新たなる伝説
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「参集!」
私の呼びかけに、闇に潜みし者どもが音もなく姿を現した。たとえ、その表情が見えずとも、魔王の雄々しい姿に皆が歓喜を振るわせていることがわかる。魔王の玉座を見守りし、魔王曰く『健気な一族』その全てが今ここに集っているのだ。
「これが我が先兵となる者達か」
魔王が、値踏みするかの如く我が一族に視線を送った。
「まさに老若男女であるな。にも関わらず、その全てが類まれなる技を有していることがわかる。
いったいどれほどの研鑽を積み犠牲を払えば、このような一団が築けようか」
「それを、お見せすべく。私たちは、いまここに集うております」
私が、静かに鞘から剣を引き抜きその剣先を魔王へと向けると、一族もまたそれに続いた。
「いくら、礼より剣を貴ぶ一族と言えど我に剣を向けるなど無礼極まりないぞ」
魔王の眉根に皺が寄るが、構わず応える。
「なにぶん、礼儀を知らぬ田舎者ゆえ」
揺るがぬ我が切っ先に、その表情が少し曇った。
「謀ったのか?」
「よもや」
玉座の間が剣呑な空気で満ち溢れていく。
「死ぬことになるぞ」
「覚悟の上」
魔王が玉座より立ち上がり、クロークのピンを弾き肩を慣らした。
最早、これまでであろう。この最後の問答の後、私たちは存分に―――。
「なにゆえだ」
「我ら、勇者の一族でありますれば」
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おわり
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