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Section 4-Eleven

あの夜の真相です。そして一気に物語の核心へ迫ります。


 その日の夜、修理屋でドゥアルテの召し使いの懐中時計を借りたあと、わたしはその足で『グレゴリオ貿易』の本社へと向かった。すでにシャルロットと一度、昼間に来ていたから、暗くても迷うことはなかった。地図も頭に入っているし。

 昼間は屋上に上って盗み聞きをするだけだったが、今回はアレンの手引きで、建物の正面から入ることができた。夜ということもあって、ほとんどの社員が帰宅していて、建物内はいやに静まり返っていた。箱やら機械やらが放置されて手狭になっている廊下を抜け、勾配のきつい階段を上っていき、辿り着いたのは社長室だった。


「社長、探偵さんをお連れしました」

「ご苦労だった。君が、ボヤの一件を調べていたという探偵か」


 革の椅子に腰かけてわたしに視線を送ったのは、口ひげを綺麗に整えた中肉中背の男性だった。身につけている服もそれなりに高価そうだし、ドゥアルテほどではないにしても、やはり金持ちらしい生活へのこだわりが透けて見える。


「ええ。名前はないけれど、通り名としてローゼと呼ばせている」

「私は社長のグレゴリオだ。もっとも私は、父の後を継いだだけだがね」


 なるほど、父親もグレゴリオだから社名もそうなっているわけか。


「日が暮れてからで悪いけど、どうしてもここの責任者と話をしておきたかった。わたしも探偵を生業にしている以上、黙って調べてその結果がただ働きというのは避けたいからね」

「仕事をする以上は報酬を受け取るあてが必要ということか。それはよかろう。だが、聞くところによると、君はすでに真相のほとんどを突き止めているそうじゃないか」


 アレンから報告を受けたのだろう。話を進めやすくするために、事情は隠さず話しておくよう伝えていたから、それも当然だった。


「正式に依頼をする前にあらかた調べ終えて、その後に契約を結ぶというのは、手順としておかしいものがあるな。見ようによっては情報をエサにした恐喝ともとれる」

「別にそう捉えても構わない。ただ、現場のリーダーから、口先だけとはいえ調査を頼まれたから、その見返りを要求するのは決して不合理じゃない。それに、あなた達は犯人の正体に心当たりがあって、その原因ないしは動機も分かっているが、一方で具体的な犯行の手順や、それを証明する手立ては持っていない。分かっている情報だけを提示すれば恐喝でも、それ以外も一緒なら、ただの情報提供だ」

「ただでくれてやる義理はないってわけか。見かけによらずがめついな」

「旅をしていると、お金のことで心底困るのは日常なんですよ。ただ、わたしは証明する手立ては持っていますが、実際に証明するとなると困難が伴います」

「……というと?」


 グレゴリオは耳を傾けてくれた。とりあえずこっちの話を冷静に聞いてくれるなら、後のこともやりやすくなる。問答無用で追い出される可能性もあったし、ありがたいことだ。

 わたしはグレゴリオに、自分の推理を打ち明けた。最初は、実行犯と思しき人物が、どんな手順で犯行に及んだかを。次に、その人物が残した痕跡と目撃証言から、実行犯の正体を。そして、裏でその人物を動かしている黒幕が存在することを……。


「……なるほど、筋は通っているな。しかし推論の域は出ない」

「ええ。ドゥアルテの港の事務所には、まだ痕跡が残っていると思うけど、他人の所有する電話の設定を調べるのは難しいでしょう。実行犯である召し使いが犯行中に使っていた電話も、すでに捨てられている可能性が高い。つまり……」

「証明する手立ては、その召し使いの証言だけというわけか」


 まあ、これから直接ドゥアルテの家に行くつもりだから、その時にドゥアルテの口を滑らせることもできるが……確実ではないし、期待しない方がいいだろう。


「とはいえ、あなた達が自らドゥアルテに責任を取らせるつもりなら、きちんと立証する必要はない。今の推理だけでも、ドゥアルテに罰を与える理由づけはできるが」

「それは賢明とは言えない。確かに戦前と比べれば、企業間での報復合戦が市民の目に触れる場は減っているから、批判される恐れは少ない。だが同業者の間で、いやな評判が広まることは必至だ。その場合、処罰するに足る十分な理由を説明できれば、我々の評判が下がることは避けられるだろうが……推測だけでドゥアルテ氏の責任を追及すれば、いずれ我々が説明を求められたときに窮するのは目に見えている」


