2話、武器作りと2人の関係
作業場に着き、鉄を取り出した。
「それでは、作っていきますね。」
「最初に何を作る気なの?装備じゃないでしょ?鉄だもの。」
「肩慣らしに、少し大きめのナイフを作ろうと思います。モンスターの解体などに使えるので」
鉄を炉に入れて熱し、ハンマーで叩いていく。
「カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
「カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
叩いて、冷して、炉に入れ叩く!
刃の部分を研いで、
「出来ました。鉄とは思えないほど、いい物が!」
「ちょっと、まって!早すぎるでしょ。他の人が作る所を見たけど3倍位、叩いていたもの。」
「そうなんですか?でも、出来てしまいましたし、感覚でここまでで大丈夫と感じましたから。」
「それは見れば分かるもの!私の使っている鉄の剣より良いものが出来た事ぐらい。」
「なら大丈夫ですね。次はステラさんの剣を作りますね。」
魔鉄と隕鉄を手に取ると同じように炉に入れた。
「カーン!カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
鉄とは比較にならならないほど、難しい。まずは、魔鉄と隕鉄を柄と峰から刃の部分に繋げて叩いていく。
「カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
次に峰から刃にかけて叩いていく。
「カーン!カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
「カーン!カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
刃になる部分は特に丁寧に叩く。
「カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
最後に刃を研いだ。
「1本、出来ましたよ。」
ステラに渡す。ステラは手に取り目を輝かせている。
「何、これ!物凄い魔力を感じる。」
「さっそくですが、炎の魔力を込めてみてくれませんか?」
「魔力?分かったわ。」
ステラが言われた通り魔力を込め始めた。すると、刀身が赤くなる。
「次は雷の魔力をお願いいたします。」
今度は刀身が黄色くなった。
「問題、無さそうですね。込める属性の魔力で刀身の色が変わります。魔力を込めなければ、隕鉄の薄暗い色のままです。」
「凄いわね!こんなに剣、見たことないわ。控え目に言って最高よ!ありがとう!」
ステラはとても、満足そうにお礼を述べる。
「それは、良かったです。でもう1本作りますね。」
もう1組、魔鉄と隕鉄を取り出し作っていく。
…………。
「2本目も出来ましたよ。とても、楽しかったです。」
「感想はともかく、ライ自身の武器も作るのでしょ?確かにとても、良い笑顔だったけど。何で私の前で見せてくれないの?」
「どうしましたか?僕は今から作りますよ。」
ミスリルを取り出し炉に入れた。そして、叩いていく。
「カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
「カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
「カーン!カーン!ジュッー!」
「そして、アーマーリザードの素材を柄にしてよし!出来ました。」
ミスリルソードが完成!
「これも見事ね!私の剣の名前はどうしようかな?」
「それこそ、単純ではありますが【魔法剣】はどうでしょうか?」
「いいわね!素敵な物を本当に、ありがとう!」
ステラが感謝とともに抱き着いてきた。もちろん、支えきれず倒れる。
「ステラさん?危ないですよ。いくら、剣を握ってないにしても。近くに、炉があるので。」
「あまりにも、嬉しくて、つい!」
『ダカラ、ソウイウノハ、ワシノ、イナイトコロデ、ヤレ!』
「ノウムさん、ありがとうございました。ノウムさんのお陰で、鍛冶が出来て良かったです。まさか転移した日に出来るとはおもわなかったので。」
『ワシモ、イイモノ、ミセテ、モラッタ。アトハ、スキニ、ツカエ。ワシハ、キエル。チナミニ、トナリノ、タテモノハ、フタリデ、ツカエ。ソノホウガ、イイダロウ。マタナ!』
そう言うと、ノウムは消えてしまった。
(その方がいいとは?まあいいか。)
「私にも鉄のナイフを作ってくれない?今、使っているの結構ボロボロで!」
そう言うと、ステラは今使っているナイフを見せてきた。
大分、使い込まれている。ボロボロというかよく、使えていたともいえる位悪い状態だった。
「よく、使えてましたね?刃物としては使える状態じゃないと思いますが。」
「風魔法で刃の部分を補っていたから。普通の剣でも風魔法なら刃の部分に風魔法を纏わせて使えば、刃こぼれしずらくなるから。」
「なるほど。本当に魔法は便利なんですね。どうしますか?このナイフも使って新しく作りますか?流石に修理出来る状態ではないので。」
「そのナイフには思い入れもあるから使えるならお願い!修理出来るとは思ってないから。」
ナイフを改めて手に取ると鉄以外の鉱石の感触が伝わってきた。なんだろう?少しだけ、何が混ざっているんだろう?
