アトランティス6
アトランティスの本体は、半径ニキロメートル位の半球体である。
大部分が空洞で、地下ニ百メートルの基盤となる構造物から下は気密室となっていた。
水没している都底の水深がニキロメートルもあれば、水圧対策は急務となる訳である。
この水圧問題は、地下室の気圧を次第に上げ、構造物の強度も確保する事で一応の解決策となっていた。
当初は、地下都市を気密室代わりにして浮力を得る構想をしていた政府の目論見は、シミュレーション時点で破綻する。
世界的に見ても馬鹿げた構造のアトランティスが完成するとは、誰も本気で思っていなかった。
バカには勝てんという見本である。
手つかずだったアトランティスの地下施設は、大部分が空洞になって放置されていた。
ここに幹線道路に沿って全長四キロメートルに渡るリニアモーターカーを設置し、『カグヤの旅路』用のマス・ドライブ代わりとする計画が持ち上がる。
計画は急ピッチで行われ、わずか四ヶ月で完成したリニア・モーターカーは『銀河鉄道』と称して満月の夜、旅立っていった。
全世界が注目する中、『銀河鉄道』はスペースデブリの直撃を受けて爆散した。
これを重く受け止めた全世界は、『スペース・スィーパー計画』を発動し、新素材を開発した。
究極の衝撃吸収素材『ゼラチナス・キューブ』で作られた貨車を牽引するリニア・モーターカーは、巨大なハエ取り紙として衛星軌道上の清掃活動をする。
そして近年、無重力海域周辺の衛星軌道上にあるスペース・デブリが一掃された。
このスペース・デブリのトンネルが開通した事で、人類は宇宙に進出するだろう。
今回の『カグヤの旅路』からは、スペース・コロニーの基部となる構造物をラグランジュ・ポイントに運搬する貨物列車を牽引する『銀河鉄道』が飛び立つ筈だった。