 ふうん……ありがちな後継ぎ社長と違って、なかなか慎重な経営判断ができるようだ。それだけの判断力がありながら、他社の商品の違法性を遠回しに告発しようとして、無用な騒ぎを起こしてしまったことは疑問だが。あるいは、この社長の知らない所で、ドゥアルテを貶めようと企んだ連中が上層部にいたのか……。


「ちなみに社長さんは、今回の事件のことをどこまで知っていたのかしら。ドゥアルテが関わっているということまでは、察しがついていたと思うけど」

「ドゥアルテ氏がここ最近、業績で我々に差をつけられていることで、我々の内部事情を探ろうとしていたことは知っていた。君の推理を聞く限りでも、彼は相当、我が社のことを調べていたと思われる。具体的なことは分からなくても、コンテナに侵入して商品を燃やすなんて荒業をやる人物は、彼以外に思い当たらなかった」


 この会社もまた、ドゥアルテの動きを注視していたわけか。この業界で産業スパイが暗躍しているという話もあったし、警戒するのも当然といえる。わたしが元々、その産業スパイの真似事をドゥアルテに依頼されていたことは、言わないほうがいいだろう。


「じゃあ、ドゥアルテが商品を燃やした動機については?」

「昼間、うちの社員がボヤのことを報告しに来たとき、なぜかうちで扱ったことのない商品が被害に遭ったと聞いて、大体の察しはついたよ。元々ドゥアルテ氏は、かなり強引な経営で業績を上げてきたところがあって、うちの社員に限らず、評判は芳しくなかった。貶めようと考える奴がいても、不思議じゃなかったんだ。もっとも、そこにいるアレンの話を聞く限り、この企みに加担していたのはごく一部の社員のようだがね」


 グレゴリオに視線を向けられて、アレンはすっと目をそむけた。あれだけ息巻いておいて、いざ上層部の人間を売るとなると気が引けるらしい。

 この社長が、知らないふりをしてとぼけている可能性も無くはないが、ここでそんなことを指摘すれば、のちの交渉が進まなくなる。グレゴリオの言い分に矛盾はないし、無闇に突っ込めばそれこそ、こいつらと同じ(てつ)を踏むことになりかねない。ここは一旦、グレゴリオの言葉を信じることにしよう。


「まあ、うちの社員にも非があったみたいだし、その召し使いも、命令に逆らえる状況になかったのなら、厳しい処分を下すのは妥当じゃなかろう。ドゥアルテ氏に関しては……本人から事情を聞いたうえで、それまでの所業をアルビタニア側に報告する、という形にするのがよかろう。召し使いの証言が取れれば、の話だが」

「現状、問題はそこだ。ただ召し使いをこの場に呼んでも、ドゥアルテとの契約が残っている以上、まともな証言は期待できない。ドゥアルテに口止めを命令されたら、間違いなく本当のことは話さない。証言を取るなら、彼女を完全に、ドゥアルテから引き離す必要がある」

「そんなことができるのか? 彼がそれを見逃すとは思えないぞ」

「可能な限り、手は打っている。だが、それで上手くいくかは保証できない。だからあなた達と相談する必要があった」

「相談というと、どんな?」


 わたしはグレゴリオに向かって、三本の指を立てた。


「今回の調査に関して、わたしからあなた達へ、報酬として三つ、要求したいことがある。ひとつはお金……基本報酬として三万ポルド、それに加え、証人をこの場に呼ぶための必要経費として、百五十万ポルドを先に支払うこと」

「ひっ、百五十万ポルド!」


 大声をあげたのはアレンだった。グレゴリオは声に出さないものの、あまりの金額の多さに顔をしかめている。


「……証人ひとりを連れてくるのに、それだけの金額が必要なのか?」

「ドゥアルテはあの召し使いを五十万ポルドで買ったと言っていた。確実に彼女を引き離すには、それくらいの額は必要だ。もちろん、すべてドゥアルテに渡ることになるが、あなた達が先ほど決めた処罰の重さを考えれば、安い出費さ」

