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悪酔いの代償

※本編後の二人 アイリス視点に戻ります

「わあっ、ここがロドリアン公爵領……!」


 皇太子殿下が即位して忙しい日々を送っていたが、ようやく落ち着きを取り戻し、私はセピア様と公爵領にやって来た。


「あっ、公爵様だ!」

「公爵様だと⁉︎ みんな集まれ!」


 早速魔導士団の見学に来させてもらうと、魔導士たちが一斉に私たちを囲う。

 みんな目をキラキラと輝かせ、セピア様を慕っているのがすぐわかった。


「公爵様! そのお方が婚約者のアイリス様ですね!」

「ああ、そうだ。みんなに紹介する」


 大勢の前でセピア様に紹介され、少し恥ずかしかったけれど、魔導士たちは私に好意的で質問攻めにあった。

 主に馴れ初めについて聞きたがたり、話そうと思ったけれど、結局セピア様に制されてしまった。

 その後は訓練の様子を見て、夜は歓迎の意を込めてと宴が開かれた。

 その場ではセピア様の数々の伝説とやらを魔導士たちが教えてくれて、とても盛り上がった。

 ついついお酒を飲み過ぎてしまい──


 目が覚めると私はベッドで眠っていて、ズキズキと頭の痛みが襲った。

 見慣れない部屋に、ゆっくりと起き上がって不思議がっていると、昨日の記憶が蘇る。

 そうだ。私は公爵領に来ていて、魔導士たちと酒の場で盛り上り……うん、最後の方の記憶が全くない。


「いった……」


 もう一度寝ようかと思った時、ようやく隣でセピア様が眠っていることに気づいた。


「かっわいい……!」


 眠っている姿はどこかあどけなく、少年のように見える。

 セピア様の可愛い時と格好いい時のギャップが激しく、未だに慣れそうにない。

 しばらく寝顔を堪能していると、ふと自分の身体がやけに涼しいことに気づく。


「え……きゃあああ⁉︎」

「アイリス⁉︎ どうした!」

「み……見ないでください!」


 私の叫び声を聞いて目を覚ましたセピア様は、すぐに起き上がって声をかけてくれる。

 けれど今はそれどころではないのだ。

 私は布団で体を隠したけれど……なぜか、下着姿だった。

 どういうことだろう、これは一大事だ。

 もしかして私、昨日の夜……お酒の勢いでセピア様と……⁉︎

 セピア様は服を着ていたけれど、事後に着たのかもしれないし……本当にどうしよう全く記憶にない。


「あ……の、セピア様……昨日、私たちって……」


 恐る恐る尋ねると、セピア様が頬を赤く染める。

 照れる反応を見て、より現実味を帯びた。


「やっぱり……」

「ち、違う! 断じて手は出していない! 本当に君は昨日のことを覚えていないのか?」


 セピア様は顔を真っ赤にしながら否定する。

 どうやら勘違いらしい。


「ではどうして、私の格好が……」

「君をベッドに連れてきた時、暑いからと言って……突然脱ぎ始めたのだ」

「へ……」

「急いで止めたのだが、言葉では聞いてくれず……その、格好だったが、抱きしめてしまった。すまない」


 つまり、この格好だったり、セピア様が同じベッドで寝ていたのは全て……私のせい?


「も、申し訳ありません!」


 私の服がベッドの下に落ちていたことを確認し、慌てて拾おうとしたけれど、焦り過ぎてバランスを崩し、落ちそうになる。


「あっぶない……!」


 慌ててセピア様が後ろから受け止めてくれたけれど、密着状態になってしまい、鼓動が速まる。

 セピア様に触れられて固まっていると、そのタイミングで部屋にスカーレットがやって来た。


「……っ、お取り込み中、失礼いたしました!」

「ち、ちがっ……」


 スカーレットは私の格好や今の状況を見て勘違いし、顔を真っ赤にしながらその場を後にしてしまう。

 絶対に今から始まると思っていた様子だった。


「す、スカーレットに勘違いを……」

「そうだな」


 誤解を解かないと! と思ったけれど、なぜか一向にセピア様が私を離してくれない。


「あの、セピア様……? そろそろ、手を……」

「……ふと思ったんだが、私だけが我慢を強いられている気がするんだ」

「……え」

「君の悪酔いに振り回されてばかりで、少し納得がいかない。そう思わないか?」


 先程までの焦って照れていたセピア様は何処へやら、どこか拗ねている様子で可愛い……ではなく。

 いったい何を求めているのだろう。


「それは、本当に申し訳なく……」

「アイリス、あとで覚えておくといい。今度は君が我慢する番だ」

「……へ、それはどういう」


 その時、ようやくセピア様は私を解放し、先にベッドから下りてしまう。

 私の服を拾い、渡してくれたけれど……。


「君はキス一つですぐに照れるからな。羞恥心とやらに耐えるといい」


 満面の笑みで言われ、それが逆に怖くなる。

 あとで私は羞恥心に耐えるようなことをされる……って、いったい何をされるのだろうか。


「ではスカーレットに誤解を解きにいってくる」

「待ってくださいセピア様……! 一旦話をしましょう!」

「スカーレットにここへ来るよう伝えるから、身なりを整えてもらうといい。それから食事にしよう」

「む、無視ですか⁉︎ 私の話は無視なのですか⁉︎」

「その時にいくらでも聞くから安心するといい」


 だからその笑顔の圧が怖いのですが⁉︎ 思ったけれど、セピア様は折れてくれそうになかった。

 そうして私は、二度とお酒を飲み過ぎないと心に誓った。


これにてお堅い公爵様、完結になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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