全日本第2戦 開幕
『さァ~、ツインリンクもてぎから一気に大分県に舞台を移しての全日本第2戦、解説は元、全日本チャンピオンの黒沢さんをお迎えして実況は私、宮部でお送りいたします。さァ、黒沢さん間もなく始まりますねェ。いかがですか?』と宮部が言った。『そうですねえ、やっぱりカギとなる選手は海原選手でしょう。彼がいい状態で走れば初コースであっても、ワークス4強と、いい勝負をすると思いますよ。なにせ、前回がとてもいい勝負だった、ものですからねェ。』と解説の黒沢が言った。『海原、初コースとか、初マシーンとか、初と付くもの気にしませんからねェ』と実況アナウンサーの宮部が言った。『そうなんですよ、大分に金曜日乗り込んで今日、土曜日の予選ですからねぇ、本当に初コースを今日一日走ってどれだけの速さを見せられるか、コースをどのように攻略していくのかも楽しみの一つですね。私が初コース走ったら予選全然ダメでしたでしょうけどね』と黒沢が言った。『いやいや、そんなことはないでしょうけど、他にはどのような選手が黒沢さんから見て気になっていますか?』とアナウンサーの宮部が言った。『やはり、4強ワークス勢の田中を筆頭に斎藤、石神、山崎と言った選手と、今回からカワサキのワークスドライバーとなった渡辺一樹選手が、とっても気になります。特にカワサキの渡辺選手ですが自身の出身地でもある、このオートポリスサーキットではメチャクチャ速いですからねェ、そういった意味では一番気になりますかね。』と黒沢が言った。『その、渡辺一樹選手、ここまでのタイムを取ってみても断トツの1分48秒台で走っていますもんね。』とアナウンサーの宮部が言った。『そうなんですよ、でも、当の本人も言ってますがまだ、本気じゃないって言ってますから、彼は本気になると46秒台で走る事も出来ると、豪語しているらしいですよ。』と黒沢が言った。 『いよいよ46秒台という未知の世界の戦いが始まる訳ですね。』と実況アナウンサーの宮部が言った。(46秒台の戦いかァ・・・今の俺は49秒の後半なんですけど)と一樹は自信なさげに呟いた。『タイムアタックの時間になって各車それぞれタイムアタックを開始しておりますが、おもだった選手の中、カワサキワークスを駆る渡辺一樹選手が早々と1分47秒463を出して余裕のピットインをしております。ホンダの田中、今年はゼッケン1の去年のチャンピオンですが1分47秒583を出して2番手をキープ、オオットォ!ここで・・ヤマハの斎藤が1分46秒805を出してトップに出たァ!そして同じヤマハの千葉選手も1分46秒954だァここにきて続々と46秒台が出ています。ん~ッ!!ヤマハ勢、速いぞォ!ともに46秒台だァ!!』と実況アナウンサーの宮部が言った。「チッ!ヤマハ速いんじゃねェ~もう一回タイムアタックしなきゃなんねえ~よ。」と渡辺がモニターを見ながら言った。「まッ!少し休んで、もう少し状況見てからにしようや」とメカニックに言われて渋々とチェアに座る渡辺だった。『本日の暫定ポールは今の所、マハの斎藤、そして同じくヤマハの千葉が2位、カワサキの渡辺が3番手をキープしております。』とアナウンサーの宮部が言った。『やはり速いのはワークスと言った所か?ワークス勢が残り40分を切った所で明日の準決勝でのポールポジションが有力候補ですかね?黒沢さん?』と続けて黒沢に聞いた。「う~ッ!!もう限界。!俺、チョッと行って来るわ。」と言って渡辺がタイムアタックを開始した。それと前後して一樹もピットアウトした。渡辺の後ろに付く一樹。(ふふん。。来たか天才君。そろそろ、本気にならなきゃいけないぞ俺たち・・。)そう呟いて渡辺はお構いなしにフルスロットルを当てた。今までとは明らかに違う挙動を起こして渡辺のバイクは吹っ飛んで行く!一樹の視界から瞬く間に消え去った。(ふェッ~!!バカ速ッ!!)と一樹は心の中で思った。(でも、俺は残り5分で決める。それまでは、アイボーを信じてコースレイアウトを完全に頭に叩き込む)と一樹は思った。『どひゃァッ!来ました,来ましたヨ。黒沢さん!渡辺選手。なんと1分46秒259断トツのトップタイムを叩き出しましたァ!!』とアナウンサーの宮部が言った。『本当に渡辺選手オートポリスサーキット速いですねェ~、カワサキ勢で孤軍奮闘してますよね。』と黒沢が言った。