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4話、ギルドカードとブリュンヒルデの存在

ステラは頭に手を当てている。完全に忘れていたようだ。


「それにしても、忘れてたわ。ライのギルドカード。」


「ステラの事だからライに作ってもらった武器に喜んでただけでしょ。まあ、ボクもあの武器を見たら同じになりそうだけど。」


ティファもアイシャと同じようにステラの武器を見ていた。


「それにしても、素晴らしい武器ッスねえ。レベルが違うとこんなにも凄い物が出来るッスね。」


「ありがとうございます。武器も喜んでいると思います。」


今度はステラが呆れている。僕は変な事を言っただろうか?お礼を言っただけだが。


「ライは本当に作る事が好きなのね。武器も喜ぶなんて言い方をして。昔の人は武器との対話、素材との対話をしながらより良い装備を作ったとも言われているけど。」


「そうなんですか?ならば、対話出来るように頑張らないと。」


アイシャまでも呆れている。ティファは話に着いてこれないようだ。僕はやっぱり納得がいかない。なんか変な人のようだ。


「ライ、ボクが思うには素材から情報が伝わるということは対話が出来てると思うんだけど。だから、ステラもボクも呆れてるのさ。」


「とりあえず、ライが凄いのは分かったッス。さっそく、ユミルの街に行こうッス。往復とカードの申請などで帰ってくるのは夜になるッスね。」


ユミルの街に皆で向かう事となった。ステラが説明をしてくれる。


「街に着いたら、それぞれのギルドで申請をして簡単な試験を受けるの。そして、カードを発行出来るわよ。」


「ところで、迷宮にも入るんでしょ?ボク、思うんだけど冒険者ギルドの申請はしなくていいのかな?」


アイシャの意見にティファも同じ疑問を持ったようだ。ステラは忘れていたのだろう。申し訳なさそうな顔をしている。


「ステラのそういう所が可愛いッスけど。ライもそう思うッスよね?」


「ん?そうですか?ステラさんは、全て可愛いですよ。冒険者ギルドの試験は何をするんですか?」


僕の言った言葉にステラは動きがぎこちない。アイシャとティファは驚きながらもステラの腕を掴んでスピードが落ちないように歩いている。

途中、モンスターに会わない。もしかして、迷宮にしか居ないのだろうか?