「ステラさん、このナイフは鉄以外に他の鉱石を混ぜて作っているか分かりますか?」
「ん?分からないわ。今は亡き、祖父に頂いたナイフだから?でも、嬉しそうに鉱石の話をしていた気がするんだけど……。」
………。ステラは祖父から(これは鉱石に見えるが違うんだ。モンスターの魔石を使っている。討伐すると、まれに採れる貴重品だがこのナイフに使わせてもらった。)
「確か、モンスターの魔石と聴いたわ。モンスターの名前は分からないけど。」
「なるほど!だから、魔力が込もっていたのですね。感触的にはドラゴンのようです。ですので、魔鉄で魔石を補う方向でいきますね。」
「ライ、ここに来たばかりでドラゴンに会ったことないでしょ?何で分かるのよ。」
「そう言われても、こちらに来る前の記憶はないのですが何故か分かるんですよね。でも、このドラゴン。強い者ではないようですね。」
魔鉄も一緒に炉に入れ、叩いてみる。
「カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
何だか、拒絶してるような感覚が出てきた。
「なんだろう?魔鉄と相性悪いのかなあ?上手くいかない。鉄だけで叩いてみよう。」
「カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
おっ!上手くいきそうだ。そうかこの魔石、鉄以外とはダメなのか。
「このナイフに使われている魔石は鉄じゃないと拒否反応をするみたいですね。」
「カーン!カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
「そんな事まで分かるのね。でも、とても素晴らしい物になりそうで嬉しいわ。」
「カーン!カーン!カーン!ジュッー!」
「ステラさん、出来ましたよ。僕も良いものが作れたと思います。」
そう言って、ステラに手渡す。ステラは最高の笑顔でナイフを受け取り、見てうっとりしている。
「本当に、本当にありがとう。修理しようがなくて諦めてたの。」
なんだろう?見てるこっちも嬉しくなってきた。
「じゃあ、ノウムの言っていた家に行ってみない?この建物の隣なんでしょ?」
確かに、隣の家を使えと言っていたな。何故、2人で住むんだろう?僕は料理がダメなので、助かるけど。
「そうですね。向かいましょうか。」
ステラの手を取り隣の家に向かおうとした。すると、ステラが固まっている。あんなにグイグイ、来てたのにどうしたんだろう?
「…………。」
ステラは、顔を真っ赤にして着いてきた。それでも、手を離そうとしない。家に着いたときに声が聞こえてきた。
「手を繋いでもらって嬉しいけど、どうしていいか分からなくなるなんて。」
「ステラさん、着きましたよ。2階建てのようですね。」
「思ったよりも、素敵な家ね。さっそく、入ってみましょう。」
玄関を開けて中に入る。そこは、広いリビングがあった。
左の部屋は、台所と食卓があり結構な広さだった。
右の部屋は、お風呂場と2階に続く階段があった。お風呂場の浴槽は4人~5人が一緒に入ってもゆっくり出来る位広い。(こんなに広くなくても良いのでは?)