「まあ確かに、未だにこの地域で影響力を持つドゥアルテ氏から信用を無くせば、結果として我々の売り上げにも好影響を与えるだろうが……」

「百五十万もの大金を、そんな不確実なことのために、ぽんと渡せるものか。常識で物を言ってくれ!」


 アレンはまだわたしを信用しきれていないのか、やたらと噛みついてくる。確かに常識的な提案とは言いがたい。だが……。


「わたしを信用できないなら、別にこの契約に従う必要はない。基本報酬だって払わなくていい。それで一番困るのはわたしだから、あなた達には知ったことじゃないでしょう」

「それはそうだが……」

「だがその場合、あなた達はここから先へ進めない。ドゥアルテを野放しにして、何も知らない一部の社員から責め立てられ、騒ぎを起こしたことへのけじめもつけられない。長い目で見たら、一体どっちを取る方が得策だろうねぇ?」


 罪悪感をあおったうえで、断った場合の損失の可能性をちらつかせる。嘘をつかずに交渉を有利に進めるやり方だ。

 この手でまんまと、グレゴリオは折れてくれた。


「……分かった、支払いに応じよう。その代わり、失敗したら全額返してもらう」


 やっぱりそうなったか。もし百五十万ポルドを渡しても召し使いを連れてこられなかった場合、わたしが自腹を切って同額を払うことになる。もちろん、そんな大金を持っていないから、こうして『グレゴリオ貿易』の力を借りているのだが。

 これで失敗は許されなくなったな……まあ、そのくらいの緊張感があれば、より腕が鳴るというものだ。


「ああ、でも支払いは現金でよろしく。その方が効果あるし、小切手だと出所を知られてドゥアルテに警戒される可能性があるし。きょうび銀行なんて信用できないし、収益のいくつかは現金で保管しているんじゃない?」

「その見透かしたような言い草は気にくわないが、まあいいだろう。ところで、要求したいのは三つだと言っていたが、まだ他にもあるのか?」


 そうそう。この件を解決するために必要な要求は、さっきの百五十万ポルドだけだが、ここから先はわたし達の個人的な事情に関わることだ。


「ああ、あるよ。でも百五十万ポルドと比べたら、割と簡単な話だ。確か社長さん、今回の事件の影響で、今日の夕方だった船の出航時刻が、明日に延期されたんだったな」

「まあ、その船に積むはずのコンテナが被害に遭ったからな……」

「行き先はアルビタニアだよな。わたしと連れの女の子も、これからユーロピア方面に行くつもりでいるんだ。だから、その貨物船にわたし達を乗せてはくれないかな」


 このことは、グレゴリオ貿易に探りを入れると決めた時から考えていた。ユーロピア各国は、今でも世界のあちこちと貿易をしているから、ひとつくらいはユーロピア行きの船があるだろうと踏んでいたのだ。被害のあったコンテナを積む船がアルビタニアに行くと分かったときは、しめたと思ったものだ。まあ、こうすればシャルロットが喜びそう、というのもあるが。

 大金を払うことと比べれば難しくないから、この要求にはグレゴリオも悩まなかった。


「うむ……まあ乗せるくらいなら構わないだろう。ただし、これも成功報酬である以上、召し使いを無事に連れてくることができた場合の話だ」

「了解」

「それで、三つ目の要求は?」

「ちょっと、情報をもらえないかと思ってね。まあこれはついでみたいなものだけど」


 ユーロピアとの交易が多いこの会社なら、その方面の情報はいくつも入っているはずだ。元々、この港町に来たのも、その情報を集めるためだった……偶然とはいえ、信頼できる情報提供者と出会えたわけだから、この機会を利用しない手はない。