「モンスターに会いませんけど、迷宮にしか居ないのですか?」


「基本、迷宮にしか居ないよ。迷宮の中で多くなって、溢れてくる事があるんだ。そうなると、街に被害が出る事にも繋がる。規模によっては国が滅ぶ事もあるんだ。」


アイシャが説明してくれる。ステラはまだ、元に戻らない。


「最近はモンスターの暴走は聞かないッスね。そろそろ、ユミルの街に着くッスよ。」


ユミルの街が見えてきた。とても大きい街のようだ。門番が居て不審人物が入らないようにしているみたいだ。

門番が声をかけてきた。


「これはブリュンヒルデの方々、3人揃ってこちらに来るのはお久しぶりでは?」


「今日は彼のギルドカードの申請に来たんだ。3人で来るのは半年振りかな。」


アイシャの説明を聞き、3人で来ることが珍しいのかと思ってしまった。門番は興味深そうに僕を見ている。


「失礼します。あなた様はもしかして異世界人ですか?この辺では見かけないように思いました。」


「そうですよ。こちらに転移して来た時からブリュンヒルデの方々にお世話になって、今日もこちらの街に案内してもらってます。」


僕は簡単に説明した。ティファも頷いている。門番も大丈夫と判断したようだ。


「どうぞ、お入り下さい。次からはギルドカードの提示で大丈夫ですから。」


「さぁ、行くッスよ。まずは冒険者ギルドでいいッスか?」


ステラもようやく、元に戻り返事を返した。他の2人は捕まえていた手を離す。


「そうね。冒険者ギルドから行きましょう。その方が楽だわ。ここの冒険者ギルド好きじゃないのよね。」


「何か分けありなんですね。その冒険者ギルドはどの辺りにあるんですか?」


ステラは冒険者ギルドで何があったのだろうか?半年振りという事はとても嫌な事があったのだろう。


「この街の中央にあるよ。まあ、行けば分かるよ。ボク達が説明しなくても済むくらいの態度だからね。」


「確かに、ここだけッス。本当はここの態度が正解かもしれないッスけど。本人達が大丈夫と言っているッスからその通りにしてほしいッス。」


なにやら、ティファも不満のようだ。そんな話をしていると、冒険者ギルドに着いた。とても立派な建物だ。2階建てだ。アイシャを先頭に入って行く。すぐに、1人の男性が声をかけてきた。


「久しぶりでございます。ブリュンヒルデの姫様方。今日はどのようなご用件で?」


「ギルドマスター!いい加減、姫様呼びは止めてもらえないかしら?」


ステラが不満を口に出している。ティファやアイシャも同じようだ。


「そう言われましても半分は癖で。半分は業務なのでその様に云われましても困ります姫様。」


ん?今、姫様と呼んだか?3人とも姫様なのか?そんな疑問を抱いているとアイシャが本題に入った。


「ギルドマスター。ボク達は彼のギルドカード申請に来たんだ。試験を受けていいかな?」


「大丈夫ですよ。彼ですか?見た感じ強そうには見えませんね。伸び代はありそうですが。お名前を伺ってもよろしいですか?」


ギルドマスターが僕の前に出て来た。とても体格のいい人だ。

身長も高く、横幅も広い。とても強そうだ。


「僕はライと言います。試験は何をするんですか?」


「ありがとうございます。ライ様ですね。試験は模擬戦ですね。今日はギルドマスターである、私が相手をします。申し遅れました、私はジャミルと言います。それでは、ギルドの裏に闘技場が在りますのでそちらに行きましょう。」


ギルドマスターに案内され、裏にある闘技場に向かった。

ティファが少し不安そうだ。アイシャも同じ顔をしている。


「まさか、ギルドマスターが相手になるとは思わなかったッス。ライは大丈夫ッスかねえ?」


「大丈夫よ。ライならね。ライ、スキルは上がってるんでしょ?私との模擬戦で」


2人の心配を気にする事もなくステラが聞いてきた。


「はい、レベルは上がってました。10まで上がってたのにはびっくりしましたけど。」


2人は話に着いてこれないようだ。そういえば、2人には自作装備使用スキルの事を話してなかった。僕の表情にステラも気付いたようだ。


「ライは自分で作った装備を上手く使えるスキルがあるから大丈夫よ。専用のミスリルソードを使えばいい勝負になると思うわ。」


「ボク、聞いてないけど。鍛冶スキルと錬金術スキルは聞いたけど。ライとステラ、2人の秘密だったわけだ。」


アイシャが意味深な発言をしてくる。ティファもステラを見てニヤニヤしている。あれ、出発前も見たような?そんな話をしていると闘技場に着いた。ギルドマスターが待っていて、説明をしてくれる。


「武器は自分の物をお使い下さい。私と戦い、どれくらいの実力があるか見せてもらいます。その上でどのランクのカードを発行するか決めますので。」


「分かりました。よろしくお願いします。」


僕は説明を聞き、ミスリルソードを構えた。すると、ギルドマスターの表情が変わった。視線がミスリルソードに向けられている。


「素晴らしい武器ですね。ご自分で作られたのですか?」


とても気になるらしくミスリルソードの事を聞いてきた。


「そうですよ。自分で作りました。」


「ありがとうございます。気を付けて下さい。他のギルドでは見せない方が良いと思います。このギルドでも表では見せない方が良いかと。あまりにも素晴らしい武器なので、襲われる危険がごさいます。まあ、ブリュンヒルデの姫様方が一緒なら心配ないと思われますが。


それでは、始めましょう。」


そうなのか。そこまでの武器を作ったのか。レベルMAXは凄い事が改めて知った。


僕もミスリルソードを構え直し、ギルドマスターと模擬戦を始める。


「キーン!カキーン!」


「良い動きですね。これだけ動ければ早い段階でブリュンヒルデの姫様方と同じSランクになれるでしょう。」


更に戦っていく。ステラとの模擬戦のお陰でミスリルソードの使い方が分かってきているのも大きい。それにしても、Sランクとは凄いのだろうか?