「私、広い浴槽に憧れてたの。ねー!ライ、後で一緒に入ろう。絶対、気持ちいいから!」
「何故、一緒に入る事に成っているんですか?まだ、出会ってそんなに経ってもいませんし。」
「ダメではないのね!良かったわ。」
「そうじゃないですけど。とりあえず、2階に行きましょう。」
2階に上がると、更なる驚きが!寝室があるのだが、キングサイズのベッドが1つ。それを見て、ステラのテンションが物凄く羽上がった。
「凄ーい!こんなに広いベッド初めて見た。でも、ここ以外にベッドないみたいね。」
「そうなんですよね。何故なんでしょう?」
「決まってるじゃない!2人で仲良く休みなさいと、言うことじゃない。」
「えー!予想は付きましたけど。」
ステラは少し拗ね気味に返してきた。
「何でよ。こんなに好きなのに、アピールしてるのに。何で気付かないの?こんな気持ち初めてなのに。何で?」
気付けば、ステラは泣いていた。僕はというと、驚きと嬉しさとよく分からない感情でステラを抱き締めていた。
「ありがとうございます。僕も………。」
言葉が続かない。思えば今日、この世界に転移してきた。そこには、協会で祈りを捧げるステラに出会った。それから話をして、ご飯を食べ武器を作り時間を過ごした。そこで、感じたことそれは………。答えは出ていた。紛れもなく、居心地が良かった。安心した。そして、ステラさんを見て答えた。
「僕の方こそ好きですよ。ですから、一緒に居てくれますか?一緒に生きてくれませんか?」
「本当に?嬉しい!これから、末長くよろしくお願いね!」
「はい!よろしくお願いします。」
そして、抱きしめ合った。
『オメデトウ。ツタエ、ワスレガ、アッタ。』
いきなり、ノウムの声が聴こえてきた。2人は幸せの余韻に浸る暇もなく我に変える。
「伝え忘れとは何ですか?」
いち早く、元に戻ったライが質問する。
『コノ、チカクニ、メイキュウガ、アル。ソコノ、オタカラ、セイレイオウサマニ、ワタスヨウニ、イワレテイタ。』
「じゃあ、取りに行けばいいのね?」
ようやく、元に戻ったステラが返してきた。
『ダガ、モンスターノ、スニ、ナッテイル。モンスターハ、オークダ。オタカラノ、アルヘヤニハ、オークキングガ、イル。』
「やったあ!オークがいるの?オークの肉は美味しいのよね。オークキングは更に美味しいわよ。」
「テンションが上がった理由が美味しいからですか!分かりますけど。もしかして、2人で行くつもりですか?」
すると、ステラは人差し指を振り出した。
「行きたい気持ちも、もちろんあるけど。パーティーメンバーが明日には戻って来るから4人で向かいましょう!その方が安心、安全だから。」
「どのような方々ですか?」
「二人とも女の子よ。1人は魔術師。攻撃から回復まで使える天才よ。もう一人は近接特化ね。武器を使わなくても戦える天才よ。」
ステラは何故か、胸を張り答える。
「まあ、私はどの距離でも戦える万能型かな。離れて戦う時は弓がメインに成るけど。その弓も今は傷んで使えないのよ。」
「そこは、大丈夫ですよ。僕の作った魔法剣は魔力を込めた状態で剣を振ると魔法を飛ばせます。留めておくと属性のダメージが入ります。」
「ちょっと、規格外過ぎるでしょ。」
ステラが頭に手を当て呆れている。でも、楽しそうだ。
「代わりに、威力は出ませんよ。主に、牽制に使ってもらえれば。」
「分かったわ。相談なんだけど、2人の武器もお願いしたいのだけど。」
「良いですよ。今からとても楽しみです。」
ワクワクが止まらない。
『デハ、ヨロシク、タノム。コンヤハ、フタリ、タノシメヨ。』
「何を言ってるの?」
ステラが慌てて声に出した。その時には、ノウムは姿を消していた。
「ノウムさんは、神出鬼没ですね。でも精霊王様は何故、宝を渡そうとしてるんでしょうか?」
「まあ、いいじゃない。取りに行けば分かるわよ。今は考えてもしょうがないわよ。」
「確かに、そうですね。」
ステラが向き直す。少し顔が赤い。
「改めて、よろしくね。2人とも、聴いたらどんな風に思うかしら?」
「まさか、後ろから刺されたりしませんよね?」
ステラは吹き出してしまった。
「フフッ!それだけはないわよ。ライに惚れる事はあっても!だから、大丈夫よ。」
「僕に惚れる時点で、問題な気がしますが。ステラさんは楽しそうですね。」
ステラはとても上機嫌のようだ。可愛すぎる。本当に可愛い!
「想った事は言葉にしないと伝わらないよ?」
何かを察した様子のステラ。ニヤニヤしている。
「ちょっと、可愛すぎませんか?これ以上好きになると2、3日寝込みそうです。」
ステラは途端に赤くなる。
「2、3日寝込むのは確かに困るわ。好きになってもらうのは嬉しいけど。」
「所で、ポーション等はどうしますか?魔術師さんが回復魔法を使えるにしても頼りっぱなしという訳にはいかないですよね。」
ステラは自分の世界から戻って来ない。嬉しさのあまり、ニヤニヤが止まらない。止められない。
「ステラさん?聞いてますか?」
「ごめんね。聞いてなかった。何?」
「ポーション等はどうしますか?」
ようやく、我に返ったステラが大丈夫と言わんばかりに胸を張る。
「そこは、気にしなくていいわ。今回、2人が離れてるのはポーション等の備品を買いに行ったのよ。」
「そうなんですね。今回は大丈夫ですね。次からは僕が作りますよ。錬金術スキルありますから。」
「そうだったわね。鍛冶が凄すぎて忘れてたわ。スキルレベルMAXの錬金術。」
完全に忘れていたのだろう。少し引き気味のステラがそこに居た。そんなに引かなくても。
「そんなに、引きます?女神様?でしたっけ。もらったスキルなので。」
「それでも、限度があるもの。」
今度は呆れている。気にしてもしょうがないが何故、女神様は錬金術スキルまでレベルMAXにしたのだろう?