 わたしは一枚の写真を取り出した。最初に出会った時にこっそり撮影して、事件の時にも活用した、シャルロットの写真だ。


「この子がわたしの相棒なんだけど、どこかで見たことはない?」

「さあ……」グレゴリオは写真を受け取った。「この子がどうかしたのかい」

「彼女、自分が何者で、どこから来たのかも覚えていないらしくてね、わたしは探偵としてそれを探っているんだ。顔立ちからしてユーロピア系だから、とりあえずそっち方面に行って探ろうと思っていたんだけど……」

「記憶喪失ってことか。そんな大変そうには見えなかったなぁ」


 アレンも写真を覗き込んで呟く。確かに普段のシャルロットからは、そうした大変な背景があることを感じ取れない。人に見せない所で、ひとりで苦しんでいるのかもしれないが……わたしにも見せようとしないのは、きっと心配させたくないからだろう。

 わたしにだけは見せてほしい、なんていうのは傲慢だ。あの子はちゃんと自分の考えを口にできる。それだけで十分、わたしは救われている。


「そういえば、あんたはあの子のこと、シャルロットと呼んでいたけど、名前は覚えていたのか?」アレンが言う。

「いや、シャルロットって名前は、彼女が持っていた帽子に刺繍されていたもので、わたしが勝手につけたものだ。本名かどうかは分からん」

「シャルロット……ん?」


 写真を眺めていたグレゴリオは、急に目を見開き、写真に写った少女を凝視し始めた。表情がみるみるうちに、険しさを増していく。


「まさか……いや、そんな、まさか……」

「どうしたの?」

「見覚えがあるんですか、社長?」

「いや……最後に新聞で見たのは五年以上も前だし、あの頃と比べて顔つきも大人びているから、確証はないのだが……」


 グレゴリオは写真から視線を上げて、わたしを見た。


「シャルロット、といったか……それは、アルビタニア王国の現国王、その第一息女と同じ名前だ」

「…………!」


 自分の迂闊さを呪った。シャルロットと聞いて、真っ先にその存在を思い浮かべるべきだった。アルビタニアの名前だって何度も聞いていたのに、シャルロットの淑女的振る舞いを何度も見ていたのに、どうして結びつけることができなかったのだ……。

 確かにわたしも、その姿を写真で見たのが、()()に所属していた三年前が最後だったから、多少記憶があやふやになっていたのかもしれない。だが、言われてみればはっきり分かる。少し成長しているが、顔立ちは間違いなく、記憶にあった写真の彼女と同じだ。

 シャルロット……彼女は、アルビタニア王国の王女様(プリンセス)だ。

 ……本当に?


「いや、でも、それはおかしい。一国の王女様が行方不明になっていたら、いくら何でも世界中でニュースになっているはずだ。少なくともそんな知らせは耳にしたことがない」

「うむ……あの国も、戦争が終わってすぐの頃に大規模な混乱が起きて、かなり荒れたらしいからな。詳しくは知らないが、戦争への参加をめぐって王室を二分する騒ぎがあって、それが国民の間にも広がったらしい。戦後の景気の落ち込みで、ただでさえ国民が政府や王室に不信感を抱いていたそうだからな……」


 そういえば聞いたことがある。アルビタニアの王室では、戦争参加の賛成派と反対派に分かれていて、結局は反対派である現国王の判断で、アルビタニアは世界戦争への直接の参加を見送ったという。おかげで物理的な被害こそ免れたものの、戦前ほどの経済力は失ってしまい、終戦のすぐ後には、王室に反感を抱く国民が大勢現れ、そして……。


「そうだ、確か王室で、反王室派の国民が武装して押し入って、多数の死傷者を出す乱闘騒ぎがあったって……まさか、その時に王女様が?」

「あまりに王室側の被害が大きすぎて、正式な調査はほとんど行われなかったそうだ。国王と一部の側近を残して、王室の人間はほとんどが乱闘に巻き込まれて亡くなったとされているが、遺体の見つかっていない人物も多くいた。国王の子どもたちのひとり……シャルロット王女も、遺体は見つかっていないと聞いている」


 シャルロットは確かに行方不明になっていた。だが、乱闘の後の調査がろくに行なわれなかったせいで、その後の進展が一切なく、当然ながらニュースで取り上げられるような動きもなかった。だからわたしの耳にも入らなかったのだ。