「Sランクとはどれくらい凄いんですか?こちらに来て日が浅いもので。」


「Sランクとは最高ランクでございます。SランクになるにはAランクに昇格した後でドラゴンの討伐依頼を達成して頂ければなれます。」


Sランク!最高ランクなのか。3人とも凄い人達なんだなあ。でも、今の時点で姫だったりSランクだったり情報が多い。今は試験に集中しよう。そう思った矢先、ギルドマスターの動きが止まった。


「この辺で、大丈夫でございます。実力は武器に依存もしている可能性もありますが。Dランクからのスタートでよろしいかと。ブリュンヒルデの姫様方と一緒にパーティーを組むならすぐにAランクになれますよ。頑張って下さい。」


そう言って試験は終わった。Dランクか?1番下のランクはなんだろう?そんな事を考えながら挨拶をする。


「ありがとうございます。頑張ります。」


「良かったじゃない。Dランク。したにEとFがあるから妥当な所ね。もしかして、私達ブリュンヒルデとの関係も考慮されたのかしら?」


ステラはギルドマスターを見ている。そこのは嫌な顔は存在せずに元に戻っているようだ。アイシャとティファを見ると嬉しそうにハイタッチしていた。僕はホッとした。良かった。


「ブリュンヒルデの姫様方の存在を抜きにさせて頂きましたよ。存在を考慮させて頂くとBランクでもいいとも思いました。それだけの伸び代があるようですから。」


「えっ、そうなの?それはやり過ぎじゃない?ボクにはそこまで評価されるとは思わないけど。」


ギルドマスターの言葉にステラは気付いたようだ。でも、話そうとしない。


「ステラ姫様は気付いたようですね。ライ様は模擬戦の最中も成長が凄かったです。ですから、本日は早目に試験を終わらせたのです。後は、モンスターを討伐して経験を積んで下さい。」


「そうだったッスか。でも、良かったッス。じゃあ、次に行くッスよ。」


僕はギルドマスターにお辞儀した。ステラ達もつられてお辞儀しているようだ。ステラ達の姿を見てギルドマスターは驚いている。


「どうされたのですか?姫様達まで?それにしても、ライ様は不思議な方ですね。そこに居るだけで姫様達が安心しているようですので。」


「ボク達の中で1番、効果を受けてるのはステラだよね。」


話を振られたステラはアイシャの言葉に動じることなく聞き流している。アイシャは少し不満そうだ。


「さあ、次に行くわよ。」


「そうですね。次は鍛冶師ギルドでいいですか?」


「ボクはいいと思うよ。ここからなら、左の方へ行けばいいよ。」


ギルドマスターからカードを受け取り冒険者ギルドを後にした。次は鍛冶師ギルドだ。鍛冶師ギルドの近づくと、金槌の音が聞こえてきた。今度はティファが先頭に入って行く。

ここでも、1人の男性が声をかけてきた。


「おっ、ブリュンヒルデじゃねえか。どうしたんだ?珍しいな?3人揃ってここに来るのは。」


「ギルドマスター、今日は彼のギルドカード申請に来たッスよ。」


ギルドマスターは僕を注意深く見ている。なんだろう?凄く品定めされてるような気がする。


「おめえ、いや何でもねえ。とりあえず、作業場に回んな。そこで試験をする。」


ギルドマスターは何か言おうとしたが、止めてしまった。作業場に向かうよう指示された。

どうしたんだろう?今は考えてもしょうがないか。

作業場に着くと複数の炉があり武器や防具を作っている。とても、居心地がいい。ギルドマスターに呼ばれた。


「こっちだ。ここでこれを作ってもらう。」


ギルドマスターは左端の炉の前に居た。そして、1本の剣を持っている。僕達は近づいて行く。

剣を受け取り、手に取ると情報が流れてきた。物凄く硬く、柔軟で加工が難しいようだ。

オリハルコン?鉱石の名前が頭に流れる。どのような鉱石なのだろう?