『さァ、明日の暫定ポジションの結果が決まるまで、後残り15分を切った。現在の上位者は一位はカワサキレーシングの渡辺一樹選手、タイムは1分46秒259、2番手ヤマハの斎藤1分46秒805三番手同じくヤマハの千葉、タイムは1分46秒954(さァて、そろそろ本気モードで行ってみっかァ!!相棒!)と自分に言い聞かせながらストレートでフルスロットルを入れた。明らかに今までとは違う速さに周囲の注目が一樹に集まった。『今までとは完全に違うストレートのエンジン音でした。黒沢さん、海原選手タイムアップ狙っているんでしょうか。?』と宮部アナが聞いた。『時間的にも、そろそろアタックするでしょうね。』と黒沢が言った。『さァ、期待の新人海原選手、恐らく最後のタイムアタックになるでしょう。』とアナウンサーの宮部が言った。『何位に付けるタイムを出すのか?注目です』と宮部が続けて言った。注目の海原選手、メインストレートをクリアーして第一コーナー・・・ぶひゃァッ!!例のズリズリドリフトですッ!!怖いのなんのって!・・・すごい、タイムで第一ヘアピンに向かいます。今までで一番速いタイムでクリアーしていきます。例のごとくノーブレーキでバイクを倒してヘアピンに入って、そのまま第二ヘアピンに向かう。・・速い!!海原・・断トツのトップタイムで周回を重ねていくッ!何秒がでるのか?・・・とッ・・あれ?ッ!第二ヘアピン立ち上がりで海原・・・スローダウンしてます。アクシデントがあったのか?そのまま、スロー走行でピットインします。うわァ~残念ッ!!物凄いタイムを期待してしまいましたが、惜しくもタイムアタックはできませんでした。黒沢さん、どうしたんでしょうか?』とアナウンサーの宮部が言った。『ん~ん!何とも言えませんがマシントラブルでしょうね、電気系統か燃料系に何か不具合あったんでしょう。セミワークスには往々にしてあるんですよねェ~こういうトラブルが・・』と黒沢が言った。結局この日のタイムトライアルでは前述のとおりワークス勢が1位から5位までを占めて一樹は38台中36位となった。『ん~ッ!!黒沢さん、結果、渡辺がポールで期待の新人海原は36番手となり、大きく出遅れましたね。』と宮部が言った。『でも、海原のチームはそれほどガッカリはしていないんじゃァないですかね?明日の土曜日少しでもポジション上げておけば日曜日の決勝では、結構いい、バトルが出来ると思っているんじゃァないですかね?なにせ、前に46台抜きって言うのがありましたから…ファンに取ってはたまらないシチュエーションではないですかね?』と黒沢が言った。「2番と4番のピストンリングが破損した為だ。今から全オーバーホールしなきゃ、ならん。ただ、すっかり組み上げても問題があって、ピット内では低速の馴らしは運転は可能だが、中速と、高速の馴らし運転はサーキットで行うしかない。明日のレースで馴らし運転をしなきゃァならん。そうなると、明日のレースは捨てなきゃならんがどうする?一樹。以前のエンジンと組み替えるか?それとも、明日のレース捨ててでも今のエンジンを使うか?」とヘッドが一樹に聞いた。「もちろん、最後の最後まで今のままで頑張ります。ですから、RC213Vを復活させて下さい。明日のレースは捨てます。」とヘッドにお願いをした、一樹だった。「わかった。よし、ヤス。エンジンを今からフルオーバーホールするぞ。皆も手を貸してくれ」と言うヘッドがいた。明けて土曜日、快晴のオートポリスサーキット。「36番手だと、なんかとっても気楽なんすけど・・・。」と一樹がコース上でグリットにつきながら言った。「だな、何かケツの方からのスタートってのんびりできるな・・そして、今回は全速で走れないしな、慣らしの合図はサインボードで指摘するから良く見ておけよ。最初は低速で走ってくれ。ピットでも馴らしは、低速で少しやったけど、決して全速は使うなよ。あくまでも低速1周で、中速で5週その後全開走行する。何台に抜かれても熱くなるなよ。あくまでここは、慣らし運転だからな・・・。」とヤストモが一樹に言った。「わかりました。」と一樹が答えた。『さァ、まもなく、明日の本戦に向けての全日本のロードレースが行われようとしています。ここ、オートポリスサーキットで行われる25週の予選が間もなく開始いたします。』とアナウンサーの宮部が言った。