすぎだよ。
純粋すぎ。
オレがトチ狂って告白してしまう訳だ。
魔性の女だな。
この後も、あの場所で何してただとか
いろいろと問いただされたが、
オレは面倒くさがらず誠心誠意で答え続けた。
メモのやり取りもノートの切れ端ではなく
オレのノートを直接渡して続けたのであった。
MEMO>お化けさんは近くにいるの?
ああ、いるとも。呑気にお昼寝中です。
MEMO<信じられないと思うけど、
オレの後ろに立ってる。
正確には抱き付かれてるんだけどね。
堀北さんは回答を見てか、
オレの背後をジロジロと見る。
オレは、ここ、ここ、と指を刺す。
誰が見てもギャグとしか思えん。
普通の感覚ならば信じないだろう。
堀北さん、幽霊は実在するんです。
信じてください。
MEMO>納得しました。全て信じます。
昨日、叩いたことごめんなさい。
あぁ~、謝らないでください。
罪悪感が増大して胸が苦しい。
だけど、めっちゃ嬉しい。
これでまた会話ができる。
何て寛大な人なのだろう。
堀北さん1人が信じてくれればいい。
そしたらクラスメイトはもう口出ししないはず。
第二関門突破成功。
♪キーンコン、カンコーン。
1時限目の授業が終了する。
朝は地獄に突き落とされ、
人生終わったと本気で落ち込んだが、
まさかこんなにも早くV字回復できるとは。
1時限目が英語でよかった。
2限目以降は選択科目となる。
科目毎のクラスとなってて移動する。
うちの学校は同じ学科でクラス分けされてない。
なのでクラスメイトだとしても授業する
教室は曜日や時間帯で異なるのだ。
クラスメイトが必ず顔を合わせるのは
朝昼夕くらいしかない。
2限目以降は堀北さんとはお別れとなる。
次に会う機会は昼休みと放課後のホームルーム。
だが昼休みは、お互い別々の場所で食事
してるので顔を合わせることはない。
放課後は直ぐジムへと向かってしまう。
結果、会話できるタイミングは、今日はない。
先ほどのやり取りは大きかった。
この後におよんで、今なら堀北さんと
ワンチャンあるかもと頭を過るも
今朝のような修羅場はもうコリゴリ。
そして、怖ぇ女子とも2時限目でサヨナラ。
こちらに関しては笑みしか浮かばない。
◇◇◇ 通学路 ◇◇◇
学校が終わり、オレは1人
寮へと向かって歩いてる。
友人のカイは部活だそうだ。
3年生でレギュラーでもないのに
引退する気がないらしい。
寮に帰っても暇だから部活に出るんだとさ。
後輩はウザがってるぞ。気付け!
今日はあっと言う間の1日だった。
感情が大波のように動かされた日である。
一歩間違えたらオレは社会的に抹殺され、
この地球上で生きる場所がなくなってたことだろう。
今は、気分が優れてる。
学校サボらなくてよかったとさえ思えてる。
ノノンはというと、宙に浮いたままオレと並走中。
ご機嫌のご様子。何が楽しいのだろうか。
どう考えても好かれてるとしか思えん。
こんなカワイイ幽霊なら、まぁ悪くはない。
首のあたりを抜けて行くそよ風が心地いい。
ノノンと2人での無言の帰り道。
悪くない。むしろ居心地がいい。
カップルってこんな感覚なのかなぁ。