「そういえば、この町の周りはポーションの材料はあるんですか?」
「あるわよ。ポーションは薬草と回復ダケの調合で作れるわよ。上薬草と上回復ダケでハイポーションが作れるの。」
「ありがとうございます。更に楽しみが増えました。」
ステラの表情が少し真面目になった。
「聞きたい事が出てきたのだけれど、いいかしら?」
「いいですよ。何ですか?」
「ライはこの世界で何をしたいの?真っ先に選らんたのが鍛冶スキルなんでしょう?」
その時、少しだけ記憶が甦った。そう、僕はこの世界でスローライフをしたいと。冒険者の装備を作りながらゆっくりしたいと。
「1番の目的はスローライフですね。冒険者の方々の装備を作りながら、ゆっくり過ごしたいと思いました。今の状況だと大分先になりそうですが。」
僕は笑って答えた。
「そうなんだ。結婚は?」
「それなんですけど、女神様にこの世界に居るからと言われました。」
「その中の1人が私かな。」
ステラがニヤニヤしながら答えた。
「ステラさん、何故複数いる前提なんですか?僕は望んでないですけど。」
「えっ!いいじゃない。楽しいわよ?」
僕は戸惑っている。ステラは楽しんでるな。
「ステラさんは、それでいいのですか?僕が他の女性を好きになっても。」
「それは……、嫌よ。でも、私も好きな相手なら大丈夫よ。」
今度は少し不機嫌になった。まあ、すぐには答えはでない。というか、出してはいけない気がする。
「とりあえず、その事は今は保留で。この先どうなるか分からない事なので。今は答えは出ませんから。」
「分かったわよ。でも、時間の経つのは早いわね。そろそろ、夕食の支度をしてくるわね。食べたい物はあるかしら?」
確かに、時間が経つのは早かった。お昼を食べて、鍛冶を始めた。そして、この家に来て見て回った。
ノウムと話をして気付けば夕暮れ。ステラに食べたい物を聞かれたが今日、この世界に来たばかり。食べたい物と聞かれても分からない。
「お任せで!ステラさんの作ったお昼ご飯、とても美味しかったので。」
ステラはとても嬉しそうだ。コロコロ変わる表情が可愛い。
「分かったわ。じゃあ、作って来るから。ライは何するの?鍛冶はダメよ。間違いなく集中し過ぎて遅くなるから。」
「分かりました。少し、仮眠取りますね。」
「いいわよ。ご飯の準備が出来たら起こすから!」
ステラはご飯の準備に向かい、僕はベッドで眠りについた。
『ライさん、ライさん。』
声が聴こえてきた。聴いた事のある声だ。意識は覚醒したが、最初に訪れた場所らしく身体は寝ているのだろう。
『ライさん、楽しそうで良かったです。少しお話がしたくてお邪魔しました。』
「楽しい世界ですよ。素敵な出会いもありましたし。でも、こんなに簡単に女神様に会えて良いのでしょうか?」
すると、とても可愛らしい姿が現れた。見た目がとても幼く愛くるしい。つい、頭をヨシヨシしたくなるほどだ。
『あのう、小動物を見る目を止めてもらえますか?女神になったばかりの新人ではありますが。』
「すいません。あまりにも、可愛くて。」
『可愛い………。』
女神様は顔を赤くして固まっている。僕はおかしな事を言ったのだろうか?