「あの、オリハルコンという情報が流れてきたのですが。加工が難しい鉱石なのですか?」


「はぁ?ちょっと、何でオリハルコンがここにあるのよ?1番珍しい鉱石なのよ。ライの鉱石から伝わる情報なのだから間違いはないと思うけど。オリハルコンがあるなんておかしいわよ?」


えっ?そんなに珍しい鉱石なの?でも、鉱石が教えてくれたから合ってると思うけど。でも、このギルドにあるのがおかしいのは何故だろう?僕は頭の中に?マークが並んでいる。

ギルドマスターが説明を始めた。


「それは、俺が採掘してきて加工した物じゃ。鉱石との会話が出来るという事は……。まあ、いい。」


「でも、オリハルコンは国王に献上するもんじゃないの?」


ステラは納得がいかないようだ。アイシャもオリハルコンの剣を不思議そうに見ている。


「国王に献上したんだよ。そしたら、剣を作ってこのギルドで保管しろと言われたんだよ。」


「でも、オリハルコンの剣をこのギルドに保管しろと言ったんだろう。国王の考えてる事はいまいち分からないなあ。」


僕は疑問が出てきた。何故、僕に見せたんだろう?

ギルドマスターが僕の表情を見て気付いたようだ。僕はそんなに分かりやすいだろうか?


「しょうがねえだろ。この剣はおめえが入って来たら落ち着かねえ感じだったからな。それから、俺の部屋に行くぞ。詳しくは部屋で話すからよ。」


「分かりました。」


ギルドマスターは剣を持ち部屋に向かった。僕達も後に続く。周りの職人さん達の視線を少し感じながら移動した。

ギルドマスターの部屋に着くと、とても懐かしい感じがした。


「おめえの反応はやっぱりか?」


ギルドマスターは僕の反応で何か分かったようだ。記憶が無いのでどのように答えていいか困っていた。今度はステラも僕の反応に気付いたようだ。


「ギルドマスター、自分だけ分かってもダメじゃない。ライが困ってるでしょ?早く本題に入ってよ。」


「ガハハハ!いやあ、すまん。すまん!」 


ギルドマスターは笑っている。少しして、表情が真面目になった。


「自己紹介がまだ、じゃったな。ワシの名前はゲンじゃ。ライと言うたな。おめえと同じ転移者じゃな。ワシの場合は20年前にこの世界に転移して来たのじゃ。」


ブリュンヒルデのメンバーも知らなかったらしく驚いている。僕も驚いてはいるのだけれど、前の世界の記憶がない。


「確かに、僕は転移してきました。でも、女神の手違いで記憶がないのです。記憶を呼び起こす事を進められましたが僕は必要性を感じなかったので断りました。」


「なるほどのう。おめえ、ライだろう?至高の鍛冶師ライだろう?クラフト&ダンジョンズで鍛冶スキルMAXになった。」


鍛冶スキルMAXという言葉に誰よりも早く反応したのはステラだった。何故かとても嬉しそうにしている。


「当たり前じゃない。この世界でもMAXだもの。」


「この世界のレベル上限と同じにされても困るのじゃ。」


今度はゲンが自慢気だ。まあ、僕自身に記憶がないから突っ込みづらい。とりあえず、話を聞くことにした。


「クラフト&ダンジョンズのレベル上限は9999じゃ。ワシの知るライは装備を作るのが好き過ぎてずっと作っておったのじゃ。」


ブリュンヒルデの3人は驚きを通り越して変人を見る目で見ている。説明しているゲンは笑っている。


「いろんな連中にも命を狙われておったが大丈夫じゃった。国に狙われた事もあったしのう。でも、今のブリュンヒルデのように一緒にいる仲間がおったから手出しする者は居なくなったのじゃ。」


