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最初で最後の、5年前

作者: 猫じゃらし


 タイトルに、あなたは何を想像しますか?

 優しい出来事? 悲しい出来事? 楽しい出来事? 怒りたくなる出来事?


 いろいろ想像できますね。

 けれど一つ断言できるのは、それっきりだということです。5年前がはじまりで、終わりです。


 では、私にとってそれがなんなのか。



 私の子供と私の母が対面した唯一が、それなのです。



 2019年の冬にコロナウイルスが他国で確認され、2020年の冬には日本でも確認されました。


 子供は2019年の春生まれ。

 里帰り出産をして、床上げをしてから飛行機で他県の自宅に帰ってきました。


 それからは育児に追われ、実家が飛行機の距離なこともあり次に会えるのは一歳になってからかな、なんて考えていました。


 しかし、コロナが大流行。

 県内でさえ市外への外出は厳しく、未知のコロナから子供を守らなければと引きこもって過ごすことが多くなりました。


 ワクチンの接種が始まり、当初のような危機的状況を脱してからも念には念を、予防対策を怠らず実家へ帰ることは控えてきました。

 帰省による家族感染が一番怖い、というのを周囲の話を聞いて感じていたからです。



 ずーっとずっと、我慢してきました。



 そして、子供はもう四歳。

 私の母が抱っこした赤ちゃんは、もういません。

 おむつは取れてるし、ごはんはたくさん食べるし、おしゃべりは達者だし、走って跳ねて大騒ぎの幼児です。


 母の知る赤ちゃんは、もういないんです。



 来年の夏、私は子供を連れて実家に帰ります。

 その時には5歳になっています。立派な立派な年長さんです。

 

 母はびっくりするでしょう。

 もじもじ恥ずかしがる孫と手を繋いで歩いて、おしゃべりして、おやつをおねだりされて、抱っこして。


 空いてしまった5年を一気に埋めて、戸惑いながらも幸せに笑うでしょう。

 母にとって素敵な時間になるように、子供にとっても素敵な思い出になってほしい。


 遠くにおばあちゃんがいるんだよって、また会いたいなって、思ってくれたら嬉しい。

 



 お母さん、来年帰るよ。

 大きくなった子供を、いっぱい抱っこしてあげてね。



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