「女神様?大丈夫ですか?用件はなんですか?」
………。女神様はまだ、固まっている。
『はっ!そうでした。用件ですね。ありませんよ。』
「ないんですか?」
僕は女神様の言葉にビックリして、どうしていいか分からない。
『初めて異世界からお呼びしたので少し心配になったのです。私は女神の中で落ちこぼれと言われてきたので………。』
今度は女神様が泣きそうだ。気付いたら、頭を撫でていた。
「大丈夫ですよ。記憶のない僕が言うのもおかしな話ですが、出来る事をコツコツするのが1番ですから。焦らなくてもいいのではないでしょうか?」
『そうですね。ありがとうございます。では、見守り続けますので楽しんで下さい。』
そう言うと女神様は姿を消した。
『そろそろ、起きた方がいいですよ。ステラさんに起こされてますよ。』
女神様の声の後、ステラの声がする。
「ライ、ご飯出来たわよ。起きて!起きないなら、キスでもしようかしら。」
その言葉で飛び起きる。それでも、夢の中の出来事が曖昧になっているためボーっと、していると突然のステラの行動に身体が固まり思考が停止する。
「チュッ。」
キスをしてきたのだ。ステラは少し恥ずかしそうたが、してやったりの表情をしている。
「ふふっ!ご飯、早く食べましょ。どうしたの?大丈夫?」
「……。大丈夫……。ごちそうさま。」
ステラは徐々に顔が赤くなっていく。意味が分かったようだ。
今度は僕からキスをした。
「チュッ!ステラさん、ご飯出来たんですよね。行きましょう。」
「も、もちろん。」
ぎこちない動きのステラの手を取り1階に降りていく。そして、食卓のある部屋へ入っていく。食卓には葉野菜と一緒に炒められたお肉と、根菜のスープが並べられていた。とても美味しそうだ。対面に椅子に座った。そして、パンが出てきた。
「そのパンは?どこから出したのですか?」
「マジックバックよ!私は魔法でマジックバックという袋でアイテムや食糧等の様々な物を入れて置けるの!時間も経過しないから便利なのよ。おかずは出来立てを食べたいからマジックバックは極力つかわないわね。」
それは、とても便利だ。マジックバックか。まあ、後で聴こう。それより、まずはご飯を食べよう。2人とも手を合わせ食べ始める。
「ステラさん、とても美味しいです。炒め物もスープも!」
「良かったわ。でも、美味しそうに食べるわね。嫌いな物はないの?」
夢中で食べているとステラの質問に答えられない。急いで飲み込もうとした。
「ゴホッ!ゴホ、ゴホッ。」
ステラが慌てて背中を叩いてきた。
「トントントン。」
「……。ありがとうございます。はあ、ビックリした。」
「ビックリしたのは私よ。そんなに急いで飲み込まなくても良かったのに。」
質問してしまった手前、ステラは少し申し訳なさそうだ。
「こちらこそ、すいません。まさか、あんな事になるとは思わなかったもので。嫌いな物はないですよ。」
「じゃあ、好きな物は?」
「好きな物ですか?ステラさんですかね。」
するとステラは少し不機嫌になっている。頬を膨らませながら後ろを向いた。ニヤニヤ顔を隠しているみたいだ。
「その返しは予想出来ていたけど、照れるじゃない。食べ物よ。食べ物の話をしてるのよ。」
僕の方を向き直したステラが聴いてきた。そこには、笑顔を隠そうとしない真っ直ぐな瞳を向けている。
「分かってますよ。食べ物も特別好きな物は浮かばないですね。ステラさんが作った料理ですね。まだ、2食しか食べてませんけど。」
「ありがとう。そんなに私の料理が気に入ってくれたのね。じゃあ、これからも腕に寄りをかけて料理を作るわね。」
既に、食べ終わりゆっくりとした時間が流れる。
「僕が食器、洗いますから。先にお風呂入って下さい。」
「えー!一緒に入ろうよ。食器は2人で洗えば早いから。」
ステラは不満そうだ。分かってはいたけど。
「今日はゆっくりしたいので1人で入りたいです。こちらの世界に来て色々とありすぎたので。」
「だって、明日には2人帰ってくるから一緒に入れないじゃない。」
確かに言いたい事は分からない事もない。
「僕らが両想いという関係を2人には伝えるのですか?」
「伝えるわよ。直ぐにバレるから。私、顔に出やすいらしくて隠し事出来ないのよ。」
そこは分かる気がする。まあそこが何よりも可愛い。
「ライもあまり変わらないと思うけど。どうせ、そんな所が可愛いと思ってるんでしょ。」
そうなのか。まあ、自分では気付かない事なので今知れて良かったと思っておこう。今日は疲れたから、2人でお風呂入って寝ようかな。
「じゃあ、2人でお風呂入って寝ましょうか?とても疲れましたから。」
「本当!早く入りに行きましょう。」
そんなに入りたかったのか。あまりにも、機嫌が良くなっていくステラを見て笑ってしまった。
「何、笑ってるの。行くわよ。」
そして、2人でゆっくりお風呂に入ってその日は眠りについた。