「ボクはまだ持ってないけど、ライの武器はそんなに凄いの?ステラの武器だけでは判断しづらいんだ。」


ステラはアイシャの発言を聞いてゲンに剣を見せた。ゲンは剣を手に取るとすぐにステラに返してきた。その表情は鍛冶師の顔になっている。さっきまでの雑談に見せる顔とは全然違う真剣な顔になっていた。


「ライ、この武器は魔力を使う武器じゃな。耐久性や切れ味はオリハルコンに近いようじゃ。前の世界で作った鉄の剣じゃが、この武器に近い耐久性と切れ味があったのじゃ。だから、悪い連中に狙われやすかったのじゃ。」


「やっぱり、凄い性能なのね。ライと模擬戦したけどとても扱いやすくてびっくりしたもの。」


剣を受け取ったステラはとても嬉しそうに感想を言う。それを羨ましそうにアイシャとティファが見ている。


「ブリュンヒルデよ。悪い連中からライを守ってくれんか。この世界でもそういう連中がいるからのう。」


急に我に返った2人が今度はニヤニヤしだした。何で、2人はニヤニヤしてるんだろう?


「大丈夫ッスよ。守りは万全ッス。寝る時はステラが一緒に寝てるから大丈夫ッス。」


「確かにそうだね。ボクも大丈夫だと思うよ。ステラと一緒に寝てるからね。」


2人の発言にステラの顔は真っ赤になっていく。ゲンは暖かい視線で見ている。


「2人とも、何で余計な事を言うのよ。ゲン、その視線を止めて。でも、ライの事は守るわ。生涯を賭けて。まあ、ライのスキルがあれば守る必要も無くなるけど。」


ステラの最後の一言にゲンが気付いた。そして、無言で僕に説明を求めている。アイシャとティファは理解してないようだ。


「僕のスキルに自作装備使用というスキルがあります。自分で作った装備を上手く使えるスキルです。このスキルのお陰で冒険者ギルドでDランクとして登録出来ました。」


「なるほどのう。納得したのじゃ。試し切りするには良いスキルじゃな。それでは、鍛冶師ギルドのギルドカードを渡すとしようかのう。ギルドカードを渡すのじゃ。」


僕はギルドカードを渡した。

2人は説明を聞いてようやく理解したようだ。そういえば、自作装備使用スキルの話はしてなかったなあ。


「ほれ、これで鍛冶師ギルドでも活動出来るのじゃ。ランクはSじゃ。ぼちぼち、頑張るんじゃぞ。」


「やっぱり、Sランクなのね。そんな気がしたけど、やっぱりびっくりするわね。後は、錬金術ギルドね。このギルドとは反対だから、そろそろ行きましょうか?ゲン、今日はありがとう。ライの秘密の一端が知れて良かったわ。」


「ゲンさん、ありがとうございました。何かあればまた、寄りますね。」


僕はステラに続いてお礼を言った。アイシャとティファは無言で礼をしている。


「気を付けて帰るんじゃぞ。何かなくても来ても良いぞ。」


ゲンは、手を振りながら答えている。次は錬金術ギルドだ。鍛冶師ギルドを後にして反対側にある錬金術ギルドに向かった。それにしても、行き交う人達の視線が痛い。特に男性の嫉妬にも似た視線が。


「この街の人達の視線が気になるんてすけど。特に男性の視線が。」


「それは仕方ないッスよ。ワタシ達は結構、人気があるッスよ。特にステラが人気ッス。」


ティファの意見にステラが少し不機嫌になる。アイシャがステラの代わりに答え始めた。


「ステラがこの街に来たがらない理由がこれかな。他にもあるけど。付け回す連中もいるから困ってるんだ。下手に実力行使するわけにもいかないから。だから、買い出しもこの街にはほとんど来ない。今回のように急ぎではない限り。あっ、ライを責めてる訳じゃないからね。」


