プロローグ
「近くにいるはずだ!!!」「見つけ次第殺せ!!!」「こっちだ!!」
深夜1時40分、森の奥に佇む屋敷で怒号が鳴り響く。
私は二コラ。ウミ王国の転覆を目論むレジスタンスの一員である。かつてウミ王国は戦争を次々に仕掛け、植民地を広げており、さらに捕虜たちに対して非人道的な実験をしていた。私の故郷も蹂躙され、その結果双子の弟を失った。しかし、我らレジスタンスの活躍もあり、今や仇は崩壊目前である。そして、今夜、王国の支配者を襲撃した。ここにはお抱えの軍師や科学者、メイドなどがいたが、問答無用で殺した。憎しみの連鎖を断ち切るためには皆殺ししかありえないのだ。罪悪感はない。
不意に弟の死に様が目に浮かび眩暈がして、壁にもたれかかる。すると壁が動いた。どうやら隠し部屋につながっているらしい。警戒しながら突入する。そこにはやつれた白衣姿の男が佇んでいた。名札を付けているが名前は見えない。銃を構える。男は私の顔を見るとにやけたような顔をする。気味が悪くなり発砲する。硝煙の香りが強くなる。名札を確認すると『主任 アレクサンドル』。どうやら王国の主任研究員だったらしい。王国に関する重要なデータを持っていないか胸ポケットを探ると1冊の分厚い本が出てきた。後で上官に提出しようと思いポケットに入れて部屋を後にしようとすると、壁が回転しない。内側からは開けられないような作りになっているらしい。仕方がないので無線で救援を要請して、先ほどの本を読んで王国のデータを集めることにした。ぱらぱらとめくるとそれは日記であった。