「それに、その乱闘騒ぎには悪い噂もあってね……現国王の父親である先代の王は、戦争の五年ほど前に退位して公務から距離を置いていたが、戦争への参加に関しては、賛成派の先鋒となっていたと言われている」

「つまり、息子である今の国王が不参加を決めたことで、そいつは面子を潰されたことになったわけか」

「ああ。だから終戦後、王室に不満を持つ者たちをけしかけて騒ぎを起こし、その混乱に乗じて、国王をはじめ戦争反対派の人たちを抹殺しようとしたのではないか……そんな噂もささやかれている。まあ実際には、その先代の王の方が死んでしまったそうだから、皮肉な結果といえるが」

「つまり、反対派である国王の子どもたちも、先代の王の標的だったと?」

「もし国王が亡くなれば、次に王となるのは子どもたちだ。面子を潰された先代の王としては、自分たちの息のかかった者を、次の王に仕立てたいはず。そのためには、子どもたちの存在は邪魔だっただろうからな」

「やれやれ、まるで中世の時代の権力争いだな……シャルロットはその争いに巻き込まれて、今のようになっているわけか」


 それでも、記憶を失くして、こんな僻地(へきち)まで流れ着いたことには、説明がつけられそうにない。まだ何か深い事情がありそうだ。


「これほどまでに乱闘が激化し、死傷者を出すまでに至ったのは、王室内部に扇動していた者がいたからだと推測されている。それが先代の王なのか、それとも他にいるのかは分からない。だが、もしシャルロット王女が生きていると分かれば、その扇動者は間違いなく彼女を狙って来るだろう。もっとも、その扇動者も生きているか分からないが……」


 少なくとも、扇動された人間はまだ生き残っている。シャルロットが生きて戻れば、アルビタニア国内に混乱をもたらす可能性はある。シャルロット自身も、無傷で済む保証はない。分かっている、グレゴリオは親切にも忠告しているのだ。

 だが……。


「それでも、わたしはシャルロットを連れて、アルビタニアへ行くよ。わたしは探偵として、彼女の相棒として、真実を見極めなければならない」


 グレゴリオはその言葉に目を丸くした。アルビタニアへ行くことが、どれほど危険を伴うのか分かっても、それでもわたしは揺るがない。シャルロットにまつわる全ての真実を手に入れるまで、立ち止まることはない。その意志の固さを、グレゴリオも十分すぎるほど読みとれたはずだ。


「……まあ、私に君を止める権利などないだろうな」


 グレゴリオはため息をつきながら、観念したように呟いた。

 こうしてわたしは、三つの報酬を提示して、グレゴリオと正式に契約を結んだ。まあ、百五十万ポルドとシャルロットに関する情報は、先払いになってしまったが。あとはドゥアルテの召し使いをうまく引き離し、証人としてここへ連れてくる。その後は、シャルロットとともに、いよいよアルビタニアへ出発する。

 この旅の先に、何が待ち構えているか分からない。それでも、シャルロットからの依頼を果たすため、わたしはどんな真実でも見つけなければならない。そう、たとえそれが、残酷な真実だとしても。

 ……それがシャルロットのためだと、わたしは必死に言い聞かせている。

 きっとこれで正しい。それでいいはずだ。

 …………本当に?


……本当に、このままでいいのでしょうか。


というわけで、手探り状態で書き綴った第四章でしたが、いかがだったでしょう。正義も倫理も失われ、現代の価値観がまるで通用しない世界だと、ミステリはこんな感じになるのでは、という体で書いていましたが、それでもある程度の説得力は必要なので、その辺りの兼ね合いにずいぶんと苦心しました。少しはその苦労が報われたでしょうか?

さて、別作品『面倒くさい少女たち』の執筆にも時間を割いていたこともあって、次の第五章の準備はほとんど進んでおりません……何とか今月中には再開できたらいいなぁ、と思いながら頑張っていますので、その辺のタイミングについては、Twitterとかでお知らせいたします。もうしばしお待ちを。

予告しておきましょう。第五章では、謎に満ちたローゼの過去が、ついに本人の口から語られます。第一章からずっと引っ張ってきたので、いよいよといったところです。お楽しみに。

では。

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