「警備する人は居ないのですか?」


ステラは溜め息をついている。アイシャとティファも同じのようだ。


「居るわよ。その連中の中にも付け回す人が居るから尚更、質が悪いのよ。」


「もうすぐ着くッスよ。錬金術ギルドに!早く済ませて帰るッス。」


錬金術ギルドに着いた。冒険者ギルド、鍛冶師ギルドよりも少し小さい建物のようだ。扉を開けると1人の女性が待っていた。


「待ってたわ。ブリュンヒルデ、そしてライ君だったかしら。」


ステラに負けない位とても綺麗な人が話しかけてきた。ギルドマスターだろうか?ステラは僕を見て不機嫌になっている。わざとじゃないんだけど。


「ライ、何を見惚れてるの?それよりもギルドマスター、どうしてここに来ることが分かったの?」


「ゲンから連絡をもらったのよ。ギルド専用の連絡手段を使ってね。それよりも、ここでは人目に付きすぎるから部屋に来てちょうだい。」


ここでもなのか。ギルドマスターの部屋に通された。とても綺麗な部屋だ。まあ、冒険者ギルドも鍛冶師ギルドもギルドマスターは男性なのだからしょうがないのかもしれないが、そこまで片付いていなかった。


「ようこそ。錬金術ギルドへ。私の名前はアリア。錬金術ギルドのギルドマスターよ。よろしくね。」


「はじめまして。僕はライと言います。ギルドカードを作りに来ました。」


僕はお辞儀をしながら挨拶した。何でだろう?妙に緊張している。誰よりもステラが気付いて、話を始めた。


「ギルドマスター、ライに試験を受けさせたいの。お願い出来るかしら?」


「ステラ、いつもの様にアリアでいいわよ。じゃあ、ここで試験をしましょう。錬金陣と言ってサークルを展開、そこで薬草と回復ダケを使ってポーションを作ってね。心の中でポーションと念じれば出来るわ。」


アリアは薬草と回復ダケを渡してきた。さっそく、錬金陣を展開させていく。


「分かりました。やってみます。錬金陣。」


心の中でポーションと念じた。すると、薬草と回復ダケが調合されてポーションになった。不思議だ。どうやってビンまで錬金されるんだろう?


「流石ね。合格よ。ギルドカードを渡してくれないかしら。」


あっさりと合格してしまった。ギルドカードをリーファに渡す。リーファにギルドカードを渡してる間にステラに声をかけた。


「ステラさん、錬金術の試験はあれだけで良かったんですか?」


「そうらしいわよ。ポーションが作れないと意味がないのよ。ポーション不足になることもあるから作れさえすれば合格らしいの。私も作っている所を見るのは初めてね。」


そうなのか。不足になることもあるのか。


「ボクは他の人の錬金術見たことあるけど、あんなに簡単に出来てなかったよ。もう少し融合するのに時間がかかっていたよ。ライなら本当に霊薬エリクシールも作れる気がする。」


「お待たせ。ギルドカードよ。ランクはAね。理由としてはあれだけ早く作れる人は居ないのよ。レベルは相当高いでしょ。Sランクになるには霊薬エリクシールが作れる事が条件よ。今の所、私以外作れる人は居ないのよ。材料は古龍の血、マンドラゴラ、ユグドラシルの葉よ。どれも貴重品だから手に入れるのは難しいのよ。」


今、古龍と言ったか?討伐出来るんだろうか?マンドラゴラはキノコの一種かな?ユグドラシルの葉はノウムに聞けば分かるかな?


「ありがとうございました。頑張ります。さあ、帰りましょう。」


「困った時はいつでもいらっしゃい。」


僕達は手を振って錬金術ギルドを後にした。


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